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「SUBARU」店主 溝口明子のラトビアの手仕事をめぐる旅 vol.33 生産者さん探訪記その3 織物工房ラドゥアシャー・ダルブニーツァ“LM”

バルト海に面した緑豊かな国、ラトビアに伝わる手仕事の数々。今も昔も変わらない、素朴でやさしい温もりのある伝統的な技、そしてそれらを残し伝えていくベテラン職人、伝統を受け継ぎ新たな形を築く若手作家の作品など。雑貨屋「SUBARU」の店主・溝口明子さんが出会った、ラトビアの手仕事の現在(いま)を現地の写真と共にお届けします。
Text,photo:Akiko Mizoguchi

民族衣装を民族のアイデンティティとしてとらえ、大切にしてきたラトビア。そんな歴史にも裏打ちされ、ラトビアにおいて機織りは数ある手工芸のなかでも発展を遂げた分野といえます。今回紹介するのは、どこかラトビアらしさを感じつつも、モダンで、抜群の美しさを誇る織物を作り続けている工房「Radošā darbnīca “LM”/ラドゥアシャー・ダルブニーツァ“LM”」です。

この建物の2階部分に工房がある。

工房があるのはリガ中心地からほど近い、大河ダウガヴァ川のほとり。まさかこの建物に?? という一見無機質な複合施設に入り、1階に並ぶ農業機械を横目に、半信半疑で2階へ上がるとそこに工房はありました。長い廊下にはたくさんの部屋が並び、職人さんたちがそれぞれ機織りの各プロセスの仕事に打ち込んでいました。初めて訪問した際、作業部屋の奥の部屋でストックされていた山盛りのテキスタイルに見惚れたことをよく覚えています。

それぞれの仕事に取り組む職人の皆さん。
ストック棚はお宝の山!

「ラドゥアシャー・ダルブニーツァ“LM”」の前身は、ソ連時代の1945 年に設立された応用芸術のコンビナート「Māksla/マークスラ」。その織物部門をベースにして、ラトビアの独立回復直後の1993年に、7名の個人と芸術家協会が共同で会社組織としてスタートさせました。「マークスラ」にいたすべての機織り職人が会社に加わったそうです。現在は14名の職人が在籍していて、今日に至るまで、職人全員が工芸、芸術系の高等学校や専門学校のテキスタイル課程で織りの専門教育を受けています。

知識と実力を兼ね備えたそんな職人さんたちが完全な手作業で生み出しているのは、インテリアとして、またファッションとして使える実用的なテキスタイル製品。ナプキン、テーブルランナー、テーブルクロス、ブランケット、カーテンや、ショール、スカーフ、バッグなどです。そのすべての製品が、コットン、リネン、ウールといった天然素材を用いて手織りされています。

カラフルなリネンの糸はリトアニアやスペインから取り寄せている。
広い部屋にずらりと並ぶ機織り機。

「ラドゥアシャー・ダルブニーツァ“LM”」では、お客様に対する気配りと責任をモットーに、丁寧に誠実に一点ずつすべて手作業で製品が作られています。また、品質をとても重視しているので、材料のみならず製造のプロセスにも細心の注意を払っているそうです。

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デザインにも強いこだわりがあり、ラトビアの歴史に根差した伝統的な意匠と現代のファッショントレンドを、織り柄や色使いの両方で融合させており、どのような現代的なインテリアにも調和するようなアイテムになっています。手仕事と思えない程の緻密な高いクオリティを保ちながらも「つん」とし過ぎず、どこか温かみを感じるのは、用いる天然素材とデザインへのこだわりがそうさせるのでしょう。

また、ほとんどのアイテムが一点物であるのもこの工房の特徴の一つ。職人さんたちが色遊びを楽しみながら織っているので、まったく同じ柄の商品を見つけるのは至難の業なのです。それは社名にも表れていて、「Radošā darbnīca/ラドゥアシャー・ダルブニーツァ」とは、クリエイティブ・ワークショップと訳せます。

いつも工程を一つずつ丁寧に説明してくれるRūta Jankaite(ルータ・ヤンカイテ)さんは、工房の取締役であり、共同オーナーの一人です。前身の「マークスラ」から在籍しているルータさんは、今でこそ経営に多くの時間を割いていますが、じつは自身もテキスタイルのア―ティストであり機織り職人です。

ルータさん(写真右)は、今も必要なときに機織りをするそう。

ルータさんは言います。自分たちの製品をお客さまが気に入り、高く評価してくれたり、何度もリピートしてくれることが何よりも嬉しいのだそう。また、それぞれが専門分野のマイスターでありながら、一緒に心地良く働ける同僚の皆さんがいることも喜びの一つになっているそうです。実際、工房を訪問するといつも穏やかな空気が流れています。

織り地の端の始末をする職人さん。
この機械で織り地をプレスしたら製品として完成する。

そんな「ラドゥアシャー・ダルブニーツァ“LM”」の製品は、SENĀ KLĒTSETMOpienene などで購入できます。ラトビアに旅した際はぜひ手に取ってみてください。そして、事前にアポを取って工房を訪問すると、制作過程を見学でき、その場でお買い物を楽しむことも可能だそうです!

美しい製品は、民芸市でも際立っていました。

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INFORMATION

Radošā darbnīca “LM”(ラドゥアシャー・ダルブニーツァ“LM”)

住所:Izstāžu iela 11, Valdlauči, Ķekavas pagasts, Ķekavas novads

https://www.lm-linen.com/

PROFILE

溝口明子 Akiko Mizoguchi

ラトビア雑貨専門店SUBARU店主、関西日本ラトビア協会常務理事、ラトビア伝統楽器クアクレ奏者
10年弱の公務員生活を経て、2009年に神戸市で開業。仕入れ先のラトビア共和国に魅せられて1年半現地で暮らし、ラトビア語や伝統文化、音楽を学ぶ。現在はラトビア雑貨専門店を営む一方で、ラトビアに関する講演、執筆、コーディネート、クアクレの演奏を行うなど活動は多岐に渡っている。
2017年に駐日ラトビア共和国大使より両国の関係促進への貢献に対する感謝状を拝受。ラトビア公式パンフレット最新版の文章を担当。著書に『持ち帰りたいラトビア』(誠文堂新光社)など。クアクレ奏者として2019年にラトビア大統領閣下の御前演奏を務め、オリンピック関連コンサートやラトビア日本友好100周年記念事業コンサートにも出演。神戸市須磨区にて実店舗を構えている。

http://www.subaru-zakka.com/

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