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「SUBARU」店主 溝口明子のラトビアの手仕事をめぐる旅 vol.10 手仕事に出会えるおすすめショップ ①SENĀ KLĒTS(セナー・クレーツ)

バルト海に面した緑豊かな国、ラトビアに伝わる手仕事の数々。今も昔も変わらない、素朴でやさしい温もりのある伝統的な技、そしてそれらを残し伝えていくベテラン職人、伝統を受け継ぎ新たな形を築く若手作家の作品など。雑貨屋「SUBARU」の店主・溝口明子さんが出会った、ラトビアの手仕事の現在(いま)を現地の写真と共にお届けします。
Text,photo:Akiko Mizoguchi

手仕事大国ラトビアを旅する際のお楽しみの一つがお買い物。そこで、ミトン、織物、バスケットなどの伝統的なハンドクラフトを販売しているおすすめショップを紹介したいと思います。
いずれもオーナーがラトビアの手工芸品を愛し、誇りを持って営業しているお店です。ラトビアを旅した際にはぜひお立ち寄りください。

ラトビア民族衣装の宝庫! SENĀ KLĒTS(セナー・クレーツ)

ラトビアの民族衣装は、ブラウス、ベストやジャケット、スカートやズボン、冠や帽子、腰ひも、ショール、靴下、ミトン、靴、ブローチ、といったパーツで構成されています。それぞれが美しい織り柄、刺繍柄、編み模様なのですが、組み合わせることでより一層華やかになります。そのディテールは、ラトビアの各地方で異なった特徴をもち、さらにはすべての市町村でデザインが違うという、麗しくて奥深い世界なのです。リガ旧市街の市庁舎広場近くにあるセナー・クレーツは、民族衣装の宝庫のようなお店で、展示スペースとショップスペースがあります。

セナー・クレーツの展示スペースには、民族衣装をきちんと着付けられたマネキンが並んでいる。
小物も合わせてディスプレイされており、民族衣装のディープな世界を堪能できる。
ラトビアの国土をかたどったミトンの展示。

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店名の正式名称は「Tautas tērpu centrs SENĀ KLĒTS」で、和訳すると「民族衣装センター 古い貯蔵庫」となります。その名が示す通り、セナー・クレーツは考古学的、民俗学的な考証を重ね、ラトビアの民族衣装を正しく守り、後世に伝えることを使命としている組織で、ラトビアが旧ソ連から独立を回復した1991年に始動しました。
設立したのは民俗学者のMaruta Grasmane(マルタ・グラスマネ)さん。ラトビアの手仕事の技とラトビア人のアイデンティティの結晶といえる民族衣装を、大切な文化遺産と考えて活動してきました。特に伝統的なミトンの保存や啓蒙活動に心血を注いでいます。

設立者のマルタさん。その功績が評価され、ラトビア国家より最高勲章を授与されている。
マルタさんの著書。右端は民族衣装の本。左2冊は日本語を含む7か国語で出版されている「ラトビアのミトン」。

初めてラトビアを訪れて、セナー・クレーツの店内に足を踏み入れた際、あまりにも美しい民族衣装の数々を見て、一瞬で心をわし掴みにされました。職人さんたちの手で細部までこだわって制作された多彩な衣装と装飾品、ラトビアの至宝ともいえるあまたのミトン…。
その後、数え切れないほど訪問していますが、訪れるたびに新たな感動が沸き起こり、目を奪われます。

民族衣装の各パーツや、陶器やオーナメントなどの選りすぐりの伝統工芸品は、ショップスペースで実際に購入できます。スタッフの皆さんも専門知識を有している人が多いので、何か知りたいことがあれば安心して質問できます。

ショップスペース。ガラスケースの中にはアクセサリー類が並んでいる。
写真右下にあるのはスカート用の反物で、切り売りしている。
民族衣装に関する書籍類も販売している。

さらに、数年前から隣接する部屋も新たなショップスペースとして開放されています。そちらでは、民族衣装や伝統工芸品がありのままの状態ではなく、現代の生活にフィットするようにアレンジされたアイテムに生まれ変わって並んでいます。

セナー・クレーツの外観。右半分が従前からあるエリア。左半分のショップスペースにモダンなアイテムが並んでいる。

また、近年セナー・クレーツは、ラトビアのミトンの更なる普及と発展を目指して、ニッティング・リトリートも定期的に開催しています。ラトビアのミトンに魅了されたニッターが、ラトビアのみならず世界中から参加し、その知識を深め、技の習得に努めています。

数年前に店内で開催されていたミトンの講習会の様子。現在ではリガを飛び出して、地方の町でもニッティング・リトリートが開催されている。

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INFORMATION

SENĀ KLĒTS

住所:Rātslaukums 1, Rīga

http://www.senaklets.lv/

>>次ページ 伝統的なミトンを愛する編み物専門店 ②Hobbywool(ホビーウール)

PROFILE

溝口明子 Akiko Mizoguchi

ラトビア雑貨専門店SUBARU店主、関西日本ラトビア協会常務理事、ラトビア伝統楽器クアクレ奏者
10年弱の公務員生活を経て、2009年に神戸市で開業。仕入れ先のラトビア共和国に魅せられて1年半現地で暮らし、ラトビア語や伝統文化、音楽を学ぶ。現在はラトビア雑貨専門店を営む一方で、ラトビアに関する講演、執筆、コーディネート、クアクレの演奏を行うなど活動は多岐に渡っている。
2017年に駐日ラトビア共和国大使より両国の関係促進への貢献に対する感謝状を拝受。ラトビア公式パンフレット最新版の文章を担当。著書に『持ち帰りたいラトビア』(誠文堂新光社)など。クアクレ奏者として2019年にラトビア大統領閣下の御前演奏を務め、オリンピック関連コンサートやラトビア日本友好100周年記念事業コンサートにも出演。神戸市須磨区にて実店舗を構えている。

HP:http://www.subaru-zakka.com/

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