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ぬいぐるみ作家 そぼろさんのおすすめ『パレスチナのちいさな いとなみ 働いている、生きている』

photo, text: Soboro, Illustration: pan-to-tamanegi

わたしは普段、縫いぐるみづくりを生業としています。時々絵を売ることもあります。元々美術大学で油絵を専攻していました。大学院を出た後、少しずつこの「縫いぐるみをつくる」世界に入っていきました。 今は(不定期になることもありますが)たいてい月1回の「お迎え会」という販売会で縫いぐるみを迎えていただいています。委託販売などはやっておらず、年に1回個展を開催しています。

Q

そぼろさんのおすすめの本について聞かせてください。

『パレスチナのちいさな いとなみ 働いている、生きている』(高橋美香 文・写真 、皆川万葉 文/かもがわ出版/2019年)

『パレスチナのちいさな いとなみ 働いている、生きている』

2019年に初版が発行されており、2018年にパレスチナを訪れた高橋美香さん(”以前から、パレスチナの「働くひとたち」を撮りつづけていた”(本文より抜粋))と、パレスチナ・オリーブの代表をされている皆川万葉さんによって、写真をまじえて「パレスチナのお仕事」や「パレスチナ地域の人たちとの仕事」などが書かれている1冊です。また、それだけに留まらず、パレスチナが置かれている状況や歴史なども、ていねいな解説のもと、読み進めることができます。

Q

この本のどんなところが心に残ったのでしょうか。

わたしは”安全な家の屋根の下”で日々手を動かし、縫いぐるみをつくり、それを皆さんにお迎えしてもらい生計を立てています。これは当然、当たり前にあるわたしの人権の上に成り立っているはずです。
ではこの本に写し出されているパレスチナの人々についてはどうでしょうか。今、パレスチナのガザではイスラエルによる大虐殺が起こっています。
このような本を手元に置き、パレスチナで起こっていること、起こってきたことを日常の中で学び、考え、声を上げ続けるきっかけにしたいと思います。
わたしたち人間が、例えば何かを表現できる状況というのは何の上に成り立っているのか、「人間の尊厳が奪われてはいけない」と率直に声にするとはどういうことか。決して忘れてはいけないはずだと思いました。

Q

現在のお仕事・ご活動、ものづくりにはどう繋がっていますか。

わたしの仕事はわたしの手から生まれた縫いぐるみをある種の「癒し」としてお届けする職業でもあります。
目を背けたくなるような、あるいは背けられてしまう現実から目を背けてしまい、わたしはどうして皆さんに本当の意味での「安らぎ」や「癒し」を届けることができるでしょうか。これはこの仕事を始めた当初から、わたしの仕事の根底に少なからず、変わらずある考え方だと思います。 この本からは、決してあってはならない状況に置かれているパレスチナの人々の日々のいとなみも見えてきます。

Q

最後に、手芸・手仕事・ものづくりの魅力はなんだと思いますか。

手仕事とは、文字どおり、自分の手を使い、そこに時間を積み上げて何かを作り上げていくことです。その時間を自分が「自然に返るような時間」のように感じたりします。
決して激しい身振りではなくとも、その時を過ごす自らの内は熱く、また激しく解放されていくのを感じるわけです。まるで子供に、動物に、自然に返っていくような感覚です。そしてわたしにとっていつもこれは生活、生きることに密着しています。手作りや手仕事とは、そういうものだと思います。

そぼろさんの本棚。

PROFILE

そぼろ Soboro

東京藝術大学絵画科油画専攻卒業、同大学院修了。作家。主に縫いぐるみをつくる。著書に2014年「そぼろのおとぼけぬいぐるみ~ぶきっちょさんでもアジが出る~」(誠文堂新光社刊)、2018年「そぼろのふわもこ縫いぐるみチャーム」(文化出版局刊)がある。その他動画付きキット「そぼろさんの縫いぐるみ」シリーズ(日本ヴォーグ社)や各種グッズなども。現在縫いぐるみについては、不定期で開催する「お迎え会」という販売会に加え、年に一度の個展でのみ手にすることができる。

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