STORE

編み物☆堀ノ内さんのおすすめ『男の(ニット)、橋本治の手トリ足トリ』

photo, text: Amimono☆Horinouchi, Illustration: pan-to-tamanegi

「編み物☆堀ノ内」という名前で活動しています。何をしているのか秒でわかってもらいたくて、この名前にしました。手編みも出来ますが1着編むのに1か月以上かかってしまうので、今は家庭用編み機を使って複雑な絵柄のセーターを編んでいます。昭和のお母さんたちが使っていた横長の機械で、「ジャーーーー」という音がするあれです。僕はデザインの専門学校を卒業し、ずっとグラフィックデザイナーを生業にしてきました。困ったことに、デザインの仕事がヒマになり、「ヤバい!何が何でも副業をつくらなければ!」と、決死の思いで編み物を始めました。編み物を始めて10年余り。ありがたいことに、今は本業になりました。

Q

関口さんのおすすめの本について聞かせてください。

『男の編み物(ニット)、橋本治の手トリ足トリ』(橋本治/河出書房新社/1983年)
小説家の橋本治先生による編み物教則本+作品集。僕が高校生のときに話題になりましたが、当時は未見でした。初めて手にしたのは編み物を志した44歳のとき。どの教則本を見ても編み方の説明が写真で、それが僕にはわかりづらくて、棒針を使った普通のメリヤス編みにすら挫折してました。ところが、橋本先生の説明とイラスト(「写真ではわかりづらいでしょ?」とご本人が描いている)は「おおーーーなるほどー!」と何度も膝を打つレベルの明晰さ。この本のおかげで、マフラーも編めなかった僕が、セーターを編み上げることができるようになりました。

Q

この本のどんなところが心に残ったのでしょうか。

ジュリーの編み込みの仕方を「参考までに載せておきますね」と番外編的に解説した章の頭に、「多分、これは普通の人には無理でしょう。あまりにメンドーくさすぎるから。」と書いてありました。それを読んだときなぜか「俺はやる!」と謎の闘志が沸き、ブルース・リーの肖像を編み込んだ手編みのベストを1か月かけて完成させました(本当はセーターにしたかったけど、編み込みに燃え尽き、袖を編む気力が残っていなかった)。「心に残った」なんてものではなく、この本に「ここまで連れてきてもらった」と思っています。

Q

現在のお仕事・ご活動、ものづくりにはどう繋がっていますか。

デビッド・ボウイや山口百恵をまるで写真のように編み込んでいた橋本先生の編み物。初めて見たときには衝撃を受けました。僕の編み物活動の原点は「橋本先生みたいな作品を編みたい!」。本を通じて編み方を教えていただいただけでなく、僕の編み物のスタイルは橋本先生のスタイルと全く同じと言ってもいいので(違うよ!と天国の橋本先生に怒られるかもしれませんが…)、今、編み物活動が趣味ではなく仕事になったのは、この本のおかげです。なので、この本は僕の師匠です。




普段の作業風景

Q

最後に、手芸・手仕事・ものづくりの魅力はなんだと思いますか。

橋本先生は編んだセーターをすべてお友達にプレゼントしていましたが、僕にとっての編み物は食べていくためのものなので、「ものづくりの魅力」について改めて考えたことは、あまりないです。ただ、編み物の完成度をいかに上げるかということはいつも考えているので、自分がイメージしていた通りの物が編み上がったときはうれしいです。肖像を編むには、家庭用編み機で1週間かかります(これでも劇的にスピードアップしました)。退屈な編み作業の果てにセーターが完成し、最後に織ネームを縫い付けて「画竜点睛」するときのやりきった感も魅力かもしれません。

PROFILE

編み物☆堀ノ内 Amimono☆Horinouchi

1967年生まれ。桑沢デザイン研究所を卒業後、グラフィックデザイナーに。2012年頃より「編み物☆堀ノ内」名義で編み物作家として活動開始。家庭用編み機を使い、ニット作品を制作している。2018年よりMEDICOM TOYとの協業でニットブランド“KNIT GANG COUNCIL”もスタート。アーティストや映画、ギャラリーとのコラボニットも多く手掛ける。www.amimono.tokyo

手芸や手仕事の奥深い魅力を共有する編集部の独自コラム。メルマガ限定でお届け。登録はこちらから。

限定情報をいち早くお届けメルマガ会員募集中!