編集者・ライター赤木真弓さんのおすすめ『白夜の旅から』
編集、ライターの赤木真弓です。暮らしまわりの記事を中心に、雑誌や書籍、ウェブサイトで記事を書いています。ときどき「greenpoint books & things」として、イベントで古書や雑貨の販売も。手仕事が好きなので、バルト三国の手仕事を中心としたガイドブック、パッチワークや刺繍(フリーステッチングニードル)の本などを編集したり、プライベートでも友人たちと一緒に手芸をしながら過ごしたりしています。
Q
赤木さんのおすすめの本について聞かせてください。
『白夜の旅から』(森麗子/文化出版局/1982年11月8日)
古書店で偶然手にして知った森麗子さんは、ファブリック・ピクチャーの第一人者。ファブリック・ピクチャーは、織りの上に刺繍、アップリケを組み合わせ、動植物や街の風景、静物などを表現したもので、手芸とアートの間にあるような作品に、すぐに夢中になりました。戦後間もない頃から船で北欧に訪れ、現地の糸を使って作られた作品は、色使いのせいか今見ても古さを感じません。いい本はたとえ絶版になってしまっても、ものとしてずっと残ります。私もそんな本を作っていきたいと思わされた、きっかけの一冊です。
Q
この本のどんなところが心に残ったのでしょうか。
この本はタイトル通り、北欧を旅した森さんが心に残った風景を作品にした、ファブリック・ピクチャーの作品集。本書の後半はその旅日記が、たくさんの写真と共に綴られています。旅や手仕事が好きな私にとってたまらない一冊です。
Q
現在のお仕事・ご活動、ものづくりにはどう繋がっていますか。
素晴らしい手仕事に出合うと、もっと知ってもらいたい、伝えていきたいという気持ちが、今の仕事の根底にあります。作り方だけでなく、ものづくりに込めた思いなど、その作り手自身のこと、地域に根付いた手仕事ならその歴史などを紹介していきたいです。森麗子さんの本は、残念ながら古書でしか手にすることができないので、いつか自分がまとめることができたらと思い続けています。
Q
最後に、手芸・手仕事・ものづくりの魅力はなんだと思いますか。
手仕事は、糸の色や布の選び方ひとつとっても、作り手の方のその人らしさが表れるところがおもしろいなと思います。また、世界にふたつとない、温かみを感じられるところにも魅力を感じます。手芸を通して社会に対してできることがたくさんあると思いますし、歴史のなかでの意味や価値についても考えていきたいなと思います。
PROFILE
赤木真弓 Mayumi Akagi
フリーランスのライター、編集者。イベントなどで古書を中心に販売する書店「greenpoint books & things」店主。旅好きライターユニット「auk(オーク)」としても執筆活動を行なっている。
著書に『ラトビア、リトアニア、エストニアに伝わる温かな手仕事』(誠文堂新光社刊)、共著に『「好き」を追求する、自分らしい旅の作り方』(誠文堂新光社刊)ほか、編集に『『かわいいパッチワークとキルト』(グラフィック社)、『もこもこ、ふかふか 魔法の刺繍ステッチ:フリーステッチングニードルの技法とパターン&図案136』(ラウラ アメバ著、誠文堂新光社)などがある。