日常の風景の中にある、韓国の伝統的な手仕事ポジャギ
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宮褓(クンボ)と民褓(ミンボ)
ポジャギと聞くと、麻や絹の生地を使ってパッチワークされた、モノトーンの布を思い浮かべる人も多いと思いますが、用途によってサイズも違い、カラフルなものや刺繍が施されたもの、模様が描かれたものなど、さまざまな種類があります。風呂敷として生活のなかで使われていたため、なかには角にひもがついているものも。韓国料理のポッサム(茹でた豚肉とキムチを野菜で包んで食べる料理)など、ポジャギから派生した単語もあるなど、生活に深く根づいていたことがわかります。
ポジャギは使う階級によって2種類あり、宮廷で使われた華やかな宮褓(クンボ)と、民間の一般女性たちによってつくられ、多目的に使われた民褓(ミンボ)がありました。
宮褓は絹などの高級素材を使用し、手の込んだ刺繍や布に金箔を練り込むなど贅沢なつくり。装身具や帽子、書類の箱など、ひとつひとつものを包む目的でつくられているので、つぎはぎのない一枚布になっているのが特徴。ものを包むだけではなく、婚約や婚礼などにも使われました。
一方で民褓は一枚布ではなく、韓服(チマ・チョゴリ)などを縫ったハギレをつなぎ合わせて作られたものが多いのが特徴。わずかな布を大切に使うために工夫し、あらゆる技法で作られていて、今見てもモダンに感じられます。宮廷では贅沢な使い方をされていたポジャギは、一般的にはひとつのポジャギを間仕切りにしたり、服を包んだり、最大限使い回しをされたそう。汎用性を高くするため、大きめに作られていました。
パッチワークはチョガッポといわれ、伝統的なパターンはないそうですが、正方形と三角を組み合わせたものが多いよう。また、幸運を表す「福」という文字が刺繍されていることも多く、この字をポジャギの中に包むことによって、女性たちは幸せを維持できると考えたといいます。
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日常生活で幅広く使われるポジャギ
ポジャギの形はほとんどが正方形か長方形。用途によって大きさや素材、ひもの数を決めてつくられたといいます。1mを超える大きなポジャギは服や布団、家具を包むために綿や麻を使って丈夫につくられていました。
貴重品を包むポジャギは、何度も包み込んでしっかり結ぶことができるように片方の角に2つひもがつけられることが多く、布団など大きなものを包むポジャギは四隅にひもをつけて実用性があるものにしました。
食卓で使われるポジャギは、食べものが触れる部分に油紙を重ねてポジャギが汚れないようにしたり、バッグとして使うものは、斜め方向に2つか4つのひもをつけて肩にかつげるようにするなど、さまざまな工夫がされていました。
ポジャギのつくりかた
仕上がりが一重仕立てのものを「ホッポ」、布と布を裏地をつけて二重仕立てにした「キョッポ」、二重仕立ての中に綿を詰めたものを「ソンボ」といいます。
一重仕立てにする場合は、裏も表もない縫い目に仕上げ、布と布をかみ合わせる巻きかがり縫い(カムチムチル)や、折り重ね接ぎ(サムソル)で縫ってあることが多いそう。
二重仕立ての場合は、布と布をかみ合わせない形での巻きかがり縫い(カムチムチル)にして、縫い代を片側に倒す技法(ホッソル)で仕立てます。
裁縫をして残った布は、裁縫道具やノリゲ(女性の上衣やスカートにつける飾り)のような装身具をつくったそう。残った布を有効に使うという意味もありますが、真心を込めて福を求めるという願いも込められていました。子どもの色とりどりの衣装をつくって長寿を祈ったといいます。
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想像以上にカラフルで多様なポジャギ。ポジャギから、韓国の美しい手仕事に込められた思いを知ることができます。
※写真はすべてソウル工芸博物館にて撮影
参考資料
『李王朝時代の刺繍と布』(社団法人 国際芸術文化振興会)
『ポジャギ 韓国の包む文化』中島恵 著(白水社)
INFORMATION
ソウル工芸博物館
住所:031-61 서울특별시 종로구 율곡로 3길 4(안국동)
電話:02-6450-7000
営業:10:00〜18:00(※入場は閉館の30分前まで。アーカイブ室の企画展示は平日のみの営業)
休み:月曜、1月1日休み
料金:無料
https://craftmuseum.seoul.go.kr