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暮らしの中から生まれたパッチワークのパターン②食べ物などのパターン

日々の暮らしの中の出来事などから生まれるパターンの数々。繰り返される日常になくてなならない食べ物、そして家の中心でもある台所に関するパターンはたくさんあります。暮らしに根付いたモチーフから生まれたパターンをお楽しみください。
text:Naomi Ichikawa photo:Ayako Hachisu special thanks:Motoko Kitsukawa

食べもの、キッチン、バスケットから生まれたパターン

「Ice Cream Bowl」(アイスクリームの鉢)

「Ice Cream Bowl」 制作:西山幸子、素材:コットンプリント

1851年にボルチモア州の牛乳屋が余ったクリームを使い、生産販売したのがアイスクリームの始まり。その後、全米に広まり、大人にも子供にも愛されるようになりました。このパターンはレディース・アート・カンパニー(*)で1895年に通信販売されたもの。ちなみに「アイスクリーム・コーン」のパターンは20世紀半ばごろに登場します。

*)レディース・アート・カンパニー(Ladies Art Company)/初のキルトパターンを通信販売した会社。1885年からすでに272パターンを販売し、その後は取り扱い数を増やした。1970年に営業を終えた。

「Tumbler」(タンブラー)

「Tumbler」 制作:船本里美(キルトパーティ)、素材:コットンプリントほか

底が平らで持ち手のない大型のコップ、タンブラーを積み重ねた形のパターンです。1929年発行、「フィンレイ(*)」の『Old PatchworkQuilts and the Women WhoMade Them』に掲載。

*)フィンレイ(Ruth Finley)/キルト研究家。著書『Old Patchwork Quilts and the Women Who Made Them』は、全米を旅してオールドキルトのパターンを記録し分析した本として現在も高い評価を受けている。

「Churn Dash」(かき混ぜ棒)

「Churn Dash」 制作:立見弥生、素材:フィードサックほか

「Churn Dash」は、かつてバターを作るときに使われた撹拌棒のこと。古いパターンで、19世紀前半には作られていて、1929年発行の本『Old Patchwork Quiltsand the women who made them』に掲載されています。分割の違う同名パターンもあります。

「Birthday Cake」(バースデーケーキ)

「Birthday Cake」 制作:齋藤八穂子、素材:久留米絣ほか

19世紀末から20世紀初めに、さまざまな定期刊行物でキルトコラムが始まり、パターンの通信販売が盛んになりました。食べものは人気のテーマで、この「Birthday Cake」のデザインもそのひとつ。ナンシー・ペイジが紹介したパターンで、デコレーションをイメージしながらおいしそうに作ってみてください。

「Basket with Handles」(持ち手付きカゴ)

「Basket with Handles」 制作:須藤修代、素材:コットンプリントほか

1880 年のアンティーク・キルトに使われていたパターン。カゴのパターンには、持ち手ありとなしの両方があります。このデザインは持ち手が太く、たくさん入れられそうな実用的なカゴ。持ち手はピーシングでもアップリケでも刺しゅうでもお好みでOK。

さまざまな食べもの、キッチンのパターン

>>次ページ 暮らしの中から生まれたパッチワークのパターン③道具や仕事のパターン

PROFILE

市川直美 Naomi Ichikawa

キルトジャーナリスト、フリー編集者。「パッチワーク通信」の編集長を務め、その後「よみうりキルト時間」「キルトダイアリー」を手掛ける。長年に渡り、世界各国のキルトや作家を取材し、キルトを通して見えてくる歴史や文化を誌面で紹介してきた。国内外の数多くのキルトフェスティバルや美術館での展示の企画、ツアーの企画、キルトに関するレクチャーも行っている。著書に『プリンスエドワード島 キルトの旅』『英国キルト紀行』『アメリカキルト紀行』など(全てパッチワーク通信社刊)。最新刊は『Kawaii Applique Quilts from Japan』(TeresaDuryea Wongとの共著、SCHIFFER社刊、 2025年)。

INFORMATION

365日のパッチワーク・バースデーパターンブック

編著:市川 直美
誕生花や誕生石があるように、365日のパッチワークのパターンがあったらと思い作ったキルト作りのためのパターンブック。アメリカで古くから親しまれてきたパッチワーク・キルトの中から、時期や季節に因んだパターンや、人気のあるパターン、そして今まであまり知られてこなかった珍しいパターンまで、主に19世紀末ごろから20世紀半ばごろまでに生まれたパッチワークのパターンの中から365日分を選び「バースデーパターン」として紹介。1日、1パターンを1ページにまとめ、1年分(366種類)のパターンを掲載。すべてのパターンを実例とともに紹介し、製図、縫い順、名前の由来やキルトにまつわる歴史話も添えています。

定価:3,960円(税込)
発売日:2025年7月11日
ISBN978-4-416-62400-5

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誠文堂新光社

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