暮らしの中から生まれたパッチワークのパターン③道具や仕事のパターン

工具、道具、仕事から生まれたパターン
木製の台所道具から農業用工具、開拓時代に身を守るための金物まで。人々の生活を支える道具や工具に関するパターンの数々。中にはあまり馴染みのないモチーフもありますが、大概はイメージが湧きやすく、当時の人々の仕事を想像しながら縫うと楽しいパターンばかりです。
「Cross Bars」(クロス・バー)

「水平棒」の意味。濃淡のはっきりした色が適している。1920〜1940 年に定期刊行物の通信販売コラムを担当したナンシー・ペイジが取り上げたパターン。
「Arrowhead」(矢じり)

三角形と四角形で鋭い矢を表している。かつて矢じりは生活必需品だったに違いない。『カンザス・シティ・スター』紙に1936年に掲載された。同名でデザイン違いのパターンは20種以上あり、中には19世紀半ばのものもある。
「Arrow」(矢)

パターンの中に4つの矢が現れるように配色するのがコツ。1930 年ごろのパターンで、複数枚つなげると思いもかけない二次的な模様が現れる。別名「コロラドの矢尻」「ベティの選択」など。
「Sawtooth」(ノコギリの歯)

同名のパターンは数多くあり、三角形でノコギリの歯のギザギザを表すものがほとんど。このパターンは三角形1種を32 枚用意し、4列のブロックにして合わせる。作りやすく初心者向き。同名パターンが8月8日にあり。
「Carpenter’s Wheel」(大工の車輪)

道具の意味ではあるが、別の説では南北戦争時代(1861〜1865年)にはすでに存在していて、南部から北部へと逃げる奴隷を導く組織「アンダーグラウンドレイルロード」が「助けが近づいている、準備のとき」とメッセージを伝える際にこのキルトを使ったとのことだが真偽は不明。『Old Patchwork Quilts and theWomen Who Made Them』に掲載。
まだある、道具や仕事のパターン



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PROFILE

市川直美 Naomi Ichikawa
キルトジャーナリスト、フリー編集者。「パッチワーク通信」の編集長を務め、その後「よみうりキルト時間」「キルトダイアリー」を手掛ける。長年に渡り、世界各国のキルトや作家を取材し、キルトを通して見えてくる歴史や文化を誌面で紹介してきた。国内外の数多くのキルトフェスティバルや美術館での展示の企画、ツアーの企画、キルトに関するレクチャーも行っている。著書に『プリンスエドワード島 キルトの旅』『英国キルト紀行』『アメリカキルト紀行』など(全てパッチワーク通信社刊)。最新刊は『Kawaii Applique Quilts from Japan』(TeresaDuryea Wongとの共著、SCHIFFER社刊、 2025年)。
INFORMATION

365日のパッチワーク・バースデーパターンブック
編著:市川 直美
誕生花や誕生石があるように、365日のパッチワークのパターンがあったらと思い作ったキルト作りのためのパターンブック。アメリカで古くから親しまれてきたパッチワーク・キルトの中から、時期や季節に因んだパターンや、人気のあるパターン、そして今まであまり知られてこなかった珍しいパターンまで、主に19世紀末ごろから20世紀半ばごろまでに生まれたパッチワークのパターンの中から365日分を選び「バースデーパターン」として紹介。1日、1パターンを1ページにまとめ、1年分(366種類)のパターンを掲載。すべてのパターンを実例とともに紹介し、製図、縫い順、名前の由来やキルトにまつわる歴史話も添えています。
定価:3,960円(税込)
発売日:2025年7月11日
ISBN978-4-416-62400-5
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誠文堂新光社