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ZINEから始めよう! 手芸ZINEプロジェクト ~ Vol.2 手芸ZINEを活用しよう

昨今よく耳にするZINEという言葉、皆さんはどのくらいご存じですか? 出版物ではあるけれど、出版社を通じて作る商業出版とは異なり、個人でも作れてしまう自由度の高い出版物、それがZINEです。ZINEという存在は、作家活動をしている皆さんを応援する上で、自信の作品の世界観を伝える方法の1つとして、面白いアイテムではないかと考えています。そこで、ミグラテールは、書籍編集や刺繍CAFEを運営している矢崎順子さんとともに、「手芸ZINEプロジェクト」を立ち上げ、そのプロジェクトの展開や様子を伝えていくことにしました。 前回は、手芸をテーマにした「手芸ZINE」を広めたいと考えるようになったきっかけと、商業出版の書籍との比較からZINEという選択肢の魅力について紹介しました。今回は、主に作家活動を行う人にとって、手芸をテーマにZINEを作る場合の活用方法を考えてみます。
photo & text: Junko Yazaki

手芸活動で必要な印刷物には何がある? ~活動を支えるいろいろなかたちの印刷物

手芸活動をする方々にとっては、すでに馴染みの用途を持ったいくつかの印刷物があります。
販促物として値段をつけずに無料で配布するものに、名刺やショップカード、チラシ、パンフレットなど。商品として値段をつけて販売するものに、作品の作り方をまとめたレシピ、ポストカード、カレンダー、ステッカー、作品集などがあります。1つでもこうした印刷物を作ったことがある人もいるのではないでしょうか。

よく知るさまざまな印刷物も、ZINEという視点を通して見直してみた時に、形や内容も自由な表現や発信をする新しい姿に形を変えて活用することができるのではないでしょうか。
手芸作家にとって手芸をテーマにしたZINEが活用される場面を以下に挙げてみました。こんな風に幅広くZINEを活用できる場面が想像できます。

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名刺やレシピをZINEとして制作してみる

例えば、名刺。ビジネスの世界であれば、定型の名刺サイズに必要な情報を記載した「名刺」が必要でしょう。でも、手芸などものづくりの世界から発する自己紹介では、もっと自由な印刷物を名刺代わりに使うこともできるはず。
作品紹介や自分が好きなこと、受け取った人が興味を持ち読みたくなる名刺の役割も果たすZINEを作り、持ち歩くのはどうでしょうか。作者の物語や情報が盛り込まれた、ZINEのような「名刺」があることで、偶然に出会った人とのつながりを強くしたり、その場の話がいつもより盛り上がることもあるかもしれません。名刺的なZINE作りは、多くの人にとって役立つアイデアになると思います。

もう一つの具体例、レシピで考えてみましょう。レシピは、刺繍や編み物の作品の作り方を説明した印刷物。キットに同封したり、ワークショップで配布するものをレシピと呼ぶこともあります。私自身も「刺繍CAFE」というワークショップを始めて以降、さまざまなワークショップやキットのためのレシピを作ってきました。
それらのレシピを、ZINEの特徴をふまえて見直してみると、やはりZINEとは別物なんだと思います。レシピを作る時に目指していたのは、手芸の本の解説のようなルール、レイアウト、説明でした。理想を言えば、プロのカメラマンに写真を撮影してもらい、デザイナーにレイアウトを頼むことで書籍のような整然とした印刷物を作りたかったのですが、予算がなく仕方なく自分一人で作ったものも中にはあります。一人ですべての工程を担ったレシピについてはZINEの特徴と一致しますが、もっと自由にレシピを考えるならば、イラストも写真も自己流にして、もっと遊びの要素がプラスされたはず。もっと自由な表現で自己流のレシピを目指したなら、まったく違う形のレシピができていたのではないでしょうか。

手芸作家として個人で活動していると、商業出版ほど大きな規模に届ける必要がない場合もあります。まさに目の前で自分の作品に興味を示してくれた人など、ていねいに直接的に何かを届けたい時には、ZINEという小部数の印刷物は個人の活動に最適な大きさです。
自分らしい表現がつまった自由な形の印刷物「ZINE」を商品として捉えたり、宣伝のツールとして捉えることで、手芸ZINEは作家活動の小商いを支える頼もしい存在になるでしょう。

小さな商いを助けるZINE、小さな声を届けるZINE

ZINEのルーツを遡ると、1930年代にアメリカで生まれたSF同人誌から始まったという説が多く見られます。その後、1970年代にアメリカ、イギリスで起こったパンクロックのDIY精神が、ZINEの発展に大きく影響を与えました。音楽産業、出版産業などの大手の商業メディアへの反抗として、自分たちの手で音楽や印刷物を作りだすカルチャーが生まれます。
パンク誕生と同時代の1960~1970年に起こったアメリカの女性解放運動でも、マスメディアが取り上げない内容を自分たちで言葉にして制作した新聞や雑誌が、全国で数百の単位で制作され、制作した人たちによって配布されていたそうです。そうした印刷物は、大抵、原価程度の価格が付けられ、利益を生むためではなく、より多くの人に声を届けるために用いられ、連帯を生み出しました。

ZINEの発展のルーツとなる当時の形を振り返った時には、純粋に声を届けるための印刷物であるということもZINEの重要な存在意義なのだと思います。ZINEがこれまでに果たしてきた役割を思えば、手芸の世界での小さな商いを応援するだけでなく、趣味として手芸に親しむ人が自分の楽しみについて表現したり、手芸を通したボランティア活動の輪を広げるためなど、個人的でも、社会的にも、どんな人でも、ZINEを作る人の視点を通した手芸のテーマを表現し、発信することができるのがわかります。

今、ZINEという存在に多くの人が強烈に惹きつけられているのは、こうした縦横無尽の懐の広さにあるのではないでしょうか。そして、商業的な営み以外のさまざまな側面を併せ持つ、手芸というジャンルとZINEの親和性も高いのだと思います。

手芸ZINEを作ってみよう!入門編ワークショップを開く

ZINEならではの特徴や可能性を知ったことで、まずは、手芸が好きな人たちがワクワクしながら手にとれる手芸をテーマにした「手芸ZINE」を世に増やす活動を始めたいと考えました。

そこで、最初に手芸ZINEの入門編ワークショップを企画。誰でも手軽に取り組めるように、A4の紙1枚だけを使って、ZINEづくりの練習になるようなワークショップを考えました。全3回のワークショップ終了時には手芸ZINEが完成するメニューです。
昨年夏に第1回めの入門編ワークショップを開催し、8名の参加者がそれぞれの個性を活かしたZINEを作ることができました。次回は、ワークショップの紹介と参加者が作り上げたZINEの報告をしたいと思います。

●参考文献
『ガール・ジン「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』2011年、太田出版刊、アリスン・ピープマイヤー著、野中モモ訳

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PROFILE

矢崎順子 Junko Yazaki

針と糸でつくる楽しさを伝え、創作意欲を満たす場づくりをしたいと活動を行う。女子美術大学附属高校から慶應義塾大学環境情報学部へ。卒業後はギャラリーの企画を経て、ワークショップ企画、書籍の編集、執筆を手がける。2006年からartist  inという名前で、カフェで手芸を楽しむ「刺繍CAFE」を始める。「世界のかわいい刺繍」、「世界のかわいいレース」など手仕事を紹介する本のほか、「さくさく進む大きなマス目でクロスステッチ」など実用的な本の編集も多数。現在は、吉祥寺のアトリエを拠点に新しいワークショップの企画に取り組んでいる。

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