ZINEから始めよう! 手芸ZINEプロジェクト ~ Vol.1 ZINE作りのすすめ

皆さんは、ZINEって知っていますか?
ZINE(ジン)は、個人や少人数で制作する出版物のこと。基本はひとりで気軽に作るもので、形やテーマは多種多様。とにかく自由であることが大きな特徴です。ここ数年で、ZINEが一堂に集まるイベントなどZINEの販売を見かけることが多くなってきました。文学、写真集やイラスト作品集、エッセイなど、いろいろなテーマで ZINE作りをしている人が増えているようです。
そんな注目を集めるZINEと手芸を組み合わせたプロジェクトを企画しました。
最初の取り組みとして、刺繍や編み物、ソーイングなど手芸をテーマにしたZINE作りを行うワークショップを始めます。
今回は、どうしてこの企画を考えるに至ったかを振り返ってみたいと思います。ZINEの特徴と手芸ZINEの魅力や活用方法、ZINE作りワークショップについては次回以降に紹介します。
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枠にはまらない手芸テーマのZINE、作ってみませんか?
最近では、SNSや展示会などすばらしい手芸の作品に出会えることも多く、手芸本も続々と発売されています。私が手芸の活動を始めた20年前に比べると、手芸をする人の数もジャンルとしての選択肢も増えているようです。
手芸キットやレシピ、図案集のように、作るための説明的な印刷物は多いですが、なぜでしょう、ZINEのように自由に作られた手芸の出版物との出会いは少ないです。ZINEに共通するワクワク感のある手芸テーマのZINEがあったら、手芸の楽しみがもっと広がるのでは? と、ある時から想像がふくらみました。
ワークショップ活動のかたわら、書籍の編集などの仕事をしてきた私は、時々、友人や知人から、手芸本の出版について相談を受けることもありました。手芸作家として活動している人の中には、いつか自分の本を出版したいと思ってる人は意外と多いかもしれません。そんな時にどう応えたらよいか思案していたことも、今回の手芸ZINE企画を考える大きなきっかけになりました。
始めは、出版社に売り込む方法や、本になりやすい企画を考えることばかりを考えていました。でも、その方向で考えを進めると、どうしても壁にぶつかります。手芸本では作り方の解説が必要なこと、できるだけ多くの人に販売することが前提になる書籍では、時には自由な創作力が武器の作家の世界観を小さく狭めてしまうこともあるかもしれません。



A4用紙からZINEを作ってみる(参考)

商業出版とZINEの違い
出版社から書籍を出すことの難しさは、大きく2つあると感じています。1つは、本の出版ができるかどうかの厳しい判断があること。2つ目は、本の制作プロセスそのものです。この2つの難しさを乗り越えたものが、晴れて書籍として完成、書店に並びます。
企画の価値が認められて出版が決まったとしても、初めての著者として取り組むべき膨大な作業量、時間にも大きな難しさを感じる人も多いと思います。著者として書籍を制作するプロセスは、地道な作業を積み重ねる膨大な時間とエネルギーが必要になります。
もちろん、それに値する魅力があることも事実です。一人では到達出来ない作品の見せ方は作品集としての価値を持ち、作家としての自分を広く知ってもらう機会になる、また本づくりを経験することでの大きな成長もできるでしょう。ただ、何も知らずにその状況に直面するより、その前に本作りの流れを知ること、練習をすることの意味は大きいだろうと考えました。
一般的な手芸本が100ページ前後ならば、まずは、100分の1 のサイズのZINE作りで本づくりのプロセスを体験してみる。小さなサイズやページで自ら編集、デザイン、撮影、印刷、販売まで行うZINEづくりの経験が、いつの日かの本づくりに役立つ人もいるかもしれません。
一人で全ての工程を手がけるのも特徴の1つ
手芸作家たちは、自分の作品に全ての創作力を込めて、基本は一人の手仕事によって形を完成させます。例えば、作品作りと同じ気持ちやエネルギーを注いで、自分らしい小さな本を作ってみれば、それはいつもの作品と同じ魅力を持つ新しい作品になるのではないかなと考えました。
書籍は、編集者、デザイナー、カメラマンなどプロのクリエイターと共同作業で作るものに対して、ZINEの制作の基本は、一人で全ての工程を手がけるところにも特徴があります。そうした制作スタイルの特徴を比べてみても、ZINE作りは日頃から個人で作品作りを行ってる人にぴったりのアイテムです。
中には書籍という形よりも、自由なZINEで伝える方が向いている人もいるかもしれません。同時に、どこまでも自由に表現されたオリジナリティあふれる ZINE が、手芸本の種になること。出版への道のりの小さな一歩にもなるはずです。
手芸本を出版したいと考える友人や知人へのヒントを数年に渡り考えていたことが、ある時、ZINE作りから始めよう! というアイデアにつながっていきました。
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