矢崎順子の手芸アイデア・ノート 『三つ編みのアイデア』~Lesson1 三つ編みからはじめよう。

過去も現在も、日本でも世界でも、多くの人に身近な存在の「三つ編み」。そのシンプルで美しい模様、日常に溶け込む動作には、たくさんの楽しみとものづくりのヒントが隠れているかもしれません。数多くのワークショップや手芸本を企画してきた矢崎順子さんが、三つ編みにまつわるトピックと手芸的なアイデアの両面から、その魅力と可能性を探っていきます。
text: Junko Yazaki, photo: Takashi Sakamoto

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私と三つ編みの関係、三つ編みの魅力に気づくまで

「三つ編み」の言葉からどんなことを連想しますか。多くの人は、髪型としての三つ編みを思い浮かべるのではないでしょうか。自分や家族の髪、人によっては人形などの髪で三つ編みを覚える人が多いかもしれません。自分のことを振り返れば、いつ、誰から三つ編みを教わったかは覚えていなくて、いつの間にか、小学生の頃には自分の髪や家にある毛糸や紐で三つ編みをしていたような気がします。小学生や中学生の頃はお下げ髪にすることも多く、三つ編みは日常的な存在でしたが、大人になってからはすっかり三つ編みのことを考える機会は減りました。 
それが最近になって、三つ編みの存在に注目する出来事がありました。コロナ禍で始めた zoomを使ったオンラインのワークショップ。オンラインに適した手作りのアイデアとして、刺繍糸を材料に三つ編みのアクセサリー作りを開催したことがあります。親子で参加してくれる方がいたり、あまり手芸をしない方が参加されたり、いつになくリラックスした雰囲気で進行することができました。
三つ編みの手法をメインで使っていたため、簡単すぎるかなと心配もありましたが、教える方も、参加する方も、意外な満足感を得ることができたのです。基本的な作り方が頭に入っていることで気持ちに余裕が持て、手にも頭にもやさしくて、規則的な模様、色の組み合わせから生まれる独特の美しさを感じる三つ編みの持つ魅力に気がつきました。

コロナ禍で開催した三つ編みを活かしたアクセサリー作りのzoomワークショップ「artisti inのミニレッスン 少しの糸で作るアクセサリー」。糸とりどりの刺繍糸を使ったアクセサリーの見本。
三つ編みのワークショップのメニューの一つ。三つ編みのタッセル風の耳飾り。

素材と世代をこえて活躍する、三つ編みのいろいろ

「三つ編み」には、大きな魅力が 2 つあると思います。

1つめは、実にいろいろな素材で三つ編みができること。手芸の技法では、特定の素材やおすすめの素材がセットになるものもありますが、三つ編みは、とてもシンプルな構造であることから、編める素材がとても多様です。手芸以外に目を向ければ、三つ編み模様の「編みパン」やかまぼこの飾り切りなどの食材があれば、パキラやベンジャミンなど観葉植物の幹を三つ編みしたものまで。 どんなものでも三つ編みにできるのかもしれない! と思えるほどの可能性を感じさせてくれます。素材の選択肢がたくさんあることは、すでにある三つ編みの多様な表情を作っているとも思います。

 2つめの魅力は、子どもから大人まで年齢を問わずに楽しめること。髪を編む経験から三つ編みの編み方を知っている人も多く、特に現代の女性は年代を問わずにすでに手が覚えている人も多いです。例えば、国内では幼児教育で知られているモンテッソーリ教育。ここでは、乳幼児期に行う「日常生活の練習」のための一つの教材に「三つ編み」が取り入れられているそうです。三つ編みをすることの目的は、「三つ編みができるようになること、目と手の協応力、手及び指先のコントロール力、集中力、秩序感を養う」、間接目的として「書くための手の準備」と定義されています。そして、子供から遠く離れて、高齢者と三つ編みとの関わりについて。改めて調べてみると、現在の高齢者の施設や病院での作業療法のメニューとして、三つ編みが取り入れられていました。すでに手先が覚えている簡単な行為に集中することで、気持ちが落ち着く効果があるそうです。単に三つ編みのひもを作ることや三つ編みした紐を紙に貼り付けてコラージュしたり、三つ編みしたものを繋ぎ合わせてコースターや帽子を作るなど、三つ編みを使った様々なメニューが行われているようでした。

観葉植物のパキラの幹が三つ編みになってるもの。こんな風に販売されているものもあれば、自分で三つの苗を育てて三つ編みを作っていくこともできるそう。
かまぼこの飾り切りのいろいろ。一番手前が三つ編みの飾り切り。日本では昔から割り切れない奇数の数字の3が縁起の良いとされてきた。

手芸の世界から三つ編みを見てみよう

幅広い世代の人に関わりを持てる三つ編みですが、大人が親しむ手芸の世界にとってはどうでしょう。 簡単すぎる理由からか、ほとんど「三つ編み」が主役になることはなく、ひっそりと隠された存在のような印象があります。この連載では、そんな三つ編みに光をあてて、皆さんと一緒に手芸の世界で三つ編みの魅力を見つけていきたいと思います。

「手芸」に憧れはあるけれど、なかなか始める機会がなかった方には、これをきっかけに自分で好きな色、形を作る楽しさを体験してもらえると嬉しいです。作り方が難しくて挫折することはないはずなので、リラックスした気持ちで楽しんでください。また、手芸経験が豊富な方であれば、アイデアを応用したり、発展させて、三つ編みを活かした新たな作品作りにつなげてもらえるかもしれません。
三つ編みを使った作品作りの紹介のほか、オンラインでの三つ編みワークショップも計画しています。ぜひ一緒に三つ編みのもの作りを通して、その魅力に気づいてもらえたら嬉しいです。

PROFILE

矢崎順子 Junko Yazaki

針と糸で作る楽しさを伝え、創作意欲を満たす場づくりをしたいと活動を行う。女子美術大学附属の中高を卒業後、慶應義塾大学環境情報学部へ。ギャラリーの企画を経て、ワークショップ企画、書籍の編集、執筆を手がける。2006年からartist  inという名前で、カフェで手芸を楽しむ「刺繍CAFE」を始める。「世界のかわいい刺繍」、「世界のかわいいレース」など手仕事を紹介する本のほか、「さくさく進む大きなマス目でクロスステッチ」など実用的な本の編集も多数。現在は、吉祥寺のアトリエを拠点に新しいワークショップの企画に取り組んでいる。

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