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「SUBARU」店主 溝口明子のラトビアの手仕事をめぐる旅 【番外編】「大阪・関西万博」バルトの日 その1

バルト海に面した緑豊かな国、ラトビアに伝わる手仕事の数々。今も昔も変わらない、素朴でやさしい温もりのある伝統的な技、そしてそれらを残し伝えていくベテラン職人、伝統を受け継ぎ新たな形を築く若手作家の作品など。雑貨屋「SUBARU」の店主・溝口明子さんが出会った、ラトビアの手仕事の現在(いま)を現地の写真と共にお届けします。
Text,photo:Akiko Mizoguchi

>>【番外編】「大阪・関西万博」バルトパビリオン&ラトビアナショナルデー  その1その2

連日、熱狂の渦に包まれている「大阪・関西万博」。世界中からホンモノが集まり、手仕事や音楽、ダンスといった伝統文化と最新のテクノロジーが一緒くたになって、それぞれの国の魅力が発信されているので、何度行っても新しい発見があります。毎日、会場のあちらこちらで数え切れないほどのイベントが開催されているので、好奇心がうずきます。
ラトビアはリトアニアと一緒に「バルトパビリオン」として出展しているのですが、先日「バルトの日」という共同のイベントが開催されました。私もお手伝いにいってきましたので、レポートしたいと思います。

「バルトの日」のバルトパビリオンのファザードは特別仕様。

ラトビアとリトアニアの共同開催「バルトの日」

パビリオンでは、この日限りの民族衣装の展示がありました。いずれの国においてもそうでしょうが、民族衣装はラトビアやリトアニアにとって、国や出身地といったアイデンティティに直結する単なる手仕事以上の存在です。私はラトビアの民族衣装はそれなりの数を見てきましたが、リトアニアの民族衣装はじっくり見たことがなかったので、とてもいい機会になりました。
展示では、衣服のみならず、帽子や冠といった頭飾りから靴下と靴、また腰紐やアクセサリーも装着されていました。両国とも各地方の説明パネルも添えられていたので、来館された皆さまもじっくり熱心にご覧になっていました。

>>千紫万紅、ラトビアの民族衣装 vol.30 その1vol.31 その2

左から順に、リトアニア・ジェマイティヤ地方、リトアニア・アウクシュタウティヤ地方、ラトビア・ゼムガレ地方、ラトビア・ヴィゼメ地方の衣装。
左から順に、リトアニア・スヴァルキヤ地方、リトアニア・ジュキヤ地方、リトアニア・クライペーダ地方の衣装。
左から順に、ラトビア・ラトガレ地方、ラトビア・クルゼメ地方(男性)、ラトビア・クルゼメ地方(女性)の衣装。

パビリオン内の小部屋では、ラトビア、リトアニア両国の手工芸のワークショップも開催されました。ラトビアが用意したのは、手仕事の至宝、ミトン。私はこのラトビアの編み物のワークショップのお手伝いをしました。ミトンの展示も行われたので、やはりこちらでも手芸好き、編み物好きの皆さまが興味深そうに鑑賞していました。

ワークショップ会場。
ラトビアのお宝ミトンの展示も。

ワークショップの講師を務めたのは、ラトビアの民族学者 Ziedīte Muze(ズィエディーテ・ムゼ)さん。ズィエディーテさんは、ラトビアで民族衣装をひたむきに守るSENĀ KLĒTS(セナー・クレーツ)のリーダー的存在で、ズィエディーテさんがオーガナイズしているラトビアミトンのニッティングリトリートには世界中からニッターが集まります。そんなズィエディーテさんが来日して直々に手ほどきするとあって、当日は万博が開場するとすぐに参加希望の方があふれ、一瞬で予定の席数がなくなりました。老若男女問わず、編み物の習得度も問わず、さまざまな方が難解なラトビアの編み物に挑戦されていました。限られた時間のなかでは数段編めただけでしたが、それぞれがご自宅で編み物の続きを楽しんでいらっしゃったらいいなと願っています。

ワークショップのパターン図と毛糸玉の一例。
ズィエディーテさんも参加者の皆さんも真剣そのもの!

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編み物が苦手な方には、なんと、「デジタル編み物」が用意されていました。タブレットで好きな柄と色を選ぶと、オリジナルのミトンのパターン図が作成できます。完成したらメールアドレスを入力してファイルを受け取ったら完了です。

上段、中段、下段、それぞれの柄と、地色・柄の色を選択。
お子様でも簡単に!

リトアニアは「Sodai(ソダイ)」づくりのワークショップ

リトアニアサイドのワークショップは、麦わらでつくるSodai(ソダイ)でした。調和、バランス、そして宇宙そのものを象徴するオーナメントで、祝祭の場や人生の節目に飾ることで幸運をもたらし、世代をつなぐと信じられてきたそうです。こちらも多くの方が楽しんでいらっしゃいました。

ソダイは2023年にユネスコ無形文化遺産に登録されたそう。
ラトビアの「プズリ」に似ている。

パビリオンだけでなく、屋外のステージ「ポップアップステージ西」では、ラトビア、リトアニアそれぞれが誇る「歌と踊りの祭典」の空気感を感じてもらおうと、熱いステージか繰り広げられました。
ラトビアからは、「Katrīna Dimanta(カトリーナ・ディマンタ)&band」と、5月のラトビアナショナルデーに続いて、舞踊団「Vektors(ヴェクトルス)」が来日。力強く、心に響くパフォーマンスで観客を魅了していました。

客席から見るだけではなく、プログラムには、みんなで一緒に楽しむDanči(ダンチ)の時間もあったので、私もステージを心ゆくまで満喫しました。“ここ日本で”、“ラトビアのミュージシャンの生演奏で”、“ラトビアの舞踊団と一緒に”、“ラトビアの民族衣装を着て”、フォークダンスをできることなんてこの先きっとない!と思い、思いきりダンスも楽しみました。

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リトアニアのステージでは、リトアニアの文化の専門家が集まって結成された「Lithuanian Cultural Leaders Choir(リトアニア文化リーダー合唱団)」が登場。リトアニアの民族衣装のショーケースや、日本からのスペシャルゲスト「AK Choir」も登場していました。

Lithuanian Cultural Leaders Choirのステージ。

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INFORMATION

大阪・関西万博 バルトパビリオン(ラトビア、リトアニア)
セービングゾーンS6

PROFILE

溝口明子 Akiko Mizoguchi

ラトビア雑貨専門店SUBARU店主、関西日本ラトビア協会常務理事、ラトビア伝統楽器クアクレ奏者
10年弱の公務員生活を経て、2009年に神戸市で開業。仕入れ先のラトビア共和国に魅せられて1年半現地で暮らし、ラトビア語や伝統文化、音楽を学ぶ。現在はラトビア雑貨専門店を営む一方で、ラトビアに関する講演、執筆、コーディネート、クアクレの演奏を行うなど活動は多岐に渡っている。
2017年に駐日ラトビア共和国大使より両国の関係促進への貢献に対する感謝状を拝受。ラトビア公式パンフレット最新版の文章を担当。著書に『持ち帰りたいラトビア』(誠文堂新光社)など。クアクレ奏者として2019年にラトビア大統領閣下の御前演奏を務め、オリンピック関連コンサートやラトビア日本友好100周年記念事業コンサートにも出演。神戸市須磨区にて実店舗を構えている。

http://www.subaru-zakka.com/

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