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「SUBARU」店主 溝口明子のラトビアの手仕事をめぐる旅 vol.21 2024年民芸市レポート(前編その1)

バルト海に面した緑豊かな国、ラトビアに伝わる手仕事の数々。今も昔も変わらない、素朴でやさしい温もりのある伝統的な技、そしてそれらを残し伝えていくベテラン職人、伝統を受け継ぎ新たな形を築く若手作家の作品など。雑貨屋「SUBARU」の店主・溝口明子さんが出会った、ラトビアの手仕事の現在(いま)を現地の写真と共にお届けします。
Text,photo:Akiko Mizoguchi

ラトビアの手仕事の祭典、民芸市「Gadatirgus(ガダティルグス)」へ

森の中にあるラトビア民族野外博物館で、毎年一回開催される民芸市「Gadatirgus(ガダティルグス)」へ今年も行ってきました。今年で52回目、ラトビア全土から500人以上の職人さんが集まる手仕事の祭典です。
会期の2日間とも、ピーカン晴れと雨が交互に繰り返すというめまぐるしいお天気でしたが、博物館に向かうバスは臨時便を含めて超満員。会場には例年以上に特別なムードが漂っていました。それもそのはず、今年2024年は、博物館開園100周年の記念イヤーだったのです。

100周年のロゴが入った正面ゲートのバナー。

広い広い会場は、まず食材のブースから始まります。黒パン、チーズ、蜂蜜、ピクルス、ケーキやお菓子、ハーブティー、肉や魚、ベリー類などの生産者さんのブースが60店以上も軒を連ね、ラトビアの食文化がぎゅっと詰まっています。試食できるブースもあるので、日本では見慣れない食材にもトライしやすそうでした。

ずらりと並ぶ食材のブース。
ピクルスやソースに加工された保存食とお野菜。
Piparkūkas(ピパルクーカス)はラトビアの冬の定番お菓子。アイシングが楽しい。

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帰り道にどれを買おうかと横目でチェックしながら食材のコーナーを進んでいくと、広場に到着しました。ここから手工芸品のエリアが始まります。博物館のゲートをくぐった時から始まるワクワク感(本当のことをいえば、航空券を買った時からすでにウキウキしています)は、広場に着くと最高潮に達し、振り返ってみると民芸市を後にするまで衰えることはありませんでした。

広場にはインフォメーションセンターも。

広場に出店している馴染みの職人さんたちとの会話を楽しんでいると、どこからともなく吹奏楽の音色が聴こえてきてオープニングセレモニーがスタート。さぁ、いよいよ民芸市の始まりです。

博物館全体で東京ドーム約18.6個分もの敷地面積があり、そのうちフードコートなどを含めて五分の一ほどが民芸市の会場なので、途方もない広さです。その広大な会場で見かけたアイテムを順番に紹介していきます。

ラトビアの手仕事といえばこれ。伝統柄が美しいミトン

まずは、編み物。ラトビアを代表する手仕事で、特に三角頭のミトンはラトビアの“顔”ともいえます。
ミトン、靴下、帽子、ジャケット、マウチ(ビーズが編みこまれたリストウォーマー)などを販売するニッターさんたちのブースがそこかしこにありました。ミトンは比較的、伝統模様が多かったように思いましたが、それ以外のアイテムは伝統模様からモダンなデザインまで、ニッターさんによって作風は色々でした。

色鮮やかな伝統模様のミトンがゆらゆら。
靴下、ポンチョ、ベストやジャケットが並ぶブース。
古代のデザインをおしゃれに取り入れたマウチ、帽子など。
ユニークな編みぐるみたち。
犬の毛で編んだミトンを並べるニッターさん。
毛糸を販売するブースも。

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伝統衣装にも使われる織物

続いて織物です。ブースの数は毎回とても多く、その大半が手織りの製品です。テーブルクロス、ランチョンマット、カーペットなどの生活用品、民族衣装のスカート生地、腰紐や帯、ショールやストールなどの服飾品のいずれも豊富に並んでいます。

ウールを主に使ったカーペット、ショール、スカート生地など。
こちらはリネン製のテーブルセンターなど。
アートのように美しいリネンのストール。
民族衣装の腰紐ももちろん手織り。思わず一本欲しくなります。
リエルワールデ帯の機織りのデモンストレーション。

>>2024年民芸市レポート(前編その2) 伝統的な装飾品や木工品もたくさん!

PROFILE

溝口明子 Akiko Mizoguchi

ラトビア雑貨専門店SUBARU店主、関西日本ラトビア協会常務理事、ラトビア伝統楽器クアクレ奏者
10年弱の公務員生活を経て、2009年に神戸市で開業。仕入れ先のラトビア共和国に魅せられて1年半現地で暮らし、ラトビア語や伝統文化、音楽を学ぶ。現在はラトビア雑貨専門店を営む一方で、ラトビアに関する講演、執筆、コーディネート、クアクレの演奏を行うなど活動は多岐に渡っている。
2017年に駐日ラトビア共和国大使より両国の関係促進への貢献に対する感謝状を拝受。ラトビア公式パンフレット最新版の文章を担当。著書に『持ち帰りたいラトビア』(誠文堂新光社)など。クアクレ奏者として2019年にラトビア大統領閣下の御前演奏を務め、オリンピック関連コンサートやラトビア日本友好100周年記念事業コンサートにも出演。神戸市須磨区にて実店舗を構えている。

http://www.subaru-zakka.com/

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