暮らしの中から生まれたパッチワークのパターン①遊び、歌、ダンスのパターン

遊び、歌、ダンスから生まれたパターン
パッチワークのパターンには、娯楽が元になったデザインがたくさんあります。アメリカ人が慣れ親しんできた遊び、童謡、ポピュラーソング、それにダンスの名やそのステップなどがモチーフとなり、さまざまなパターン名としてつけられました。英語に馴染みのない私たちには、その名前から意味をすぐに理解するのは難しいのですが、ひとつひとつの名前がとても楽しげで、意味を知りたくなるものがたくさんあります。人々に受け継がれ、今でも愛されているオールドパターンをピックアップして紹介します。
「Baby Blocks」(ベビーブロック)

色の明暗で立体感を作り、視覚効果を生み出すパターン。大昔よりある模様で、その歴史は古代ギリシャまで遡ることができます。装飾タイルにも大いに使用されていました。イギリスでは、19 世紀前半に絹地でこのパターンを作ることが流行し、19 世紀後半にはアメリカでも富裕層の夫人が手掛けました。
「Oh Susannah」(オー・スザンナ)

「Oh Susannah」は作曲家スティーブン・フォスターが1848年に作った歌の題名で、開拓時代に愛唱されました。当時は、カリフォルニアで金鉱が発見されて、一攫千金を夢見る人々が大陸を大移動したゴールドラッシュの時代。この歌は、アラバマからバンジョーを抱えて出発するところから歌詞が始まっています。このパターンは、1931年発行のルビー・マッキム著『101 Patchwork Patterns』に掲載されました。
「Card Trick」(カードトリック)

トランプカードのマジックを想わせるパターン。「カラスの巣」というパターンと同じ分割ですが、配色によってまったく異なる印象になります。元々は、1970 年代にキルトデザインの本を出版し、大きな影響を与えたガッチョン夫妻が命名したパターンで、日本では1980 年代より広く作られてきました。
「Four Squares」(フォー・スクエア)

「Four Squares」は、子供がボールを打ち合うゲーム。卓球に似た遊びで、正方形の4つの陣地を設け、4人がボールをワンバウンドさせて打ち返します。このパターンは、オクラホマ州で1920 年から1930 年代に発行された農業関係の定期刊行物『オクラホマ・ファーマー〜ストックマン』のキルトパターンを紹介するコラムに掲載されました。
「Pinwheel」(かざぐるま)

おもちゃのかざぐるまそのものの姿を模したパターン。カラフルな色で作ると楽しいモチーフになります。同名パターンは、デザインに差があるものも多く混乱するほど。このデザインは、1881年に創刊した定期刊行物『ダコタ・ファーマー』が、1920年代に掲載した読者投稿のパターンシリーズのひとつです。
さまざまな遊び、歌、ダンスのパターン



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PROFILE

市川直美 Naomi Ichikawa
キルトジャーナリスト、フリー編集者。「パッチワーク通信」の編集長を務め、その後「よみうりキルト時間」「キルトダイアリー」を手掛ける。長年に渡り、世界各国のキルトや作家を取材し、キルトを通して見えてくる歴史や文化を誌面で紹介してきた。国内外の数多くのキルトフェスティバルや美術館での展示の企画、ツアーの企画、キルトに関するレクチャーも行っている。著書に『プリンスエドワード島 キルトの旅』『英国キルト紀行』『アメリカキルト紀行』など(全てパッチワーク通信社刊)。最新刊は『Kawaii Applique Quilts from Japan』(TeresaDuryea Wongとの共著、SCHIFFER社刊、 2025年)。
INFORMATION

365日のパッチワーク・バースデーパターンブック
編著:市川 直美
誕生花や誕生石があるように、365日のパッチワークのパターンがあったらと思い作ったキルト作りのためのパターンブック。アメリカで古くから親しまれてきたパッチワーク・キルトの中から、時期や季節に因んだパターンや、人気のあるパターン、そして今まであまり知られてこなかった珍しいパターンまで、主に19世紀末ごろから20世紀半ばごろまでに生まれたパッチワークのパターンの中から365日分を選び「バースデーパターン」として紹介。1日、1パターンを1ページにまとめ、1年分(366種類)のパターンを掲載。すべてのパターンを実例とともに紹介し、製図、縫い順、名前の由来やキルトにまつわる歴史話も添えています。
定価:3,960円(税込)
発売日:2025年7月11日
ISBN978-4-416-62400-5
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誠文堂新光社