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手芸本の編集者 春日一枝さんのおすすめ『手芸フレンド ピチ』

photo, text: Kazue Kasuga, Illustration: pan-to-tamanegi

こんにちは。世界の手仕事が好きで、その好きを分かち合いたくて、本を作り、Bahar(バハール)という屋号で、展示販売を行ったり、ワークショップを開催したりしています。現在は神奈川県の逗子で不定期に活動しています。1月からはジャックラッセルテリアのキュウちゃん(女の子)と暮らしています。犬と暮らすことで、これからの活動に変化が現れるかも?なんて思っています。

Q

春日さんのおすすめの本について聞かせてください。

『手芸フレンド ピチ』(学研/1980年12月号)
好きでずっと持っている本はいろいろありますが、持っている中で最も古く、お守りのような本が『手芸フレンド ピチ』(学研/1980年12月号)です。雑誌なので、何冊かあるのですが、その中でもこの「たのしい手あみ特集号」が特に好きです。表紙のうさぎのマフラーは今見てもとてもかわいい。小学生だった私の心をわしづかみにした、夢のような雑誌です。当時のアイドルがモデルとして登場していて、豪華です。「好き」というまっすぐな気持ちを思い出したい時に手に取ります。

『手芸フレンド ピチ』(学研/1980年12月号)

Q

この本のどんなところが心に残ったのでしょうか。

ピチは手芸の総合雑誌で、あらゆる手芸作品が載っていました。手編みの特集号でも、フェルトやポンポンマスコット、ソーイング、コサージュの作品があり、どのページをめくってもときめきました。読者ページも大充実。貴重なお小遣いで買った雑誌、すみからすみまで読み込みました。「ミニ作品コンクール」もあり、応募した記憶があります(受賞ならずでしたが…)。掲載作品を編みたくて、クリスマスプレゼントに毛糸を買ってもらいました。

Q

現在のお仕事・ご活動、ものづくりにはどう繋がっていますか。

自身が『ピチ』や、少女向けの手芸書から受け取ったものが多かったので、今度は私が届けて恩返しをする番、と思い、小学生から楽しめる『はじめての手づくり かんたんかわいいソーイング』、『はじめての手づくり すいすいできるあみものとポンポンこもの』(ともに小学館/2015年)を出版しました。掲載作品も全て私が作り、編集も行いました。版を重ね、多くの小学生に届いたようで嬉しいです。

『はじめての手づくり かんたんかわいいソーイング』、『はじめての手づくり すいすいできるあみものとポンポンこもの』(ともに小学館/2015年)

そして、今回のこの企画で、今の自分に『ピチ』がどう繋がっているか、という目で読み返し、気付いたことがあります。ライオンのマフラーがあり、これは自分の中に「かわいいもの」としてずっと残っていた、と。
私は「ポンポンズ」というユニットで、ポンポンづくりの本に携わりました。この本で紹介している柄入りポンポンは、ハンガリーで見た民族衣装のポンポンから着想を得ました。色糸を巻く順番で柄をつくることができる、と知った衝撃たるや。これが柄入りポンポンをつくる本『かんたんすてきなポンポンづくり』(グラフィック社/2011年)を出すきっかけとなり、その第二弾『かわいいかたちのポンポンづくり』(同/2013年)では、立体的な動物をつくりました。そこでライオンのポンポンをつくったのですが、これ、実はこの少女時代の「このライオン、かわいい!」と思った気持ちが、現れたのではないかと思いました。毛糸のライオン、かわいいですよね。

『かんたんすてきなポンポンづくり』(グラフィック社/2011年)、『かわいいかたちのポンポンづくり』(同/2013年)
『手芸フレンド ピチ』(学研/1980年12月号)に掲載のライオンのマフラー。

Q

最後に、手芸・手仕事・ものづくりの魅力はなんだと思いますか。

自分でつくる場合は、まず何をつくろうか考える、布や糸などの素材を選ぶ、できていく過程を見る、そして使う、それらをまるごと楽しめるのが魅力です。プロの職人さんがつくったものも、どんなふうにつくっているか、どんな場所で生まれたかを知ると愛しくなります。
そして世界の手仕事に興味を持つと、そこに暮らす人々へ想いを寄せることになります。今も戦争や災害によって、安心安全な暮らしができない人がたくさんいます。自分にできることは何かを常に考えるようになりました。

自宅の本棚と、ジャックラッセルテリアのキュウちゃん。

PROFILE

春日一枝 Kasuga Kazue

福井県出身。小さいころから手芸と漫画が好き。漫画家になりたくて上京し、漫画の編集プロダクションに入社。漫画家にはなれなかったが、フリーランスの編集者となる。現在は季刊誌『毛糸だま』(日本ヴォ―グ社)にて『世界手芸紀行』の連載を担当。同出版社からの書籍『新装版 世界手芸紀行』『美しき世界手芸紀行』の編集に携わる。ほか、編集した書籍に『ポーランド ヤノフ村の絵織物』『キャンドル教本』『カザフ刺繍』(誠文堂新光社)などがある。

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