STORE

「SUBARU」店主 溝口明子のラトビアの手仕事をめぐる旅 vol.28 生産者さん探訪記その2 織物会社リンバジュ・ティーネのヤーニスさん(前編)

バルト海に面した緑豊かな国、ラトビアに伝わる手仕事の数々。今も昔も変わらない、素朴でやさしい温もりのある伝統的な技、そしてそれらを残し伝えていくベテラン職人、伝統を受け継ぎ新たな形を築く若手作家の作品など。雑貨屋「SUBARU」の店主・溝口明子さんが出会った、ラトビアの手仕事の現在(いま)を現地の写真と共にお届けします。
Text,photo:Akiko Mizoguchi

創業110年超!歴史を紡ぐラトビアの織物メーカー

ラトビアを代表する織物会社、Limbažu Tīne(リンバジュ・ティーネ)は、リガから北東へ車で走ること約80分、のんびりとした古都Limbaži(リンバジ)の中心部にあります。
持ち帰りたいラトビア』(誠文堂新光社刊)でも紹介したこの織物会社は、創業110年を超える歴史ある工房。45名の腕利きの職人さんたちによる分業で、毛糸の製造をはじめ、布地を織りあげてテーブルクロスなどに製品化するまでのすべての作業が行われています。

入り口を入ってすぐの直売所では誰でも自由に買い物できる。

【無料メルマガ会員募集】編集部の独自コラム、会員限定のお得な情報をお届けします。

リンバジュ・ティーネ社ではリネンやコットン、自社製のウールを使って、ブランケット、ベッドカバー、テーブルクロス、クッションカバー、ナプキンなどといった日常の暮らしに必要な織物製品が作られています。会社を訪問すると、毛糸の製造過程から発せられるウールのもわっとした香りが鼻先をくすぐります。

原毛は地元ラトビア産とドイツ産を使用している。
原毛をほどよくミックスさせる職人さん。

【無料メルマガ会員募集】編集部の独自コラム、会員限定のお得な情報をお届けします。

機械織りでも仕上げは手作業。
より複雑な織物は、別の場所に構える工房で手織りされている。

民族衣装をはじめとした伝統文化に深く関わる

リンバジュ・ティーネ社について特筆すべきは、民族衣装のスカート生地を手広く織っていることです。その功績はラトビアという国にとっても大変大きなもの。ラトビアの民族衣装は町や村ごとにすべて異なり、数え切れないほどのデザインや色を使い分ける必要があります。国や民族が時代の荒波に翻弄されながらも、リンバジュ・ティーネ社がコツコツと培ってきた知識と確かな技術があったからこそ、民族衣装の多様性がそのままの形で守られたといっても過言ではありません。
さらに驚くべきことに、当初はラトビアの民族衣装だけを手掛けていましたが、同社の存在を知った隣国エストニアとリトアニアからも注文がくるようになり、今やバルト三国すべての民族衣装を織っているそうです。三国の衣装を扱うことで、どこが似ていてどこが違うのかを比べることができ、職人さんたちにとっても興味をそそる仕事だそうです。

地方ごとにファイリングされた民族衣装の資料とスカート用の生地。
民俗学的に正しい衣装であるように、色選びは慎重に行われる。
ゲストルームには、ラトビアのそれぞれの地方の代表的な民族衣装が飾られている。
リンバジュ・ティーネ社の創業100周年を称えた新聞記事(2014年)。

>>vol.28 生産者さん探訪記その2 織物会社リンバジュ・ティーネのヤーニスさん(後編)へ続く

INFORMATION

Limbažu Tīne

住所:Pļavu iela 4, Limbaži,
www.limbazutine.lv/

PROFILE

溝口明子 Akiko Mizoguchi

ラトビア雑貨専門店SUBARU店主、関西日本ラトビア協会常務理事、ラトビア伝統楽器クアクレ奏者
10年弱の公務員生活を経て、2009年に神戸市で開業。仕入れ先のラトビア共和国に魅せられて1年半現地で暮らし、ラトビア語や伝統文化、音楽を学ぶ。現在はラトビア雑貨専門店を営む一方で、ラトビアに関する講演、執筆、コーディネート、クアクレの演奏を行うなど活動は多岐に渡っている。
2017年に駐日ラトビア共和国大使より両国の関係促進への貢献に対する感謝状を拝受。ラトビア公式パンフレット最新版の文章を担当。著書に『持ち帰りたいラトビア』(誠文堂新光社)など。クアクレ奏者として2019年にラトビア大統領閣下の御前演奏を務め、オリンピック関連コンサートやラトビア日本友好100周年記念事業コンサートにも出演。神戸市須磨区にて実店舗を構えている。

http://www.subaru-zakka.com/

【無料メルマガ会員募集】編集部の独自コラム、会員限定のお得な情報をお届けします。

限定情報をいち早くお届けメルマガ会員募集中!