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林ことみの手仕事語り vol.4 パリの地下鉄に乗って美術館へ

林ことみさんは、フランス・パリで刺し子展を4月16日~27日の12日間、開催されました。今回は滞在日数も長いこともあり、パリを散策される時間もとれたようで、このVol.4では、林ことみさん流のパリ案内をしていただきました。
text,photo: Kotomi Hayashi

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久しぶりの地下鉄に挑戦

初めてパリで地下鉄に乗ったのは38年前のこと。始めは戸惑いましたが、ツアーの参加者と一緒だったこともあり、何度か乗っているうちにどの方向に行くのかを確認できれば問題なく乗れるようになりました。今回は久しぶりだったので、少し不安もありましたが乗っているうちにだんだんと思い出してきました。乗り換える駅も、ホームを降りる際に別の路線の駅名が書かれているのがわかり安心でした。

ICカードは「navigo easy」がおすすめです。街のたばこ屋でもカードは購入できますが(チャージしてくれるタバコ屋もある)、チャージもできる駅での購入が安心でした。まずは、2ユーロでデポジット料と10枚分のチケットを窓口でチャージしてもらいました。地下鉄の場合は、何度乗り換えても一律料金です。
最初にこれを使って改札に入った時、なぜか機械が反応しなくて戸惑っていたら、周りの人が「ここから乗れますよ」と入り方を教えてくれました。日本の改札とは違い、檻のような扉にカードをかざす機械があり、そこから入ることができました。
カードをタッチしても、ほとんどの駅の扉は自動的に開かず、自分でグッと押して改札を通ります。自動的に開く思っていたので、機械の具合が悪いのか私のカードの不具合かと思い、隣の改札機にタッチしたら赤いバッテンになり入れなくなってしまいました。同じ駅で2度タッチしたので入れなくなったことがわかりました。日本と同じように自動的に改札の扉が開く駅もありますが、要注意です。

電車の車両は自動ドアの方が多かったのですが、ハンドルを上に回して自分で開くタイプもありますので、これもご注意ください。38年前は若かったのもあったのか気付きませんでしたが、とにかくエスカレーターもエレベーターもほとんどと言っていいくらいありませんでした(ついている駅もありましたが)。これはなかなかの運動になりました。昼頃に出かけて17時頃に帰路につくようなスケジュールでも、宿舎に着いた頃にはすっかりヘトヘトでした。

お得なミュージアムパスで美術館巡り

ご存知のようにパリには美術館がたくさんあります。今回はロダン美術館とピカソ美術館に行きたいと思っていました。調べてみるとお得に施設をめぐることができるミュージアムパスというチケットがありました。2日間と4日間の2種類があり、友人と私は2日間のパスを選びました。これは一度使用すると、連続して2日間、または4日間を使い続ける必要があります。
私たちは、パスを使用した2日間でオランジュリー美術館、オルセー美術館、ロダン美術館、ピカソ美術館に行きました。インターネットでは、パスが使える美術館でパスが購入できるとあったのでパリ装飾美術館に行って尋ねると、使用はできるが販売はしていないとのこと。これは誤情報でした。
他のサイトには、オランジュリー美術館やルーブル美術館で買えるとあり、オランジュリー美術館に行って購入しました。

以前も訪れたことのあるオランジュリー美術館にはモネの睡蓮が展示されています。壁いっぱいに広がる蓮池の前に立つと自分も池を実際に見ているいる様な感覚で、新たな感動がありました。
館内のカフェでは軽い食事をしました。町でトイレを探すのは大変ですが、美術館にはトイレもありますので安心です。近くの橋からはエッフェル塔が見えて「パリにいる!」という高揚感ですっかりお上りさんになっていました。

オルセー美術館は印象派の絵画が展示されています。初めて行ったのですが展示空間の使い方が面白いと思いました。広い空間にずらりと展示するのではなくこぢんまりとした空間でテーマに沿った絵を見ることができました。

ロダン美術館は、彼が晩年の10年を過ごした建物です。庭が綺麗だと定評がありますが、確かに広い庭に作品が並んでいて調和していました。かの名作『考える人』も上野とは違う環境で“考えて”いました。かなり前に、東京で開かれていたロダン展で見た『パンセ』もこの美術館に飾られており、久々にじっくり対面して来ました。テラコッタ彫刻の作品は見たことがなかったので興味を惹かれました。
ピカソ美術館は、もともと歴史的な建物としてパリ市が買収した後にピカソ美術館になったとのこと。ピカソ自身が収集した絵画もあって、彼の制作への影響もわかる展示でした。

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ピカソ美術館。

ミュージアムパスは使えませんでしたが、もう1カ所ギュスターブ・モロー美術館にも行きました。モローの邸宅がそのまま美術館になっていて、通り過ぎてしまったくらいに、周りの建物と区別がつきにくいので気をつけてください。広いアトリエに立ち、ここでモローが制作をしていたのだと思うと、普通の美術館で見る時と作品も違って見える感じがしました。

じつに24年ぶりのパリでした。途中、刺し子展がプレッシャーに感じた時もありましたが、開催したことで現地の手芸店で働く日本人の方々とも知り合えたり、パリのジュンク堂では日本人スタッフから私の本についての話を聞くこともできました。
多くのフランス人が日本の手仕事に興味を持っていることがわかり、日本の出版社は、もう少しヨーロッパでの翻訳出版を考えてもいいのではないかと勝手ながら考えてしまいました。そして手仕事は、ユニバーサル言語なのだと、あらためて実感できたのでした。

ギュスターブ・モロ―美術館。
Vol.3で紹介したLil Weaselの入っている古いアーケード。

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PROFILE

林ことみ Kotomi Hayashi

子供の頃から刺繍やニットに親しみ、子供が生まれたことをきっかけに子供服のデザインを雑誌に発表。ソーイングの本の作り方ページを担当することで本の編集にたずさわる。子供服の手作り雑誌『手作りママキディ』の副編集長を勤め、その後フリーの編集者となって『まんがdeソーング』シリーズを始めソーングの本を中心に企画編集をしていたが、2000年に北欧で開催された第1回目のニッティングシンポジウムに参加したことをきっかけに北欧のニット作家の本『ヴィヴィアンの楽しいドミノ編み』(文化出版局)などを編集すると同時に北欧ニットを紹介する本『北欧ワンダーニット』『ビーズニッティング』(文化出版局)を出版。エストニアには何度も出かけ関連本『アヌ&アヌの動物ニット』(誠文堂新光社)他を出版。読み物本としては『手仕事礼讃』(誠文堂新光社)『北欧ニット旅』(日本ヴォーグ社)『林ことみの刺し子ノート』(筑摩書房)がある。

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