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林ことみの手仕事語り vol.3 パリでちいさな刺し子展を開きました

林ことみさんは、フランス・パリで刺し子展を4月16日~27日の12日間、開催されました。以前よりお話を伺っていた編集部は、その展示を開くことになったきっかけや、実際に展示するまでの過程を、お帰りになったタイミングでご執筆いただきました。合わせておすすめのパリの手芸店も紹介いただきました。
text,photo: Kotomi Hayashi

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海外に刺し子を紹介したいという強い思い

2024年4月16日から27日まで、パリの小さなギャラリー「Galerie SATELLITE: 7 rue François de Neufchàteau 75011」でこぎん刺しと菱刺しの展示会を開きました。場所は、地下鉄9番のシャロンヌ駅のすぐ近く。少し歩けばバスティーユ広場にも行けるところです。
友人のイラストレーターで手芸家のミウラアキコさんのご紹介で、2022年12月に、このパリのギャラリーのオーナーである河津真理恵さんに東京でお目にかかり、いろいろとお話を詰めていって、開催することを決心しました。

私は以前から、海外に刺し子を紹介したいと思っていました。2011年にアメリカの手芸雑誌『PIECE WORK』に刺し子の記事を書いたことを、キュレーターをしているスウェーデン人のニット仲間に話したところ、彼女が務める美術館で刺し子展を開催しようということになり、2013年にそこで刺し子展が開かれました。
しかし自分で企画をした展覧会というわけではなかったため、少し不完全燃焼の気持ちが残り、もう一度海外で刺し子の展示をしたいと思っていました。

その後、青森に住むニット仲間の西澤恭子さんと親しくなったことがきっかけで、刺し子の中でもこぎん刺しの魅力に惹かれるようになり、2015年に再び『PIECE WORK』に、今度はこぎん刺しと菱刺しの記事を載せてもらいました。どんどん私の中で、こぎん刺しと菱刺しの展示会を開きたいという気持ちが高まっていき、規模は小さいですが、縁もあってこの度「こぎん刺し&菱刺し」展を開くことができました。

作品の目玉は、青森の西澤さんにご紹介していただいたコレクターからお借りしたこぎん刺しの着物3着、身頃2枚、菱刺しのタッツケ(パッチ)、前垂れ布で、西澤さんと私も小さな刺し子布を作りました。
フランス人は幾何学模様が好きだという河津さんの話に、こぎん刺しや菱刺しも受け入れてもらえるのではないかと期待を込めて制作に励み、オーナーの河津さんに告知をお願いし、フランスにネットワークを持つ友人にも声を掛けて開催を待ちました。

菱刺しのタッツケ。
展示した刺し子の小物。

いよいよ刺し子展オープン!

オープニング当日は、ギャラリーの常連やオーナーの河津さんが声をかけてくださった方々が来てくれました。中には、日本のフランス大使館で以前仕事をしていたという男性が来ていました。現在は、日本とフランスをつなぐ仕事をしているとのことで、ご自身のサイトに私たちの展示会やこぎん刺しの情報をアップしてくれました。

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21日には、この展示会に合わせてパリ旅行をしていた西澤さんの友人三人が来てくれました。22日には、北欧ニットシンポジウムを主催しているデンマークのニット協会「Gavstrik」のメンバーがちょうどパリに来るということがわかり、展示会に来てくれました。彼女はフランス人のご主人と一緒に来廊。じつは『毛糸だま』の私の連載ページの資料を持って来てくれたのでした。デンマークに住むニット仲間との初めての出会いがパリとは驚きましたが、刺繍も好きだという彼女はじっくり展示を見てくれました。

デンマークの知人とお話し。

26日には、パリに『Sashiko-ya』という刺し子材料店を持つ佐久間聡美さんが来てくれました。前日に私が彼女の店に訪れたところ、偶然にも私がコレクターの鈴木滿子さんと一緒に2005年に出版した『暮らしに生きる刺し子』(文化出版局、2005年刊)と『林ことみの刺し子ノート』(筑摩書房、2014年刊)をお持ちとのことで話が弾み、お忙しい中来てくださいました。
最終日には、パリで見つけた毛糸屋でお会いした日本人スタッフの指原映子さん、さらに刺し子を教えているというフランス人の方も来てくれました。
盛況というほどではありませんが、来廊された方々の反応は良く、ギャラリーのYouTubeもたくさんの人が見てくれたようでした。

パリのおすすめ手芸店

毎日ギャラリーにいる必要はないので、パリのガイドブックとGoogleマップを頼りにフランス通の友人がおすすめしてくれた手芸店を始め美術館、大型商業施設などに行きました。
パリに来るのは5回目ですが、今までは滞在日数も2~3日と少なくホテル周辺でぶらぶらしただけでした。今回は滞在日数も長く、今まで行けなかった手芸店をハシゴすることにして、結局、9店舗回りました。地下鉄の路線番号と実際に降りた駅も記しておきます。

INFORMATION

sashiko-ya

日本人女性が開いた刺し子材料店。オーナーの佐久間聡子さんはパリでデザイナーとして働きつつも、刺し子好きが興じて、フランス語で本を出版したほど。店内には古い着物やボロも展示されていてフランス人が日本の素材に興味があることを実感した。店では彼女の本の購入もできる。
107 bis rue Marcadet 75018
地下鉄 12 Jules Joffrin
TEL 06 20 93 41 35

https://sashiko-ya.fr/

INFORMATION

ULTRAMOD

老舗の手芸店で帽子のサンプルや材料、リボン、タッセルなどが揃っている。店内は歴史を感じさせる調度品があって手芸好きには店内にいるだけで幸せな気持ちになる。
4 rue de Choiseul 75002
地下鉄3 Quatre Septembre駅
TEL 01 42 96 98 30

INFORMATION

la droguerie

日本にもあるドログリーの本店は地下鉄レアール駅の近く。この地区はもともとパリの胃袋と呼ばれる市場があってドログリーの店舗は元肉屋だったとか。リボン、ビーズ、毛糸など色に溢れた店内だった。
9-11, rue du jour, 75001
地下鉄 4 Les Halles 駅
TEL 01 45 08 93 27

https://www.ladroguerie.com/

INFORMATION

Mercerie A Bout de Fil

こじんまりとした手芸店だがパッチワーク、刺繍、毛糸、道具類など商品の種類も多く、ショーウインドウの飾り付けも可愛い。
14, rue Michel Chasles 75012
地下鉄 1&14  Gare de Lyon駅
TEL 01 73 74 06 78

https://www.aboutdefil.com/

INFORMATION

Le Bonheur des Dames

パサージュベルトというアーケードの中にあるクロスステッチの材料店として有名。看板がユニーク。近くに老舗のチョコレート店があった。
8 Passage Verdeau 75009
地下鉄 8&9 Grands Boulevards駅  地下鉄 7 Le Peletier駅
TEL 01 45 23 06 11

https://www.bonheurdesdames.com/fr/

INFORMATION

Les Brodeuses Parisennes

展示会を開いたギャラリーの並びにある刺繍の店。キット商品が豊富でオリジナルのクロスステッチ模様のノートは可愛くておすすめ。
1 rue François de Neufchàteau 75011
地下鉄 9 Charonne駅
TEL 01 40 24 20 80

https://www.lesbrodeusesparisiennes.com/fr/

INFORMATION

Lil Weasel

古いアーケードの中に通路を挟んで毛糸と刺繍の店とパッチワーク用の布と手染めの毛糸の店が向かい合っている。1つの方は毛糸を中心に色別に棚に入れてあり、思わず色に惹かれて購入。もう1軒の方の段染め毛糸は今までは展示会でしか手に入らなかったが店舗で買えるのははここだけだとか。日本人スタッフの指原映子さんが親切に色々教えてくれるので安心。
1-4 Passage Grand Cerf 75002
地下鉄 4 Etienne Marcel駅  地下鉄 3&4 Réaumur Sébastopol駅
TEL 01 73 71 70 48

https://www.lilweasel.com/

INFORMATION

La Mercerie Parisenne

リボンやボタンが豊富に揃っている手芸店。道路から入ったところにあるのでよくチェックして。
8 rue des Francs Bourgeois 75003
地下鉄 8 Chemin Vert駅 地下鉄 1 St Paul駅
TEL 01 48 87 58 98

https://www.lamercerieparisienne.com/en/

INFORMATION

Fils&Laines

ギャラリーから一駅のところにあるカジュアルな手芸店で、毛糸や道具も揃っていた。プリムの面白い道具があったので購入。
47-49 Rue Basfroi
TEL 01 43 72 13 59

https://www.filsetlaines.com/

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vol.4 につづく…

PROFILE

林ことみ Kotomi Hayashi

子供の頃から刺繍やニットに親しみ、子供が生まれたことをきっかけに子供服のデザインを雑誌に発表。ソーイングの本の作り方ページを担当することで本の編集にたずさわる。子供服の手作り雑誌『手作りママキディ』の副編集長を勤め、その後フリーの編集者となって『まんがdeソーング』シリーズを始めソーングの本を中心に企画編集をしていたが、2000年に北欧で開催された第1回目のニッティングシンポジウムに参加したことをきっかけに北欧のニット作家の本『ヴィヴィアンの楽しいドミノ編み』(文化出版局)などを編集すると同時に北欧ニットを紹介する本『北欧ワンダーニット』『ビーズニッティング』(文化出版局)を出版。エストニアには何度も出かけ関連本『アヌ&アヌの動物ニット』(誠文堂新光社)他を出版。読み物本としては『手仕事礼讃』(誠文堂新光社)『北欧ニット旅』(日本ヴォーグ社)『林ことみの刺し子ノート』(筑摩書房)がある。

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