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編み物のお繕い その3 〜すりきれてできた靴下の穴のお繕い〜

靴下は⽳のあきやすいアイテムです。履き続けることで、床や靴と当たる部分がすりきれ、気がついたら⼤きな⽳になっていたりします。だからといって、⼿放しづらいのも靴下。⽳位置以外はきれいなままのことが多いですし、お気に⼊りの1⾜ならなおさらのこと。どうしようか迷うようなら、ぜひお繕いをしてみましょう。あなたの⼿で、その靴下はまだまだ活躍できるようになるはずです。特集その3は⼿紡ぎ作家の帯⼑貴⼦さんに昭和の資料を元にした⽑⽷の靴下の繕い⽅を教えていただきます。
photo:Takashi Sakamoto, text: Sanae Nakata

教えていただいたのはこの方

帯刀貴子さん

「手紡ぎ糸で編み物しましょう」 をコンセプトに世田谷の工房で糸紡ぎ・編み物教室を主催。野望は世界中の羊毛を紡ぐこと。そして古来の技法、スプラング・ボスニアンクロシェ・ノールビンドニング・ルーピングなどに精通した、いにしえの編物師となるべく、研鑽を深めている。

http://baruknitting.blog29.fc2.com

すり切れてできた⼤きめの⽳ 〜 難易度 ★★★★ 〜

床や靴との摩擦面が広い靴下は、すりきれる箇所も広範囲になりがちです。ここでは、そんな「大きめの穴」の繕い方を紹介します。
靴下の穴のお繕いで意識するのは、見た目、履きごこち、強度の3つです。つま先などにできる比較的小さな穴は、セーターの虫食い(特集その2で紹介)と同じ繕い方で間に合います。底や、かかとにできる大きめの穴は、ごろつきなく、フラットな編み地に直すことが大事です。補修糸はナイロン混のソックヤーンに木綿糸を組み合わせて使うと、すり切れにくく丈夫に仕上がります。

■お繕いの仕方

靴下の底にできた穴をお繕いします。

<参考資料>
下図を参考にして繕います。

『毛糸の再生法と編み物の洗ひ方・染め方・縫ひ方』婦人倶樂部十月號附録/第日本雄弁会講談社より抜粋。

<下準備>

編み⽬を整えてからお繕いしましょう

⽳があいたまま履いていた靴下は、すり切れた箇所が伸びたり、ゆがんだりしているので、最初に補修位置の編み⽬を整えておくと次の作業がしやすくなります。編み地に軽くアイロンのスチームをあてたら、⽳の縁まわりに中途半端に残っている⽑⽷を編み⽬がきちんと残っている位置までほどき、⽳の形を整えます。
靴下の穴の形を整え、細糸(ほどけ防止のためのすべりのよい糸)を穴の上下の編み目に通してから、ダーニング・マッシュルームに固定します。
※特集その2、「縦横の糸がすり切れてできた穴」の記事内、お繕いの仕方 <下準備> を参照ください。

<お繕い>
① 補修糸は、縦に張る芯に木綿糸を、新しい編み目用に靴下のダーニング用の毛糸(以下、糸)を使います。

木綿糸と補修糸は、靴下の色に合わせた色を選ぶ。

② 木綿糸を縫い針に通し、穴の右下の縁の目(細糸を通した段)を写真のように拾って木綿糸を通します。糸端は糸始末できる程度を残しておきます。次に穴の右上の縁の目を写真のように拾います。上下の目を拾う時は、針を入れる方向をメリヤスはぎと同じになるように行います。
※特集その2、「縦横の糸がすり切れてできた穴」の記事内、お繕いの仕方 <下準備> を参照ください。

③ 縦に木綿糸が1本張れました。続けて、穴の下の目、上の目の順に、写真のように針を通して木綿糸を引きます。これをくり返し、木綿糸を最後まで張ります。

④ 糸端は数目、編み地に通してから余分をカットします。

⑤ 靴下のダーニング用の糸をとじ針に通し、補修の1段めの1目めを作ります。

穴から2〜3目離れた位置から針を入れ、穴の右下の縁の目(細糸を通した段)に後ろ側から手前に針を出します。
次に2段めの1目を拾い、続けて最初に張った木綿糸2本をすくいます。
穴の右下の縁の目に戻り、★の位置に針を入れ、次の目に後ろ側から手前に針を出します。
1段めの1目めができました。木綿糸が芯になっています。


⑥ 次からも⑤と同じ要領で縦に張った木綿糸2本をすくいながら目を作っていきます。

⑦  最後は縁の2段めの目を拾ったあと、★に戻って針を入れ、1段めの目から出します。

⑧ 2段めは左から右へ目を作っていきます。目を作る時は、前段で作った新しい目を拾います。

⑨ 2段めができました。

⑩ 最後の段まで目を作ったら、穴の上に残った目とはぎ合わせます。

※特集その2第2回、●数目、横方向にほつれた穴 の■お繕いの仕方の動画を参照。同じ要領(メリヤスはぎ)で仕上げてください。

⑪ はぎ終わりました。細糸を抜きます。糸端をとじ針に通して裏側へ出し、編み地に数目くぐらせてからカットします。糸端は履いているうちにフェルト化するので、短めに切り揃えたままでもかまいません。

⑫ お繕いのできあがり。

一目ゴム編みの編み地にできた穴 〜 難易度 ★★★★★〜

 履き口の一目ゴム編み(表目と裏目が横方向に交互に並ぶ編み地)に穴があいた場合の繕い方です。大きめの穴の繕い方と基本は同じですが、穴をふさぐために表目と裏目を交互に作っていくため、作業が少し複雑になります。お繕いの方法は昭和の資料をご覧ください。

■お繕いの仕方 〜昭和の資料から〜

『毛糸の再生法と編み物の洗ひ方・染め方・縫ひ方』婦人倶樂部十月號附録/第日本雄弁会講談社より抜粋。

一目ゴム編みの編み地にできた穴 (ほどいて編み直す方法)〜 難易度 ★★〜

 一目ゴム編みの段数が少ない時は、ほどいて編み直す方法もあります。履き口側が作り目の場合は、糸をほどきづらいので本体から一目ゴム編みの部分のみを切り離し、本体に残った目を拾って編み直します。

■お繕いの仕方

① 一目ゴム編みより本体側へ2〜3段下の目にほどけ防止の細糸を通します。

② 切り替え位置の一目ゴム編みの目をカットし、1段ほどいて切り離します。切り離した編み地はほどいて糸玉にしておきます。

■糸の巻き方 〜中心から糸を引き出せる巻き方〜

③ 本体側に残った目をすべて棒針で拾い、ほつれ防止の細糸を引き抜きます。

④ ②の糸を使って必要な段数を編み、最後は目を伏せて仕上げます。
※直す前の丈より一目ゴム編みの段が1〜2段少なくなるので、気になる場合は新しい糸を用意してください。

あらためて②でほどいた糸をつけ、編み直す。

※ この方法はセーターの袖や裾などの補修やリメイクの時にも応用できます。

『毛糸の再生法と編み物の洗ひ方・染め方・縫ひ方婦人倶樂部十月號附録/第日本雄弁会講談社より抜粋。

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次回はかぎ針編みの編み地のお繕いです。

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取材したのはこの方

中田早苗

手芸関連の雑誌、書籍を中心に、フリーランスのエディター、ライターとして活動。 初心者向けのニット本や『世界のかわいい編み物』『ラトビアの手編みミトン』(ともに誠文堂新光社)、各種手芸書、ラトビア公式パンフレット最新版などの編集を手がける。『ラトビアのミトン200』(誠文堂新光社)では、エディトリアルトリオ・LIEPA(リエパ)で編集を担当。近年はワークショップや作品提案も行う。

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