編み物のお繕い その2 〜⼩さなほつれ、⾍⾷い⽳のお繕い
教えていただいたのはこの方
帯刀貴子さん
「手紡ぎ糸で編み物しましょう」 をコンセプトに世田谷の工房で糸紡ぎ・編み物教室を主催。野望は世界中の羊毛を紡ぐこと。そして古来の技法、スプラング・ボスニアンクロシェ・ノールビンドニング・ルーピングなどに精通した、いにしえの編物師となるべく、研鑽を深めている。
今も昔も「お繕いは小さいうちに」
このくらいならまだ大丈夫と、ついつい後回しにしがちな「お繕い」。ちょっとしたほつれや穴を大きく育ててしまっているのは、ほかならぬ自分自身かもしれません。小さな穴のうちに繕えばあまり目立つことなく、お気に入りのニットをもっと長く愛用できるはず。そして小さい穴ほど、気負いなく「お繕い」にチャレンジできます。
実は昭和の資料にも同じことが書かれていました。「繕ひは小さいうちに」。この教えは、今も昔も変わりません。ここでは「穴」を見つけたら、すぐにお繕いができるよう、ベーシックでわかりやすい手法を紹介します。
数目、横方向にほつれた穴 〜難易度★〜
糸が切れて、同じ段の編み目が数目ほつれただけの穴は、とても繕いやすい穴。ほどけた部分に補修糸を使って編み目を作ることで簡単に直せます。穴位置の左右2〜3目にも新しい編み目を重ねて繋げるので、元の編み地がほどける心配もありません。
■お繕いの仕方
元の編み地と同じくらいの色か、少し濃い色の糸をとじ針に通し、穴の2〜3目、手前から編み目を作り始めます。土台の編み目に重ねて糸を刺すところは「メリヤス刺しゅう」、穴をふさぐところは「メリヤスはぎ」という手法を使います。以下の動画を参照してください。
<糸始末>
穴がふさがったら、最後は少し離れた位置に糸を出し、余分な糸をカットしてできあがり。
1目、縦方向にほつれた穴 〜難易度★★〜
糸が切れた位置から縦方向に糸がほつれてしまった場合、ほつれた位置の一番下の編み目から、上の段の横糸をかぎ針で拾って編み目を作り、修繕します。このお繕いの方法は昭和の資料をご覧ください。工程2からは横方向にほつれた場合と同じ手順です。
■お繕いの仕方 〜昭和の資料から〜
●縦横の糸が切れてできた穴 〜難易度★★★〜
■お繕いの仕方 〜細い毛糸で編まれた編み地の場合〜
※編み地の目が細かいので、お繕いの解説では補修に使った細い糸に合わせ、細めのとじ針やレース針を使用しています。実際は、お繕いする編み地の糸の太さに合わせ、補修糸と針を選んでください。
<下準備>
① 穴が中心になるようにダーニングマッシュルームをセットします。編み地がずれないように輪ゴム(ひもでもOK)を巻いて固定します。
② 穴の上下に残った、糸の切れていない段の編み目にほつれ防止の絹糸を通します。その時、縫い針の頭を使うと通しやすいです。
③ 穴の縁まわりに中途半端に残った編み目をほどき、ほどいた糸を裏側へ押し込んで、四角い穴になるように整えます。これで準備完了です。
<お繕い>
実際は編み地と同じくらいの色か、少し濃いの色の糸を使用してください。
※補修用の糸がわかりやすいように、土台の編み地より明るい青の毛糸を使っています。
① 補修用の糸(以下、補修糸)をとじ針に通し、穴の両端に残った編み目位置(黄色の矢印の列の目)をすくって、横に渡します。1段めは右から左、2段めは左から右に通します。
② 左側の折返しに穴の横幅分のゆるみを残しておきます。
③ ①、②をくり返し、すべての段に補修糸を渡します。最後に右側へ渡した補修糸の糸端はそのまま休めておきます。
④ レース針を穴の右下に残った編み目に入れ、1段めの補修糸を針にかけて引き抜き、1目作ります。同じ要領で、上に向かって最後の補修糸まで引き抜き、1列編みます。
⑤ 一旦、レース針にかかった編み目をはずします。③で休ませておいた補修糸の糸端を使って、本体の編み地と補修糸の編み目の間に1目作ります。穴の上部右側の修繕については、下記の動画を参照してください。
⑥ 2目め(2列め)も④、⑤と同じ要領で編み、最後に編み地とはぎ合わせます。下記動画を参照してください。
⑦ 残りの目も⑥の同じ要領で編み、穴を塞ぎます。絹糸を抜き、補修糸の両端を少し離れた位置に出しておきます。
⑦ 裏に返して、補修糸の糸端を引き出し、土台の編み地に2、3目通して、余分な部分をカットします。穴まわりの糸端は歯ブラシなどで穴の中心に向かって集めておきます(糸端は着ているうちにフェルト化します)。
⑧ お繕いのできあがり。
■最も簡単な繕い方 〜昭和の資料から〜
上記の繕い方をさらに簡略化した方法がこちら。最初に穴を四角く整えるところまでは同じです。次に穴の下側に残った編み目を棒針に通し、必要な段数を補修糸で編み、最終段は土台の編み地とはぎ合わせます。最後に補修部分の両端を土台と巻きかがって、できあがり。繕う手順をイメージしやすい方法です。
次回のお繕いは、いよいよ靴下。底がすりきれてできた穴の補修です。
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