リトアニアのソウルフードをつくる その2 キビナイ編
トラカイで滋味豊かなキビナイをいただく
首都ヴィリニュスから西へ28 km、森と湖に囲まれた風光明媚な人気の観光地トラカイへ。
トラカイは14~15世紀にはリトアニアの首都だった町です。湖に浮かぶトラカイ城は、14世紀後半にドイツ騎士軍の侵略を防ぐために建てられました。
この町に住む少数民族のカライム人は、14世紀終わり頃にクリミア半島からこの地へ移住してきました(カライム人は言語学的にも民族学的にもトルコ最古の部族であるキプチャク族に属します)。
リトアニア大公国時代、時の王ヴィータウタス大公が卓越した兵力をもつカライム人380 家族を城の傭兵として移住させたのが始まりです。その末裔約300人が今でもトラカイに住んでおり、町を歩くとカラフルなデザインを施した独自の家屋が目につき、食においてもリトアニアとは異なるカルチャーを見ることができます。
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トラカイの町中にあるカライム民族料理レストラン「キビンラール(Kybynlar)」で、土地の郷土料理キビナイ(Kibinai)づくりを体験しました。キビナイは、細かく刻んだ羊肉または牛肉を、玉ねぎ、キャベツとともにバターで炒めて、半月型の生地に包みオーブンで焼いた料理です。
生地は小麦粉、バター、ミルク、イースト菌を入れてつくります。こねて棒状にした生地を2~3㎝ほどの長さにカットし、麺棒で餃子の皮のように丸く平らに伸ばします。生地の中央に調理して丸めた牛肉の餡を乗せ、生地の端同士を指で挟みながら波状になるように閉じていきます。閉じ終えたら上部にフォークで2か所穴を開け、卵黄を塗って180度のオーブンへ。約40分焼きます。
工程
あまり薄くならないように生地を伸ばす。
刻んだ牛肉、タマネギ、キャベツをバターで炒め、塩コショウしたものを丸める。
のばした生地の上に餡を置き、餃子をつくるように包む。
縁部分は端から波打つように閉じていく。
トレイに並べ、生地の表面に卵黄を塗ってオーブンへ。
焼きあがったキビナイは、香ばしい匂いを漂わせていました。サクサク、アツアツのパイの中から出てくる肉汁も一緒に味わって。あっさりした味わいのコンソメスープとともにいただきます。
こちらはキビンラールでいただいた、トルコやギリシャの食にも似たバランスの取れた料理の数々。左から時計回りに、ブドウの葉で肉を巻いて蒸したサラダ「バランディアイ・ヴィヌウオジウ・ラプオセ(Balandeliai Vyunuogiu Lapuose)」、パプリカの野菜詰め「ダルゾヴェミス・イダリタ・パプリカ(Darzovemis Idaryta Paprika)、肉詰めのナス「パトリザン・ドルマシ(Paltydzan Dolmasy)」。
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INFORMATION
◆キビンラール(Kybynlar)
住所:Karaimų g. 29, 21104 Trakai, Lithuania
電話:+370 6980 6320
営業時間:11~19時(金・土曜~20時)
https://www.kybynlar.lt/
INFORMATION
リトアニア政府観光局
INFORMATION
LOT ポーランド航空
日本からリトアニアへのアクセスは、LOT ポーランド航空の成田国際空港発、ポーランドのワルシャワ・ショパン空港経由、ヴィリニュス国際空港着の便が便利です。
https://www.lot.com/jp/en
PROFILE
鈴木幸子 Sachiko Suzuki
世界を旅するトラベルジャーナリスト&エディター。
人が好き、取材も大好き。出版社勤務や地球の歩き方編集を経て、2004年に制作会社らきカンパニー設立。年間7~8回は海外取材へ出向き、70か国以上の国を頻繁に取材している。2010年から、まちづくりにも関わっている。
通信社、雑誌、クルーズ誌、機内誌、ムック本、書籍、オンラインを含め、各メディアで活動中。JTBるるぶ『アンコールワットとカンボジア』初版制作。著書に『HOTEL INDOCHINA ベトナム、ラオス、カンボジアのフレンチコロニアルホテル/集英社』、『100ドルで泊まれる夢のアジアンリゾート(共著)/文藝春秋』、『もち歩きイラスト会話集タイ/池田書店』、『みやざきの自然災害』などがある。
2023年春より、時事通信ニュース「あなたの旅、わたしの旅」連載中。
趣味は海外旅行。世界の路地&市場巡り。長唄三味線、川柳句会に参加すること。会社名の「らき」はギリシャ・クレタ島の地酒の名前。
宮崎県宮崎市出身。