ポーランドの建築 その1~素朴で神聖な木造ゴシック教会~
マウォポルスカの「木造り街道」で伝統の木造教会巡り
なだらかな山々が続くポーランド南部は、マウォポルスカ(小さなポーランド)と呼ばれていて、古くから木造建築が盛んでした。なんと総1500kmにおよぶ6つの街道に、カトリック教会、ヴィラ(大きな貸別荘)やコテージ(貸別荘)、マナーハウス(中世貴族の屋敷)など255以上のさまざまな木造建築が残されていて「木造り街道」と呼ばれています。
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木造のゴシック教会はこのマウォポルスカ地方で生まれました。マウォポルスカ地方の教会建築は丸太を使うのが特徴で、カラマツやモミの丸太を組み合わせており、梁は上部に1本のみ使用します。釘を使わず土台(フレームワーク)をつくり、それにさまざまな構法が融合されます。初期のものは、教会内は正方形の身廊(入口から祭壇に向かう中央通路)と内陣(主祭壇の空間)で構成され、その2つを共通の均質な屋根で覆うことによって建物の強度を高めました。
最も重要なのは、強固で耐久性のある壁をつくることでした。外壁にはモミの木などがよく使われていて、細かくカットされた板を規則正しく並べて使う「こけら葺き」の手法が用いられています。後期になると、屋根板には断熱材が使われたそうです。16~17世紀になると塔が付けられ鐘楼(しょうろう)が設置されました。屋根のシルエットは急こう配で、ピラミッド型のドームを備えています。これは見た目の美しさだけではなく、室内を湿気から守る目的もあるとのこと。
教会の入口は2か所あり、南側に小さな窓が2つ備わります。祭壇は東向きに造られていますが、それは、「キリストは再び東から来る」というマタイ伝福音書の教えによるもの。室内は、窓の枠や美しく彫刻された梁など見どころも多く、祭壇やその周りには神々の彫刻や歴史的に価値の高い美術品などがまつられています。
PROFILE
鈴木幸子 Sachiko Suzuki
世界を旅するトラベルジャーナリスト&エディター。
人が好き、取材も大好き。出版社勤務や地球の歩き方編集を経て、2004年に制作会社らきカンパニー設立。年間7~8回は海外取材へ出向き、70か国以上の国を頻繁に取材している。2010年から、まちづくりにも関わっている。
通信社、雑誌、クルーズ誌、機内誌、ムック本、書籍、オンラインを含め、各メディアで執筆中。JTBるるぶ『アンコールワットとカンボジア』初版制作。著書に『HOTEL INDOCHINA ベトナム、ラオス、カンボジアのフレンチコロニアルホテル/集英社』、『100ドルで泊まれる夢のアジアンリゾート(共著)/文藝春秋』、『もち歩きイラスト会話集タイ/池田書店』、『みやざきの自然災害』などがある。
2023年春より、時事通信ニュース「あなたの旅、わたしの旅」連載中。
趣味は海外旅行。世界の路地&市場巡り。長唄三味線、川柳句会に参加すること。会社名の「らき」はギリシャ・クレタ島の地酒の名前。
宮崎県宮崎市出身。