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vol.4 クリスマス文化を楽しむ12このヒント。

もうすぐ楽しいクリスマスがやってくる! 皆さんご存じのクリスマスですが、当たり前と思っていたことでもじつは誤った認識をしていたり、意外に知らないことも多いのでは…。ここでは、ぜひ知っておきたいクリスマスの文化や背景となる歴史について紹介します。
photo:Takao Miyahara, text: Yukimasa Muranaka

プロフィール

むらなか・ゆきまさ

クリスマス文化研究家。長年、プロデュース業の傍ら、クリスマス文化を研究。オーナメントなどクリスマスグッズのコレクターでもある。毎年、生木のツリーを飾り、七面鳥を焼く。

クリスマスを盛り上げる必須アイテム、知っていますか?

世界中には、クリスマスの日を待ちわび、そして楽しむためのアイテムがいろいろあります。皆さんはどれくらいご存じですか? クリスマス飾り方からご馳走まで、さまざまなアイテムをここでは紹介します。ぜひ、あなたらしいクリスマスを迎えるヒントにしてください。

1. アドベントカレンダー

「待降節」の第1日から「公現祭」までの期間を記したカレンダー。ただ見るだけでなく、食べる甘い「アドベントカレンダー」もある。毎日、扉を開けると、中にチョコレートなどお菓子が入っている。

2. クリッペ

クリッペは、ドイツ語で「飼い葉桶」を意味する。写真は作家ものの一品。

イエスの生誕した馬小屋の様子を再現した飾り。飼い葉桶(かいばおけ)の中に眠る「幼子イエス」の回りを聖母マリア、父のヨゼフ、東方の三博士、天使、羊飼いと羊、馬、牛などの人形が取り囲む。木や陶器などで出来ている。「クリッぺ」とは、ドイツ語で「飼い葉桶」の事だ。欧米では、自宅には小ぶりなもの、教会、クリスマスマーケット、デパートのショーウィンドウには大型のクリッぺが飾られる。

3. オーナメント

欧米では、観光名所などに行くと、クリスマスの時期だけなく、1年中、樅(もみ)の木に飾るオーナメントが売られている。日本では見ることが出来ないようなオリジナリティー溢れるものばかりだ。その年ごとに、趣向を凝らした「イヤーズオーナメント」を出しているところも多い。
さらに、国によって、素材にも特色がある。フランスやイギリスは、綿を入れた布製が主流。ロンドンのバッキンガム宮殿ギフトショップには、愛用のバックを下げたエリザベス女王、フサフサの毛が付いて帽子を被った衛兵、女王の愛犬だったコーギーまである。フランスのルーブル美術館には、懐に右手を入れたお馴染みのポーズのナポレオンや額縁入りのモナリザなどが売られている。


アメリカは、フランスやイギリスと同じ綿を入れた布製もあるが、風景などが描かれた手ごろな価格のボールが主流。高級品では精巧な金属製があるのも特徴だ。ワシントンのホワイトハウスの観光客向けのビジターセンターでは、ワシントンやケネディなど著名な歴代大統領の布製の人形のほか、金属製の「イヤーズオーナメント」も売られている。「イヤーズオーナメント」が作られるようになったのは、1981年から。初めは、天使やオリーブの枝を加えたツバメの金属板といった素朴なものだったが、年を追うごとに凝ったデザインになっている。ガラスや石が嵌め込まれるようになり、最近では、細かい飾りが付いたツリー・馬車・電車・消防車から、遂にはヘリコプターまで登場した。芸術品の域に達している。

ワシントンのホワイトハウスでは、金属製の「イヤーズオーナメント」が毎年の人気アイテムに。写真の汽車もまるで本物のような完成度。
馬車のオーナメント。実際には箱に入って販売されているが、その箱自体もファンの楽しみの一つ。

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昔から手仕事が盛んだったドイツやチェコは、昔ながらの素朴な木製や飾るのが怖いほど薄いガラス製が多い。ドイツでは、ガラスで出来た名物のソーセージ、ビール、プレッツェルなどが面白い。ジンジャーパウダーを入れたクッキー生地を人形の形に焼き上げた「ジンジャークッキー」も、オーナメントとして飾る。

4. クリスマスツリー

欧米では本物の木をクリスマスツリーとして使う。クリスマスが近づくと住宅街の駅前に市が立ち、スーパーマーケットやホームセンターの店頭にも並ぶ。中には、山に行って根付きの木を掘り起こして来て、クリスマスが終わると、また元の場所に戻す人もいる。これこそ、「SDGs」の時代に相応しいエコなクリスマスだ。
クリスマスツリーに使うのは、一般的には「モミ」だが、「トウヒ」を使ったりもする。最近、日本では、「モミ」と同じようにすっくと立ち、小ぶりで手軽な価格の「ゴールルドクレスト」を代用する人もいる。

5. スモーカー

たくさんの荷物を背負った樵(きこり)、ビールジョッキを持ったおじさん…ドイツ人なら懐かしくなる昔ながらの恰好をした木の人形の口から、プカリプカリと煙が上がると辺りに良い香が漂う。これが「スモーカー」。胴体から半分が分かれるようになっていて、中に三角錐のお香を載せて、火を付ける仕組みだ。

6. クリスマスピラミッド

何層にもなった木製の段ごとに、馬小屋で生まれ幼子・イエス、東方の三博士、羊と羊飼いなど、キリストの生誕に縁のある人形が並ぶ。普通は3、4段だが、中には8段といった超大型のものも。てっぺんには、羽が付いている。その羽が、一番下の段から、横に飛び出た燭台の上に灯るろうそくの熱が起こす上昇気流でグルグル回り出す。巨大なキャンドルともなり、クリスマスの夜を一層華やかに彩る。

7. くるみ割り人形

チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」でお馴染み。木製の直立した人形で、顎の部分が大きく開くようになっていて、クルミを噛ませ、背中のレバーを下げると殻が割れる仕組み。直立の姿勢のため、王様・兵士・警官など、スモーカーと比べる厳めしい人形が多い。スモーカー・クリスマスピラミッド・くるみ割り人形といった木工品は、ドイツ東部、チェコとの国境に近い、エルツ山地にあるザイフェン村が有名だ。

8. クリスマスティー、サンタクロースティー

クリスマスの季節が近づくと、イギリスの「フォートナム&メーソン」やフランスの「マリアージュ」といった紅茶専門店や高級食料品店が、競うようにして「クリスマスティ―」、「サンタクロースティー」と名付けた季節限定の紅茶を売り出す。金・赤・緑といったクリスマスカラーで彩られた華やかな缶の中に入っているのは、エキゾチックなスパイスの香りが漂う紅茶。この紅茶を飲むと、魔法をかけられたように、なぜかクリスマス気分になるから不思議だ。

9. クリスマススイーツ

クリスマスのスイーツと言うと、日本ではホールケーキに蝋燭(ろうそく)を立てる、といったところだが、欧米では国によって随分と違う。
イタリアは、「パネットーネ」。柔らかめのブリオッシュ生地の中に、レーズン、プラム、オレンジピールなどのドライフルーツが入っていて、ほんのり甘い。丸くてドカンと大きい。
ドイツは「シュトレン」。ドイツらしい、しっかりとした生地の中に、レーズン、オレンジやレモンピール、ナッツなどが練り込まれている。ナマコのような横長の形。焼き上げた後、全体に粉砂糖をまぶすから、雪が降り積もったように真っ白。ドレスデンが発祥の地とされ、有名だ。
ドイツ菓子でもう一つあるのは「ヘクセンハウス」。グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」に出て来る「お菓子の家」のようだ。ツリーに飾る「ジンジャークッキー」と同じ素材で出来ていて、接着や飾りには、砂糖でできたアイシングを使う。
イギリスは「クリスマスプティング」。生パン粉、小麦粉、バター、卵、砂糖に、酒に漬けたドライフルーツやナッツ、香辛料などを混ぜ合わせ、一晩寝かせた後、焼き上げる。丸く帽子のような形をしていて、茶色く、ずっしりと重い。
フランスは、「ブッシュドノエル」。フランス語で「ブッシュ」は切株や丸太といったような意味。「ノエル」はクリスマス。つまり「クリスマスの丸太」といったところだ。見た目は、まさにその通り。チョコレート味のロールケーキの回りをチョコレートクリームで塗っている。おまけに、少しでも似せようと筋まで入れる念の入れようだ。
「ブッシュドノエル」以外は、どれも日持ちがする。日本の「おせち」と同じ感覚だ。

10. グリューワイン

温めたワインに、オレンジピールやシナモン・丁子(クローブ)などの香辛料を入れた飲み物。一般的には赤ワインを使うが、白もある。「グリューワイン」は、ドイツ語。クリスマスマーケットの名物でよく飲まれ、体が暖まる。ドイツでは、町ごとに毎年、趣向を凝らしたデザインの陶器のカップに入れて売られている。返すと、カップ代が返金される。

11. ターキー

クリスマスには、欠かせない御馳走。内臓を丸ごと取り出したターキー(七面鳥)の中に、「スタッフィング」という詰め物を入れる。パン、米、野菜、ドライフルーツ、ナッツなど、何を詰めても良い。塩・胡椒をして、崩れないようにタコ糸で縛る。最後に、油を塗り、オーブンでじっくりと焼く。輸入ものには、大抵「ポップアップタイマー」が挿してあり、これが上がったら出来上がり。肉汁から作る「グレービーソース」や「クランベリーソース」をつけて食べる。ソースは手作りできるが、市販品もある。

12. クリスマスを飾る植物

欧米では、クリスマスを飾る植物がある。
クリスマスカラーである緑と赤が入り交じる「ポインセチア」。毎年、改良され続け、毎年のようにユニークな新種が登場し、驚かせてくれる。「セイヨウヒイラギ」は、節分の時に立てる「ヒイラギ」と違い、尖った葉の間に小さな赤い実を付ける。「クリスマスローズ」は、クリスマスの頃から春にかけて咲く、「冬の貴婦人」と呼ばれる上品な花。白、紫、ピンクなど多彩な色がある。一度植えると、毎年咲くから手間いらずでもある。

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