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vol.1 クリスマスってなに? わたしたちが知らないクリスマスの常識

もうすぐ楽しいクリスマスがやってくる! 皆さんご存じのクリスマスですが、当たり前と思っていたことでもじつは誤った認識をしていたり、意外に知らないことも多いのでは…。ここでは、ぜひ知っておきたいクリスマスの文化や背景となる歴史について紹介します。
photo:Takao Miyahara, text: Yukimasa Muranaka

プロフィール

むらなか・ゆきまさ

クリスマス文化研究家。長年、プロデュース業の傍ら、クリスマス文化を研究。オーナメントなどクリスマスグッズのコレクターでもある。毎年、生木のツリーを飾り、七面鳥を焼く。

「イエス・キリストの誕生日」ではないクリスマス

クリスマスは「イエス・キリストの誕生日」と思っている人は多いことだろう。しかし、イエスの誕生ははっきりしていない。日本でも、明治に入り戸籍制度が整うまでは、百姓・町人の生年月日は本人さえあやふやなことも珍しくなかった。ましてや、2000年も前に、大工の息子として生まれたイエスが、いつ生まれたかわからなくても不思議はない。
聖書の中にも、イエスがいつ生まれたかは記されていない。後に定められたもので、現存で最も古い記録は、354年のローマの『年代記』中にある「12月25日、ユダヤのベツレヘムでキリストが生まれる」というものだ。
ベツレヘムは、現在のイスラエルの首都・エルサレムから南から10kmほど離れたという小さな町。ここには、イエスが生まれたことを記念して「降誕教会」が建ち、世界中から巡礼者が訪れる。
クリスマスを祝うという習慣は、初めからあった訳ではない。キリスト教の信仰が世界に広がるに連れて、元々、その土地にあった信仰と交じり合い、祝われるようになったのだ。
古代ローマでは、太陽を神格化した「ミトラ教」が信仰されていた。「ミトラ教」では、冬至の日に死んだ太陽が翌日に復活するとされ、それを盛大に祝っていた。やがて、キリスト教が浸透すると、太陽とイエスが重なり合わされ、「クリスマス」として祝うようになった。  
ヨーロッパ北部に住んでいたゲルマン民族の間には、「ユール」という冬至を祝う祭りがあった。これが、「クリスマス」に変化したとも考えされている。今でも、クリスマスのことを「ユール」と呼ぶ地方もある。

ベツレヘムの「降誕教会」には、世界中から巡礼者が訪れる。

ツリーは、お正月過ぎまで飾る

ゲルマン民族は、常緑樹であるカシを「永遠の命の象徴」として「ユール」の時に使った。一年中青々と葉を茂らせている常緑樹は、世界中で信仰の対象だった。日本でも、マツに神が降りて来ると信じられていた。
クリスマスが祝われるようになった過程で、「ユール」での習慣が持ち込まれたと考えられる。クリスマスを祝うのは、12月24日、25日だけと思っている日本人は多い。だからツリーを飾るのも12月25日までと思っているはず。過ぎると早く片付けないと、と気がせくかもしれない。
でも大丈夫。実は、クリスマスはもっとずっと長い。12月25日の4週間前の日曜日から始まるのだ。年によって違うが、11月の末か12月の始め。ツリーはこの日に飾り付ける。この日から25日まで間をイエスが降臨する日を待ち侘びる期間という意味で「待降節」という。 
そして、「クリスマス」と言っている25日は、イエスの誕生を祝う「降誕祭」というのが正しい。
ツリーも、年明けの1月6日まで飾る。この日は「東方の三博士」が生まれたばかりのイエスのもとを訪ねて来て祝福したとされ、「公現祭」という。これで、やっとクリスマスは終わる。
祭日の名称は、同じキリスト教でも、宗派によって違う。

描かれたイエス・キリスト降誕のシーン。イエスが布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている。
イエスの誕生時に礼拝にやって来た東方の三博士の様子を描いたステンドグラス。

家やレストランで祝うのは25日

日本では、クリスマスを祝うのはイブのことが多い。イブには、ロマンチックな夜を過ごそうと、レストランは満席、町は恋人たちで溢れる。
でも欧米は、25日に祝う。キリスト教の教会で使われている「教会歴」では、1日の始まりは前日の日没。そのため、25日の始まりは、24日の日没ということになる。日本でも、カトリックやプロテスタントの教会では24日の夜遅く、イエスの降誕を祝うミサが行われる。終わった後は、集会所で簡単な飲み物やお菓子などが振る舞われる。25日の朝にもミサがある。ルールを守り、祈る気持ちさえあれば、たとえ信者ではなくとも参加OKだ。東京や横浜の大きな教会では、英語のミサの時間もあり、外国人も多く、まるで外国でクリスマスを迎えている気分になる。
降誕を祝ってクリスマス料理を食べるのは25日の夜というのが本来だ。しかし欧米では、レストランへ行って、というようなことはない。クリスマスは日本人にとっての正月と同じ。家族とゆっくり過ごす人が多い。恋人とのデートではなく、家族の絆を深める日なのだ。観光でクリスマスに欧米を訪れる時は要注意。日本の正月と同じように、ほとんどレストランが開いていない。

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