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ぬいぐるみ作家tyo U tyo changoさんインタビュー vol.2 つくっていれば、何かが起きる。

changoさんのぬいぐるみは広島市現代美術館のミュージアムショップ「339」で販売されています。その経緯やものづくりへの思いについて伺いました。
photo: Honoka Kawazora, Taku Kato(QTV),Takashi Sakamoto, / interview & text: Hinako Ishioka

changoさんインタビュー vol.1 はこちら

編集部

changoさんのぬいぐるみは広島市現代美術館のミュージアムショップでも販売されていますよね。ご自身のつくるぬいぐるみとアートの関係はどう考えていますか?

chango

世の中のぬいぐるみの大半はキャラクターグッズや子ども向けなので、もともとぬいぐるみはアートというよりも、もっと生活において手に取りやすい身近なものだと思っています。 ただ、ぬいぐるみを素材としたアートも実際にあって、ぬいぐるみがアートとして受け入れられる場合もありますよね。だけど私が現在つくっているぬいぐるみは自分ではアートではないと思っています。人がアートと言ってくれることに関しては自由なので否定はしません。ただ、アートには意味とかコンセプト、背景があるものなので。実際にこうしてぬいぐるみについて話していることが背景になるのかもしれないですけどね。 広島市現代美術館は、同じ大学出身の方が勤務していて、先ほど話した学園祭で出店していた「おおん」を知ってくれていて、委託販売のお声がけをしていただきました。「339」では、広島にゆかりのある作家の作品を販売するコーナーがあって、金属やテキスタイルなどいろいろな分野の作家が集められています。そのひとつとして私のぬいぐるみが販売されています。

編集部

なるほど…。ミグラテールは、手芸とハンドメイドとアートの境界についても探ってみたいという裏テーマがあって。今回美術館のミュージアムショップで販売されるぬいぐるみをつくっているchangoさんにお話を伺ってみたいと思っていたんです。

chango

私はそこまでカテゴリに分けられることに対してこだわってはないです。ただ、生活のなかで何もしていない自分が怖いんです。私は、仕事をしてごはんを食べて寝る、だけじゃなく、プラスアルファのものづくりをして生きていたいです。

編集部

ものづくりは昔からしていたんですか?

chango

小さい頃から絵を描いたり工作したりするのは好きでした。高校で芸術系の学校に進学したことが大きかったと思います。そこには、「芸術で世界を平和にしたい」「アートで食っていく」と言っている人がごろごろいて。音楽をつくっていたり、休み時間に急に中庭のステージで踊りを披露する人がいたり。中学までは学校も勉強も嫌いだったのが、高校の環境で、好きなことをしていいんだっていう気づきがありました。自分はそういう環境がすごく楽しいんです。大学を出ても、自分でものづくりをして生活する友人がいて、そういう友人と今後も交流していきたいですね。 自分がつくらなくなったら、話は合わなくなっていくけど、つくっている限りは合うので。芸術系の学校を出ても、つくるという選択肢をとらない人も、もちろんいます。でも私はつくる選択をして、ものづくりの環境にいたいというのも、ぬいぐるみをつくり続ける原動力になっているのかもしれないです。 ぬいぐるみづくりは、西陣織の職人業と両立してやっていくスタンスです。どうなるかはわからないけど、とりあえずつくっていれば何かは起きるので。

型紙からつくる。形はシンプルだがアイコニック。

編集部

ぬいぐるみは好きですか?

chango

ぬいぐるみが好きな人を見るのが好きです。ぬいぐるみは買いますし、持っているけど、他の人がするような「ぬい撮り」や連れて歩くことはしないで、家にしまっておく派です。でもそういう風にぬいぐるみと一緒に楽しんでいる人は本当に幸せそうだし、癒されていますよね。身近で実際にぬいぐるみを生き物のようにかわいがる人を見るのが好きなんです。あとはキャラクターショップでアルバイトをしていた時に、すごくいかついお兄さんが、かわいいぬいぐるみを2つレジに持ってきて、プレゼント用か聞くと、自分用だとおっしゃって。胸にはそのキャラクター関連のバッジがたくさんついていて、本当に好きなんだなと思ったんです。びっくりしたけど、「お兄さんお好きなんですね」と話しかけました。人と話すのは好きなんです。話しかけるのは苦手なんですけど。京都という町も、いろいろなものづくりをしている人がいたり、イベントも多いので、今後ものびのびとつくり続けられたらと思いますね。

制作はすべての工程で手縫い。

職人の仕事と両立しながらぬいぐるみをつくり続ける。そこにぬいぐるみがアートか手芸かという外からの分類は関係なく、大切なのはいかに作り手がものづくりと向き合っているかだということに気づかされました。現代を生きる私たちにとって、生活のためのお金を稼ぐライスワークと、人生を豊かにするために従事するライフワークはしっかり両立させたいところ。どっちかひとつに絞れなんていうのはナンセンスなこの時代、changoさんはどちらにも真摯に取り組みます。人生のおいしいところは、どのカテゴリに配属されるかではなく、自分で決めてつくっていくものなのでしょう。changoさんの話してくれた、「つくっていたら何かが起こる」その言葉には底知れぬパワーがあります。

PROFILE

chango

京都在住。大人になったら、ぬいぐるみ屋さんと織り職人になっていた。好きなものはサブカルチャー/生き物(とくに好きなのは蝉、蜻蛉、柴犬)/きなこ/アイス。
tyo U tyoのぬいぐるみは手に取っていただくことや展示を観ていただくことで、皆さんにとって春のようなあたたかな存在になれたらと想いながら制作しています。

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