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ぬいぐるみ作家tyo U tyo changoさんインタビュー vol.1 西陣織の職人でぬいぐるみ作家。

ふわふわしたチョウの形がアイコニックなこのぬいぐるみ、なんと広島の美術館で販売されているらしい。そんな噂を聞きつけた編集部は話を伺ってみたくなりました。
photo: oharu, chango, Taku Kato(QTV),Takashi Sakamoto, / interview & text: Hinako Ishioka

美術館のミュージアムショップで作家もののぬいぐるみが販売されている。これは当たり前のようで、実はあんまり見ることのない光景です。美術館のミュージアムショップというと、美術館で展示されている作品の図録や関連書籍、企画展やコレクションの作品に関するグッズが販売されていることが多い…。一部作家ものの商品があることも少なくないけれど、ぬいぐるみはとにかく珍しい。どんな人がつくっているのか、インスタグラムからダイレクトメールを送り、京都でお話を伺ってきました。

編集部

まずお名前から教えていただけますか。

chango

高校時代のあだ名から、changoとして活動しています。今は京都で西陣織の職人として働きながらぬいぐるみをつくっています。広島の芸術系の大学で、染色と織りを専攻して学び、就職で京都に出てきました。

編集部

織りと染色って具体的にどういうことを学ぶんですか。

chango

染色の基礎的なことを学びました。染める糸や布には動植物繊維(絹、羊毛、綿、麻)や化学繊維があり、種類によって使用する染料が違うので、それについて学んだり。そこから応用で、シルクスクリーンとか、ろうけつ染めもやってみたり。織りでは綴れ織りや絣織りで作品をつくっていました。

現在のぬいぐるみ制作では、自分で布を好みの色に染めることも。

編集部

なるほど、それが今の職人の仕事に繋がっているんですね。ぬいぐるみをつくるきっかけは何だったんですか。

chango

学生時代はキャラクターショップでアルバイトをしていて、そこで一番売れる商品ジャンルがぬいぐるみだったんです。店の商品の半分以上をぬいぐるみが占めていて、大人も子どもも買っていくのに驚きました。それから大学2年になって、学園祭で自分でものをつくって売るお店を出してみたくなり、高校からの友人がちょうどぬいぐるみをつくっていたので「販売してみようよ!」と誘いました。内気な子なので、私が出店の手続きやロゴ制作をするプロデュース側にまわって「ぬいぐるみのお店」を出したのがきっかけです。アルバイト先でぬいぐるみが売れることを見ていたのでやってみようと。

編集部

ぬいぐるみをつくっている友人はどんな人ですか?

chango

高校から一緒の相方で、おはるといいます。大学で彫刻を専攻していました。木や石や金属で立体物をつくっていたんですが、「固いものが嫌になった。手が痛くて危ない」と言って、柔らかいぬいぐるみをつくり始めたんです。たまたま本屋でぬいぐるみの本を見つけて、自分でもつくれることを知ったみたいで。 おはるは普段全然しゃべらないし、声も出さないんですが、時々急に「おおん」って声を発することがあります。「うん」とかの感じで「おおん」って声を出すのが、私は挨拶みたいでいいねって思って、学園祭で出店する店の名前を「おおん」にしました。

編集部

友だちを相方って呼ぶのいいですね。「おおん」の反響はどうでしたか。

chango

大学2年から4年まで、毎年「おおん」を出店しましたが、ありがたいことに毎年完売したんです。1年目はステッカーをつくって学校で配り歩いたり、2年目は店のディスプレイにこだわって雰囲気を出したり、毎年アップデートしていくと、最後の年は行列ができてしまい、30体が10分で完売しました。大きいものは相方がつくって、私は店のプロデュースと、制作補助で小さいぬいぐるみをつくっていました。

編集部

ぬいぐるみの力、恐るべしですね。それから卒業して、changoさんもご自身のオリジナルラインでぬいぐるみをつくり始めたんですか?

chango

社会人になってからも、特に「おおん」をやめる理由はなく、相方の補助的につくり続けていました。地元の香川で個展を開いたり、イベントに出店したり。それで、コロナ禍になり、会社も半分くらいお休みになってしまった時期に、新しく自分のものをつくってみたくなって、つくり始めました。

綿を入れる前の蝶のぬいぐるみ。生地や色合いでバリエーションがある。

編集部

それで蝶のぬいぐるみ「tyo U tyo」が生まれたんですね。虫のモチーフにしたのは理由があるんですか。

chango

小さい頃、ぬいぐるみでおままごとをするより、外の田んぼで遊ぶ方が好きだったんです。その頃からオタマジャクシとかセミと遊んでいました。昆虫は、トンボの目や蝶の羽など、綺麗な部分が多くて惹かれます。今はほとんど蝶のぬいぐるみをつくっていますが、これからはトンボやオタマジャクシなどの他の生き物のぬいぐるみもつくっていきたいです。昆虫は思考とかもないだろうから、なんか素直に生きていていいなって魅力的に感じるんです。成長過程もおもしろくて、ここ1、2年はカマキリ、オンブバッタ、イナゴを飼って成長を見守っていました。 あとは、昆虫のタグをつけているからか、SNSのフォロワーは意外と海外の人が多いんです。これまでにイギリス、中国、カナダなどさまざまな地域からSNSのダイレクトメールでオーダーがありました。熱心な人は「私の方でエージェントを用意するから、海外から購入させてほしい」とメッセージがあったり。それからは海外からも購入できるようにしています。

changoさんインタビュー vol.2につづく

PROFILE

chango

京都在住。大人になったら、ぬいぐるみ屋さんと織り職人になっていた。好きなものはサブカルチャー/生き物(とくに好きなのは蝉、蜻蛉、柴犬)/きなこ/アイス。
tyo U tyoのぬいぐるみは手に取っていただくことや展示を観ていただくことで、皆さんにとって春のようなあたたかな存在になれたらと想いながら制作しています。

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