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ぬいぐるみ作家noconocoさんインタビュー vol.1 表情豊かな動物のぬいぐるみ

ナマケモノ、マンドリル、マンモス、イグアナなど、普段あまり見ることのない珍しい動物たち。リアルに近い動物ぬいぐるみを作るnoconocoさん。愛嬌のあるどこかとぼけた表情、触りたくなる親近感を持つ動物たちはどのように生まれたのか。玉川髙島屋で行われたポップアップ展示にて話を伺いました。
photo: Takashi Sakamoto, interview & text: Hikaru Furuike

幼いころから一番近くにいたぬいぐるみ

リアルなだけではない、端正な顔つきの中に愛嬌と体温を感じる動物たち。今にも動き出しそうな躍動感のある動物たちが行儀よく並んでいます。
これらの作品を手掛けたのは、ぬいぐるみ作家のnoconocoこと村田雅美さん。幼いころからぬいぐるみと過ごすことが多かったという村田さんは、お母さんがとても器用な方で、家族の着る服はほとんど作ってくれるほど日常的に家で裁縫をしていました。その作業の中で、着なくなった洋服や使わなくなった布を使った、簡単なぬいぐるみを作ってくれたといいます。
「幼稚園くらいだったでしょうか、その頃から身近なところに常にぬいぐるみがいました。リサイクルの一環だったのかもしれませんね。母が作るぬいぐるみたちは、手作りですがそれはそれでけっこうかわいくて。いくつかお気に入りもいたんですよ」。
手づくり以外に、市販品のぬいぐるみも近くにいました。当たり前のように身近なところにぬいぐるみが存在した幼少期。自身の部屋の中には常にぬいぐるみがいて、成長するうちにどんどん仲間が増えていき、いつしか家族のように過ごす時間を共にしていたといいます。

noconocoを始めて以降、素材を変えながらずっと作り続けている「ナマケモノの親子」。

ぬいぐるみを楽しむ側から作る側に

一番近くにいたぬいぐるみという存在を、楽しむ側から作る側に回るきっかけとなったのは大学生の時のこと。
都内の美大に通っていた村田さんは、就職活動が始まる時期に、構内に貼られた求人票を見るようになりました。そんなある日、求人票の中に「ぬいぐるみデザイナー」という文字を見つけます。その求人は大手ぬいぐるみメーカーのものでした。一度通り過ぎるものの、ぬいぐるみのデザインをする人ってこと? どんな仕事なんだろう、と頭の隅に残っていたといいます。
「大学時代はグラフィックデザインを専攻していました。立体ではなく平面です。紙媒体のデザインを学んでいたので、卒業後はグラフィックデザインの仕事をするつもりでした」。

しかし、偶然見つけたその求人がどうにも気になってしまい、そういえば私、昔からぬいぐるみが好きだった。作ったことはないけれど、どんな仕事かわからないけれど、なんだかちょっとおもしろそう。そんな考えがむくむく膨らんでいきます。
「大学の友人たちは広告代理店やデザイン事務所などに行きました。私だけちょっと違いましたね笑。驚かれましたよ。でも今になって考えると、自分にはそちらの業界は向いていなかったかもしれないので、結果的によかったのかもしれません」。
ぬいぐるみ制作に関する知識はもちろん、基本的な縫製の技術も持っていませんでしたが、応募を決意。後日、採用試験を受けて無事入社する運びとなりました。グラフィックデザインからぬいぐるみの世界へ、急旋回の方向転換となりましたが、若かったからということもあってか、そんなに深く考えずスムーズに意識を入れ替えたといいます。これが、村田さんがぬいぐるみ制作の起点となります。

チェコの藍染のハギレを使用したエシカルなぬいぐるみシリーズ。

入社後は初めて知ること、学ぶことの連続

入社前に想像していた仕事内容は、ぬいぐるみのデザインをして、それをデータに起こす、というものでした。しかし、実際はさらに細かく多岐にわたり、まず完成形のデッサンをして、そこから型紙を起こし、縫製、組み立て、仕様書を作成して工場に発注、そして完成した商品を検品する、というすべての工程に関わるようになります。
「知識ゼロで入ったので、ぬいぐるみがどのような工程でつくられるか知るところから始まり、最初の3ヵ月ぐらいは先生について、パターンの起こし方などの基礎から教えてもらいました。大学では立体を作ったことすらなかったですし、服飾を学んだこともなかったので戸惑いの方が多かったですね。本当に入社してからすべて覚えました。会社が習わせてくれたんです。とてもいい時代でしたね」。

会社員と作家活動の両立

入社して7年が過ぎたころ、会社員と並行してぬいぐるみ作家としての活動を開始し、時間を見つけては自身の作品となるぬいぐるみを作り始めます。作品のモチーフは現在と同様に動物でした。
「なんというか、もう動物しか作れないんですよね。人型が苦手だったのかもしれません。昔も今も作るのは動物だけです」。 小さいころから動物が好きだった村田さん。しかし、お父さんが動物が苦手だったこともあり、家では飼えなかったのだそう。それでもずっと飼いたくて、家の近くに住んでいた野良猫の世話を、近所の子どもたちと一緒に内緒でしていたこともありました。動物の中でも鳥が、鳥の中でもセキセイインコが好きで、現在も家で飼っています。

変化する意識と新たな一歩

入社から15年ほど経った頃、村田さんは大きな決断をします。
当時、企業の大量生産のぬいぐるみを作ることに息切れし始めていたことをきっかけに、これから先の自分の進む道を考えるようになります。そして、すべての工程を自分が行い世界に一つのぬいぐるみを作りたい、という気持ちが高まっていることに気が付きます。それは、一点物の作品づくり。つまり当時の仕事とは真逆の立場である、ぬいぐるみ作家として歩んでいくという選択肢です。「テディベア作家」と呼ばれる人はたくさんいましたが、「ぬいぐるみ作家」という存在は今ほどメジャーではなかった当時。

「不安がなかったといえばうそになります。でも、ある程度の勢いって大事ですよね。自分の気持ちに向き合って考え、あらためて、この先もぬいぐるみと共に過ごすことを決心しました。15年ぬいぐるみづくりに関わってきたんです。他に何もできなくて仕事に没頭するしかないから、ここまで長く続けられたのかもしれません。本当にぬいぐるみと共に生きている人生ですよね」。 こうして村田さんは、ぬいぐるみ作家としてあらたな道を進むことを決意します。

玉川高島屋で行われた「noconoco  POPUP」の様子。新作と定番の作品が並んだ。

ぬいぐるみ作家noconocoさんインタビュー vol2.はこちら

PROFILE

noconoco/村田雅美

ぬいぐるみ作家。
ぬいぐるみメーカーに勤務後、ぬいぐるみ作家として活動開始。百貨店のポップアップストアやギャラリーでの個展を中心に活動。

noconocom.com

INFORMATION

玉川髙島屋 本館5階 メゾン・エ・ターブル

インテリアアクセサリーやファブリックなどを扱うリビングショップ。

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