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ぬいぐるみ作家 未来商店 池野未来さんインタビュー vol.2 身近にあった「ものづくり」の環境が「未来商店」の基軸に。

「未来商店」の池野未来さんにとって、ものづくりは特別なことではありませんでした。「祖父も父も母も昔から何かつくることをしていた」という記憶は、池野さんの中で小さな種となり、今、「未来商店」という花を咲かせています。そんなご家族との暮らしが池野さんにもたらしたものとは?
photo:Ikeno Miku(miku shoten), Jinta Emura/interview & text: Sanae Nakata

未来商店 池野未来さんインタビューvol.1 はこちら

窓枠職人だった祖父との思い出

池野さんが生まれた奈良には、今もお祖父さまが暮らしています。「祖父は昔、窓枠職人をしていたそうです。そのため、祖父の家には平屋の大きな工房があり、そこにはいろんな木材や道具が置かれていました。だから、常にものづくりができるような状態だったんです」。
池野さんは毎年夏休みになると、奈良の家に遊びに行っていたそう。「いつも祖父と父が私の夏休みの工作を手伝ってくれました。2人からいろんなアイデアをもらって、木製の小さな家や貯金箱をつくったりしました。それが毎年学校で表彰されたり…そんな記憶があります」。

奈良にある工房と作業する祖父。

父に学んだ「ものづくり」との向き合い方

「父は生まれてからずっと家の横に工房がある環境で育ったので、ものづくりはより身近にあったと思います」。岡山へ家族で移り住んだ後も、父親は自宅の敷地内に小さな工房をつくり、木材や道具を揃えていたのだとか。普段は会社員として仕事をしながら、日曜日になるとなにかをつくる音が外から聞こえていたといいます。「父はおもに木製の家具や雑貨をつくっていました。神社などで開催している手づくり市などによく出店していて、毎月新作を持っていくという目標があったようです」。

そんな父親が制作のテーマにしていたのは、「おもしろいこともない世の中をおもしろくする」といったものや、「1+1=3」といった、正しい答えじゃなくていいというニュアンスのものでした。「自由にはみ出してもいいんだよ、ということを私は父に学んだ気がします。父も岡本太郎が好きなのですが、私が好きになったのもその影響だと思います」。

父の背中と太陽の塔のポスター。奈良の祖父の工房にて。

父親の工房には池野さん用の小さな作業スペースもあったので、木製の机に好きなペンで好きなように絵を描いたり、友達にプレゼントする木のオブジェを父と共作でつくったこともあるそうです。「小さな頃からこうした父が側にいて、影響を受けていたのは確かだと思います。父は現在はものづくりをやめて、自分の工房も持っていないのですが、ときおり祖父の工房に行ったときは、なにかいろいろつくっているようです」。

祖父、父、私で作品をつくる

実は「未来商店」で扱っている木製の椅子は、親子3世代の手でつくり上げたもの。2023年のPOP-UP ストア「へんなの」展でも注目を集めました。「工程としては、まず父が祖父にこんなものをつくろうと声をかけ、祖父が長い時間をかけて丁寧に形をつくりました。そして父の感性で色付けなどをして、私が仕上げるという3世代の作業からできています」。ほかにも木製の時計などもつくったそう。
「今でも父はたまに電話をしてきてくれて、作品に対していろんなアドバイスをくれます。いつももっと自由でいいのだからといった話をしてくれます」。

日々の暮らしと母の手づくり

そして池野さんの母親もまた、手づくりをする人。池野さんが学校で使う手提げや巾着袋をミシンで縫ってくれたそうです。母親が高校生の頃にバイトをして買ったミシンもまだ健在。ときどき、ビーズ教室や絵付け教室のようなものに通っていたこともあったといいます。「今は勤めているスーパーに季節の飾りなどをつくって置いたりしているようです」。気負わず、家族との暮らしに寄り添う母親の手づくりは、祖父、父とはまた違う優しさを感じさせるものでした。

池野さんが使う裁縫道具もまた、懐かしい記憶を呼び起こすもの。大切に使っているミシンは、ジャノメ製のちょっとレトロなタイプ。愛用する道具類はコンパクトにまとめていつも手元に。お菓子の缶にはクリップなどの小物を収納。

池野さんと「ものづくり」のこれから

手先が器用な母親と、豊かな感性でものをつくり上げる父親、そしてものづくりという環境を身近に与えてくれた祖父。「それぞれのものづくりの影響を受けて今の未来商店はできあがっていったように思います」。
これまでの豊かな記憶をベースにして、さらに自分らしいものづくりに取り組む池野さん。「私が今、作風に影響を受けることのひとつに、作業しているその時に聴いていた音楽、その時期に観て好きになった映画に表れる色味や雰囲気などがあります。それを自分なりに解釈し、作品に落とし込んだりしています。時には食べものの色味にときめいて、ぬいぐるみで表現することも」。たとえば、白いケーキにカラースプレーが乗っているのがかわいい!と思うと、そのイメージを白いぬいぐるみで表現したこともあったそう。

カラフルな刺繍糸をカラースプレーに見立てて。

池野さんのぬいぐるみは、ものづくりを慈しむ家族の思いに育まれてきました。そして今後も、日々の経験やその記憶ととも育っていくものなのでしょう。だからこそ、優しく人の心を包み込んでいく。これから池野さんが展開する「未来商店」ワールドが楽しみでなりません。

PROFILE

未来商店(miku shoten)池野未来

こちら西陽に照らされた未来商店です。
毎日違う気分で生きる人達に、少しでも調子良く生きるためのアイテムを提案します。

HP: https://miq.official.ec

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