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ぬいぐるみ作家 ふぃぃゆkayoさんインタビュー vol.1 1点もののぬいぐるみと出会い、作家人生が始まった。

10月某日、大阪の閑静な住宅街の素敵なお家に伺いました。kayoさんはファー生地やニット素材を用いた動物ぬいぐるみをつくる作家です。ぬいぐるみとの出会い、つくり始めたきっかけについて伺いました。
photo: Taku Kato(QTV), interview & text: Hinako Ishioka

kayoさんのぬいぐるみを一言で表すなら、“無国籍の動物たち”。どこからきたのかわからない、ファンタジーの世界から飛び出してきたような自由なフォルム。パーツごとに使い分けられた異なる素材が、kayoさんの手によってひとつになって生み出されます。リサ・ラーソンのような北欧の雰囲気を帯びながら、日本の民芸品にときどき描かれる動物のようなのびのびとした素朴さも感じられ、お家に1体いるだけで、ただ者ではない存在感を放ちます。とはいえ触れてみると、ふわふわでとっても愛らしい。そんなぬいぐるみをつくる、ふぃぃゆ kayoさんに作家になったきっかけや好きなもののお話を伺ってきました。

編集部

ぬいぐるみをつくり始めたきっかけを教えてください。

kayo

ぬいぐるみをつくり始めて、今年で15年目になります。きっかけは、夫の転勤が決まり結婚を期にそれまで勤めていた仕事を辞め、東京に移り住んだことです。次の仕事を始めるまで、時間に余裕ができて、何をしようかなって考えていた時、フェルト手芸を始めた友人の影響で「ものづくり」に初めて興味を持ちました。 なにかつくってみようと、すぐに本屋に行って、手芸本コーナーで目に入ったのが金森美也子さんの『りすが作る、手袋でぬいぐるみ』(文化出版局刊)。動物が好きなので、動物のぬいぐるみが目に留まったんだと思います。 ちょうど金森さんの個展の案内が本に載っていたので行ってみると、作家さんが1点ずつ手づくりしたぬいぐるみに初めて出会いました。とてもかわいくって惹かれてしまって。それからどんどんぬいぐるみづくりに夢中になりました。それから仕事が始まっても、金曜に夜なべしてつくる流れができて。当時、本当にとにかくつくりたくて。朝までつくることもよくありました。それから6年後、大阪に引っ越してからは、ぬいぐるみ作家一本でやっています。独学なのでちょっとずつ成長しながら今に至ります。

編集部

「とにかくつくりたい」って素敵です。ぬいぐるみの何がふぃぃゆさんをそこまでかき立てたのでしょうか。

kayo

先ほども言いましたが、金森さんの作品を見るまでは、ぬいぐるみ作家がつくる1点もののぬいぐるみの存在すら知りませんでした。個展で初めてそれを見た時、意思が存在していると思ったんです。それぞれに表情があるし、個性があって心がある。今でも、ぬいぐるみをつくっている時には、1つの個体がだんだんできあがっていくと感じます。型紙なしでつくっているので、表情がひとつひとつ違うんです。 それに、昔から動物が好きなので、まだつくったことのない世界中の動物をつくっていくのが今の目標なんです。インスタグラムで海外の動物写真家や「#nationalgeographic」で検索したり、イラストレーターの方や絵本の動物を見たりして次につくる動物を探しています。

たしかに存在感のある「らいおん」。

編集部

今つくってみたい動物はいますか?

kayo

今つくりたいのは、『ENDANGERED 絶滅の危機にさらされた生き物たち』(青幻舎刊)という写真集で見つけた鼻がホース状の空気清浄機みたいになっている“サイガ”という動物です。

kayo

いつもの制作の流れは、まずつくりたい動物を決めて、それからその動物のイメージに合う生地を探します。その逆もあって、生地を見ていて「あの動物っぽい!」からつくることもありますが、つくりたい動物がいても生地が見つからないことのほうが多いです。その動物を表現できる生地が見つかるまでは、つくりたい動物リストが溜まっていきます。

編集部

世界中の動物。とめどなく広い世界が広がっていますね…。今の作風にはどうやってたどり着きましたか?

kayo

ぬいぐるみをつくり始めた頃は、子ども向けのカラフルな生地を使った動物をつくっていました。リアルじゃない抽象的なうさぎとか。しばらくして出産し、少し制作を休んだ時期もありましたが、また再開して、今の作風ができあがって。映画にもなった絵本の『かいじゅうたちのいるところ』(冨山房刊)がもともと好きで、ちょっと変わった感じの、自分が欲しいぬいぐるみをつくりたくなりました。また、ぬいぐるみをつくる前から、「木×ファー」といった異素材の組み合わせのオブジェや作品がすごく好きだったので、素材も好きな感じにしてみようと。自分の好きな感じのぬいぐるみが、自分で欲しくて。単に自分の欲望のためにつくっていました。それから自分の好きな動物を、自分の好きなテイストでつくるのがどんどん楽しくなっていきました。

『かいじゅうたちのいるところ』(冨山房刊)
アトリエの壁には動物や生き物モチーフのイラストがたくさん。photo:kayoさん

ふぃぃゆさんインタビュー vol.2に続く

PROFILE

ふぃぃゆ kayo

2007年より独学でぬいぐるみ作りを開始。
型紙をつくらずフリーハンドで主に動物のぬいぐるみを製作。ブランド名「ふぃぃゆ」で活動する。
視界に入った時に思わずクスッとなるような、大人の方にもぬいぐるみを側に置いて飾って楽しんで頂けるようなそんな作品をテーマにしている。
現在は年に数回自身のonline shopやお取り扱いshopにて作品を販売している。

kayoさんのInstagram: https://www.instagram.com/kayo_fille/

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