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ぬいぐるみ作家aska.さんインタビュー vol.1 ちいさなぬいぐるみができるまで。

2023年6月『ちいさなちいさなぬいぐるみ』(誠文堂新光社刊)を出版し、大阪を拠点にさまざまなイベントや展示への制作に奔走するaska.さん。vol.1では代表作のちいさなぬいぐるみが誕生するまでのお話を伺いました。
photo: Taku Kato(QTV), interview & text: Hinako Ishioka

生まれた時から今までずっと

「ぬいぐるみはいてあたりまえの存在なんです」と語るのは、大きさわずか約4センチ、ちいさなぬいぐるみを制作する人気作家のaska.さん。今年6月に『ちいさなちいさなぬいぐるみ』(誠文堂新光社刊)を出版し、国内外でイベント出店を重ねる人気のぬいぐるみ作家です。
大阪桜川にあるシェアアトリエの作業机のまわりには、ぬいぐるみや民芸品がたくさん。椅子の後ろには人気ぬいぐるみ作家の作品から、今ではもう手に入らない某プロ野球チームの公式ぬいぐるみなど、蚤の市で「保護した」という昭和時代のぬいぐるみたち、さらに子どもの頃から大好きだという郷土玩具や民芸品が、彼女を囲むように並んでいます。
aska.さんのまわりには、生まれた時からぬいぐるみが近くにありました。0歳からずっと一緒の「うめ吉」は、今日も作業机の上に座り、同じ時間を過ごしています。「鼻もぼろぼろやし、毛もくたくたやけど、みんながきれいだねって言ってくれるんです」と自慢の幼なじみを紹介してくれました。

生まれた時から一緒のうめ吉。

イラストからデザイン、そしてぬいぐるみ作家へ

高知県出身のaska.さんは幼い頃から絵を描くのが好きでした。高校を卒業した後、イラストの勉強をするために大阪の専門学校へ入学。自分より上手な才能が溢れる環境で、イラストの道は一度諦めることに。「これは敵わんなって思ったんです」。グラフィックデザインを学んだ後、テキスタイルデザインの仕事に就きました。「それでも自分の中でモヤモヤは残っていました」。そんな時にブライスドールと出会います。テキスタイルデザインの仕事で生地を扱っていたこともあり、趣味でブライスドールの洋服をつくり始めました。「それでもやっぱりしっくりこなくて。自分が好きだったイラストと、逆に苦手だった立体物をつくることを掛け合わせてみようと思って、ぬいぐるみをつくり始めたんです」。“立体物をつくることが苦手”という、ものづくりの現場にいる人だからこそ持てる感覚が背中を押して、ぬいぐるみ制作がスタートします。

自由でちいさなぬいぐるみとの出会い

それからは、ぬいぐるみの自由さにどんどん惹かれていきます。初めての海外旅行は、世界的に有名なテディベアでお馴染みのシュタイフ社があるドイツでした。旅の目的のひとつは、現地の蚤の市で、古いぬいぐるみを探すこと。生地の向きや目の位置に正しさがなく、鼻がマジックペンで描かれているようなぬいぐるみを見つけては、その決まりのない自由さに心が動いたそうです。その後数年をかけて、正面や上下をあまり気にしない、らくがきみたいなぬいぐるみ“らくぬい”シリーズを完成させていきます。

1辺10センチほどの小さな紙に描かれたらくぬいのラフ。

“らくぬい”にたどり着くまでにも、試行錯誤がありました。ぬいぐるみ作家界には「型紙を使う」「使わない」という2極のタイプがいます。aska.さんがぬいぐるみをつくり始めた当初は、型紙を使いながら、どうも自分らしい作品がつくれない日々が続いていました。そんな時、日本各地で個展があれば駆けつけるほど大ファンの、ぬいぐるみ作家・片岡メリヤスさんに相談する機会が訪れます。「私は型紙なしでつくっているからaska.ちゃんもそうしてみたら」。片岡メリヤスさんからのアドバイスは、「じゃあ、そうする」とストンと腑に落ちました。「型紙があると、同じ形で量産する感じになってしまうけど、臨機応変にちょっとふざけながら自由につくる、型紙なしのつくり方のほうが自分には合っていたんだと思います。ぬいぐるみをつくり始めた時の、“この子に出会えた”っていうあの気持ちが戻ってきました」。

初めてつくった“らくぬい”のクマ。

アルミのアパートにちいさならくぬいを展示

幸運は一度にまとめてやってくるのか、ちょうどこのタイミングで、もうひとつのチャンスが重なりました。大阪の南堀江にある町工場のアルミ製品を提案するお店、ダイヤメゾンのオーナーに声をかけられ、個展を開くことになったのです。この個展のために制作を進める過程で、aska.さんの代名詞となる“らくぬい”が生まれました。らくぬいを108体制作し、壁一面をアルミでできたアパートに見立て展示した個展は大成功。たくさんの反響がありました。「肩の力が抜けた瞬間ではあったかな。自分の好きなことができるようになりました。それがだいたい2016年くらいです」。ぬいぐるみ作家としての道が明るく開けた時期でした。

合言葉は…「ぬいぐるみは友達」

現在も、大阪を中心にぬいぐるみ作家としての活動の幅を広げています。2021年、大阪にすい星のごとく現れた「ぬいぐるみドリーム!」というグループとの関係も濃密です。合言葉は「ぬいぐるみは友達」。年に1度、大阪の古着屋が世界各国でセレクトして集めてきたぬいぐるみと、現代ぬいぐるみ作家をミックスして、人とぬいぐるみが出会える場をつくっています。「ぬいぐるみドリーム!と出会って、ぬいぐるみがさらに身近になりました」。aska.さんはNU茶屋町で開かれたぬいぐるみドリーム!のイベント会場でワークショップを開催。その場で編集者から声がかかり、出版のきっかけを手にします。

『ちいさなちいさなぬいぐるみ』の情報はこちらから

いのちを感じるぬいぐるみ

ぬいぐるみがいることが「あたりまえ」のaska.さんのまわりには、ぬいぐるみを愛し、ぬいぐるみに愛される人が引き寄せあって集まります。aska.さんのちいさなぬいぐるみは、ユーモアたっぷりに存在感を放ち、今にも関西弁でしゃべり出しそうです。そんな親しみやすい、いのちを感じるぬいぐるみをつくり出したaska.さんもまた明るくて気さくな雰囲気の持ち主。
今後は中国での展示が決まっていたり、国内のギャラリーでのグループ展の予定もぎっしり詰まっています。ぬいぐるみが繋いだ縁のなかで、aska.さんと、ちいさなぬいぐるみたちは自由な表情で、今日も生き生きしています。

EVENT INFORMATION

aska.さんの展示会スケジュール

●Puga Parlor「くま展」︎
日程:2023年10月21日(土)、22日(日)︎
時間:12:00 – 18:00
場所:シャトーダベイユ(靭公園側) 〒550-0004 大阪府大阪市西区靭本町1-13-13 カワコシビル 1階

●ぬいぐるみドリーム!2023︎
日程:2023年10月22日(日)〜29日(日)︎
時間:11:00-21:00(最終日11:00-18:00)︎
場所:NU茶屋町4階スタンドパーク 〒530-0013大阪市北区茶屋町10-12

●犬犬犬展(わんわんわんてん)︎
日程:2023年10月25日(水)~11月6日(月)
時間:月-土 8:00-22:00︎/日 8:00-21:00(最終日 19:00でクローズ)︎
場所:VINYL TOKYO 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1丁目9−1 JR東日本東京駅構内1F グランスタ東京

PROFILE

aska.

高知県生まれ。”ヌノにイノチをあげたい。”をテーマに「tick ’n’ tack」という屋号で活動。
何気に描いていたラクガキを立体にできないかと思い、2009年より独学でぬいぐるみの制作をはじめる。
あえて型紙を作らず一期一会を大切にひとつひとつ手縫いで制作。思わずふっと笑みがこぼれるすきっ歯でどこかニクめない雰囲気のてのひらにおさまるちいさなぬいぐるみが特徴。
ハウツー本出版、カプセルトイとして商品化、メディア取材など多数。

HP: https://tickntack.theshop.jp/

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