ポーランドの手仕事(その2) クラクフの街で見つけた地方の素敵なレースや刺繍
翌朝、コニャクフ村から南ポーランド観光の拠点となるクラクフの街へ戻ってきました。写真(下、1枚目)は歴代のポーランド王国の戴冠式が行われた大聖堂、ヴァヴェル城です。
クラクフは、約550年もの間ポーランド王国の王都として栄えた古都で、古い街並みが残る風情のある街です。旧市街の中心にあるヨーロッパ最大ともいわれる中央広場には、14世紀から続く「織物会館」があります。この場所では、かつて衣類や布地の交易が行われていました。現在は小さなショップが50軒ほど鈴なりに連なり、各店内にはポーランド全土から集められたおもやげ品がところ狭しと並んでいます。
ひととおり中を見た後、広場に出てみると、なんと民芸市が開かれていました。小さなブースがいくつも並び、クラクフ周辺の村や遠くは西ポーランドのポズナン(Poznan)などから職人さんたちが集まって手工芸品を販売しています。午前中はクラクフ観光に費やしていたのですが、早くここに来ればよかったと悔やんだほどです。出合った素敵なレースを写真で紹介します。
まずその美しさに釘付けになったのが、ポズナンという街から来たというおばさまが編んでいた「タティングレース」です。現地では「フリボリッカ」と呼ぶそう。
タティングレースとは、シャトルという舟形の小さな糸巻きを使って、糸で結び目を編んでいくレースのこと。
こちらはボビンレース。ボビン(糸巻き)を両手で持ち、左右に交差させてさまざまな模様を織り上げてゆく織りの技法です。ヨハネス・フェルメールの作品『レースを編む女』にも登場します。この職人さんはドイツ寄りのヴロツワフ(Wroclaw)という街から来ていました。
ポーランドに来てわかったことは、ポーランドの人々は自分の生まれた街のもの、またはその町で根付いているレースや刺繍を必ずしも作っているわけではなく、自分の好きな地方のものも学んで編んでいる、ということでした。
そして、たとえばお母さんがタティングレース好きなら、子どももそれを学ぶ、というように、各家庭によって好みのものを選んでつくっていることもわかりました。
今回はコニャクフレースを見に訪れましたが、ポーランド中の街に素晴らしい手仕事が溢れていることをあらためて実感。何度訪ねても、まだ追いつきません。奥の深いポーランドの手仕事、もっと追求したくなりました。
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INFORMATION
鈴木幸子 Sachiko Suzuki
世界を旅するトラベルジャーナリスト&エディター。人が好き、取材も大好き! 出版社勤務や地球の歩き方編集を経て、2004年に制作会社らきカンパニー設立。年間7~8回は海外取材へ出向き、70か国以上の国を頻繁に取材しています。※2010年から時々、まちづくりにも関わっています。
通信社、雑誌、クルーズ業界誌、機内誌、ムック本、書籍、オンラインを含め、各メディアで活動中。JTBるるぶ『アンコールワットとカンボジア』初版制作。著書は『もち歩きイラスト会話集タイ/池田書店』、『みやざきの自然災害』ほか。会社名の「らき」はギリシャ・クレタ島の地酒の名前です。
※2023年春より、時事通信こどもニュース「あなたの旅、わたしの旅」連載中。
趣味は海外旅行。世界の路地&市場巡り。長唄三味線、川柳句会に参加すること。出身:宮崎県宮崎市木花