民族衣装のことがよくわかる『世界の民族衣装図鑑』(ラトルズ刊)
世界のグローバル化がうたわれて久しい現代に、「民族衣装」にピンとくる人はどれくらいいるでしょう。明治初頭、日本人の普段着はそれまで民族衣装だった着物から、西洋文化の洋服に移行していきました。それから生活様式の変化や女性の社会進出などで装いは時代ごとに移ろい…今やSNSを通して世界とリアルタイムで繋がり、世界中の人々がファッションの流行を共にする時代となりました。
国境も、民族性も、ジェンダーも越えた、現代の新しい服飾文化も楽しいものですが、今一度、世界の民族衣装に目を向けてみたい、そのような人におすすめなのがこの1冊です。
本書の構成は「第1章 民族衣装の基本」「第2章 各国の民族衣装」「第3章 民族衣装で世界がわかる」となっており、世界69カ国の民族衣装が豊富な写真資料とさまざまな視点で紹介されています。
『世界の民族衣装図鑑』は、民族衣装についての本ではありますが、読み進めていくうちに民族衣装を知るということは、その地域の風土や暮らしについて知るということなのだ!と気づいていく発見があります。例えば「第1章 民族衣装の基本」の最初のトピックは“気候に合わせた形態”となっており、暑さへの対処として筒型のボトムスを履くミャンマーの腰巻衣を、寒さへの対処として体熱を逃がしにくい形状のペルーのポンチョなどを紹介することから始まります。
民族衣装は、地域の暮らしに合わせて適応していったものであり、気候や風土への具体的な対処と、民族の思想や美的感覚を反映させたものが積み重なってでき上がっていくものなのだと、この本に気づかされていきます。
「第2章 各国の民族衣装」は、2ページにわたる大きな世界地図に分布された“世界の民族衣装マップ”から始まります。アジア、ヨーロッパ、アフリカ、中央・南アメリカとオセアニアの国々にわたって、トルソーに着せた民族衣装や、パターンや文様などの細部にわたる写真とともに紹介されています。この章は、国ごとのページ展開ではありますが、時代、地方、島、民族ごとの違いがわかるようになっています。
「第3章 民族衣装で世界がわかる」では、衣装の素材や装飾技法についてまとめられ、民族衣装のカッティングから、民族衣装から発想したヨーロッパのドレスなど、服を作る人に参考になるようなマニアックな内容も補足されます。
この本は、民族衣装のことだけでなく、世界各地の民族衣装や、民族の暮らしの文化を「どう見るか」までを教えてくれる指南書です。これを読めば、民族衣装をとりまく世界を、あれやこれやの角度から吟味できるようになるでしょう。世界の民族衣装好きだけでなく、着る・作るを楽しむファッションラバーもマストバイな1冊です!
BOOK information
世界の民族衣装図鑑
著者名 文化学園服飾博物館
出版社名 ラトルズ
価格 3,278円(税込)
文化学園服飾博物館のコレクションの中から、世界69カ国の民族衣装を約500点の写真で紹介します。 民族衣装が語る気候風土や、民族の歴史と暮らし。その素材や技法も解説します。
販売サイト
ラトルズネットショップ
Amazon
文化学園購買事業部
紀伊國屋書店
INFORMATION
株式会社ラトルズ
IT書を中心とした書籍の出版、電子書籍の販売を行う。
住所:〒115-0055東京都北区赤羽西4-52-6
お問い合わせ:https://www.rutles.co.jp/contact/
公式HP:https://www.rutles.co.jp/