キルト作家・松浦香苗さんのおすすめ『赤毛のアン』
小学生時代、購読していた児童向けの世界名作全集のなかに『赤毛のアン』がありました。すっかりアンの魅力の虜になったものの、子供向けにまとめられた文章が少し物足りなかったのを思い出します。
Q
松浦さんのおすすめの本について聞かせてください。
『赤毛のアン』(著・モンゴメリ/訳・村岡花子/三笠書房/1966年)
村岡花子訳の『赤毛のアン』を読んだのは、中学生1年生の夏休み。児童書には書かれてなかった家事や針仕事の、細かい描写の一つ一つに興味を持ちました。その頃の私は知らない言葉ばかりで「継もの」がパッチワーク、「もめんの刺し子ふとん」がキルトのことだと知ったのはそれから何年もあとのことです。
Q
この本のどんなところが心に残ったのでしょうか。
『赤毛のアン』は、私にとっては家庭科の教科書でもあり、パッチワークキルトを知るきっかけになった本です。針仕事が苦手だったアンは紅白の菱形に切った生地を前に「継ぎものにはちっとも想像の余地がないわ。継ぎ目から継ぎ目へといつまでいってもきりがないんですもの」と話しています。赤と白の菱形のピースつなぎのキルトは、本が書かれた当時アメリカで人気のあったデザインでした。
Q
現在のお仕事・ご活動、ものづくりにはどう繋がっていますか。
1976年のアメリカ建国200周年に日本各地でアメリカンキルトの展示会が催され、その中に赤毛のアンの続編として『アイルランドの鎖模様』と訳されてたキルトパターンである「アイリッシュチェーン」のキルトも展示されていました。本で出会ってから20年が過ぎていて、私も婦人雑誌の手芸ページにパッチワークの作品を掲載するようになっていました。
Q
最後に、手芸・手仕事・ものづくりの魅力はなんだと思いますか。
私が小学生になった頃には、すでに遊び道具に針と糸を持っていたそうです。祖母に教わって作ったお手玉にはじまり、人形の洋服作り、キルト作り…ともの作りは続いて今日に至ります。針と糸を持てる幸せをこれからも伝えていきたいと思っています。
PROFILE
松浦香苗 Kanae Matsuura
幼少の頃から布遊びが好きで、自然と大好きな布で何かを作ることが生活の一部になる。1971年、雑誌『装苑』『ミセス』にて手芸作品を発表。1976年、『nonno』『セゾン・ド・ノンノ』で世界各国の手仕事を取材。1979年、『わたしのパッチワーク』(文化出版局刊)を出版。出版記念作品展を大阪と東京にて開催。1985年、銀座和光ホールにて「松浦香苗パッチワークキルト展」を開催。東京、大阪の「NHK婦人百科手芸フェスティバル」出品。東京・東急百貨店本店で定期的にイベントを開催。色や柄合わせを楽しむ作品には長年にわたるファンも多い。