ZOMBIE-CHANG Meirinさんのおすすめ『人生の短さについて』
こんにちは。メイリンです。ご機嫌いかがでしょうか?私は普段はアーティストやトラックメーカーとして活動しており、日々音楽制作に勤しんでいます。制作の合間に映画やドラマを観ながら編み物を楽しんでいます。一目、一目と編み続けるニットは作曲ととても似ています。キックを一つ一つ鳴らしていく。ハイハットを刻んでいく。ニットも同じように色んな編み方で完成します。最近、初めて友人に編み物をプレゼントをして、改めて人を思って編む時間の大切さを実感しました。
Q
メイリンさんのおすすめの本について聞かせてください。
私のおすすめの本はセネカの『人生の短さについて』(光文社古典新訳文庫/2017年3月)です。
この本との出会いはフランスに住む友人が勧めてくれた本でした。勧められた次の日にパリの本屋へ行き、購入。フランス語の勉強がてら、翻訳しながら読み進めましたが、さすがに難し過ぎたので日本へ帰国後、翻訳された『時間について』を購入しました。読み終えた瞬間からこの本は私の考えの一部になっています。
Q
この本のどんなところが心に残ったのでしょうか。
人生は浪費すれば短く、過ごし方次第で長くなる。時間を有効に使うことで私たちはより長く生きられる。多忙は人生を浪費させると、この本では説いています。 セネカ自身、元は哲学者の道に進みたかったようですが、父に反対され政治の道を歩み、多忙な人生だったようです。「自分の金銭を他人に分け与えようとする者など、どこを探しても見当たらない。なのに、だれもかれもが、なんとたくさんの人たちに、自分の人生を分け与えてしまうことか。」という言葉に私はその時間に対しての考え方に、はっとしました。時間に対しての価値観が大きく変わったきっかけの本です。
Q
現在のお仕事・ご活動、ものづくりにはどう繋がっていますか。
私たちの寿命という時間は今も刻一刻と少なくなっていっています。実生活でも、仕事でも、ちゃんと自分が納得できるような作品作りをしたいので、その過程における時間を大切にしたいと思うようになりました。人と関わるお仕事では、相手の時間を使うことにもなるので、その時間はとことん向き合いたいと思うようになりました。
作曲も編み物と同じようにとても時間がかかります。生み出すのに苦しむこともありますが、完成した私の曲を不特定多数の人が聴いてくれます。その聴いてもらう時間は、私の人生の一部とその人の人生の一部が重なる大切な瞬間です。そんな大切な瞬間だからこそ、自分自身も作曲の時は音を心から楽しみたいと思っています。
Q
最後に、手芸・手仕事・ものづくりの魅力はなんだと思いますか。
私にとって、手芸・手仕事・ものづくりの魅力は、時間を可視化できるというところです。編み続けた時間は、とてもあたたかいセーターに変換されます。大袈裟に言ってしまえば、寿命を物質に変えているような気すらもします。編み物も音楽制作も本当に時間のかかることですが、一目、二目、一音、二音は私の過ごした大事な時間が込められています。全ての存在するものたちは、人々の寿命のお裾分けみたいなものです。そこまで深く考えると少しこわいかもしれないけれど、それがものづくりの魅力だと私は思っています。