STORE

姉妹が行く! 世界てくてく手仕事の旅 第1回 ラオスの織物に触れて

2024年春、姉妹で世界一周の旅に出た手仕事ライターの毛塚美希さんと、酒場文化が大好きな妹の瑛子さんの連載がスタート! 姉妹旅のテーマは①手仕事、②食文化と酒場、そして③囲碁交流…!? 地域に根ざした手仕事と食文化、ときどき囲碁にまつわる旅エッセイをお届けします。第1回は、東南アジアのラオスで見つけた織物のお話です。
photo & text: Miki Kezuka & shimaitabi

はじめまして「世界一周、姉妹旅」です。

世界一周、姉妹旅。

地域の暮らしと文化に触れるのが好きで、手仕事、食文化と酒場、囲碁交流の3つをテーマに世界一周の旅に出た20代の姉妹です。
私たちは商店街に生まれ、近所の手芸屋さんでクリスマスベルを編んだり、地元の秋祭りでは町内の御輿(みこし)を担いだり、庭に咲いた花で押し花をしたりと、地域と手仕事に触れながら育ちました。
ミグラテールでは、世界各地を旅して出会った手仕事にまつわる連載と、各地で見つけた素敵な手仕事雑貨の買い付けを行う予定です! 

思い立ってスタートさせた世界一周旅は、元インテリアメーカー勤務の姉と、元食品メーカー勤務の妹の、手仕事、食とお酒、囲碁が大好きな姉妹ならではのテーマで等身大の自由な旅。

小さな村でホームステイ、工房巡りに、そのまま地元の人達と乾杯! 学生時代に2人とも全国優勝した経験がある「囲碁」を通じた世界各地での国際交流も楽しみのひとつです。そんな、”日々の暮らし”に溶け込む、”背景の風土やその土地らしさ”を味わいながら、世界各地の”暮らしと文化”を感じたままの温度でお届けできたら嬉しいです。

連載1カ国目は…ラオス!

2024年4月末に日本を出国し、香港 → タイ → ラオス へと旅をしてきました。連載の第1回目は、東南アジアに位置するラオスの、織物のお話です。

旅行先として人気のあるタイとベトナムの間にありながら、日本人にとってあまり馴染みのない国、ラオス。
実は約49もの民族が暮らし、竹かごや織物などが身近にたくさんある、とても豊かな手仕事の国というのをご存知でしたか? そのことを知ってから、とても楽しみにしていた国の1つです。
今回は3週間かけて首都のヴィエンチャン、古都のルアンパバーン、雄大な山と川に囲まれたノーンキャウを訪ねました。さまざまな都市とその周辺の村を巡って感じた“ラオスと織物”について綴ろうと思います。

身近な織物

旅をしていて一番印象的だったのは、織物の身近さ。

ラオスには「シン」と呼ばれる、裾に織模様があしらわれた伝統的な美しい女性用の巻きスカートがあります。お寺に行くときや、冠婚葬祭の正装、病院やレストランなどの制服として着用されています。一方、普段着として着ている方もたくさんいて、マーケットに並ぶシンの店では採寸をしている方をよく見かけました。 

古都のルアンパバーンでは、レストランで出会った地元女性の友人が自宅で布を織って土産店に納品していたり、食堂の奥の方でおばあちゃんがシンを織っていたり。ツアー会社で働く男性のお母さんは、地元の村でなんと無農薬で綿を育て、手で糸を紡ぎ、ジャングルから取ってきた草木で糸を染め、布を手織りしているそうです。このように、ラオスの日常には織物がたくさん溢れていました。 

小さな村と織物

ルアンパバーンから北に足を伸ばすとノーンキャウという街があります。そこからボートでのみ行ける、織物で有名なムアンゴイとソプチェムという2つの小さな村も訪ねました。

どちらの村も、もともと自分たちが使うために各家庭で織物をしていましたが、観光客が来るようになり、スカーフなどの織物土産を販売するようになりました。それから各村の土産店では、自分たちで織ったものに加えて、周辺の名もなき小さな村の各家庭から織物を集めて売っているそうです。

ムアンゴイ村は山に囲まれた自然豊かな村で、犬や猫、ニワトリが駆け回り、こども達が蝶々を追いかけ、お母さんが軒先で織物をしている光景が印象的でした。

ムアンゴイ村のこども達と動物が駆け回る日常の風景。
ムアンゴイ村の軒先でお母さんが機織りをしている様子と村の風景。

ソプチェム村では、軒先で織物をしながらお土産の販売をしているお母さんからスカーフを買いました。その後、買ったスカーフの端をフリンジにしてもらうために、やり方を教えてもらいながら自宅の軒先で一緒に作業をしていると、ちょうど息子さんが夕ご飯用に川で魚を取って帰ってくるところでした。お母さんもまた彼女の母から織物を教わり、自身の幼い娘に教えているそう。「娘がこのミサンガを作ったのよ」と笑顔で話してくれました。 

ソプチェム村のお母さんが複雑な模様を織っている様子。

民族によって織物の柄や模様はさまざまですが、ラオスではニワトリや蝶々、魚といった身近な動物がモチーフになっています。村を訪ねることで、彼らの生活が自然や動物と共にあることを実感しました。 

織物文化の背景

ラオスの織物文化の背景には、多くの女性が若くして結婚をし家庭に入る中で、家の中で母から子にお金をかけずに教えることができ、家計を助けられるものとして受け継がれてきた風習があります。

さらに、農薬が高くて買えないため、無農薬の伝統的な栽培方法が残っているという側面もあるそうです。ルアンパバーンの中心街から近い織物とライスウィスキーで有名なサンハイ村では、コットン100%で作られた手織りのスカーフが、日本円にして約300~400円とかなり安く売られていました。ほどんどの店が「価格」と「ハンドメイド」という英単語を繰り返すばかりでその価値を伝えられていない様子を見て、もどかしさを感じました。現地の複数の織物関係者によると、織り手の女性達が、実際のところ十分な収入を得られていないという問題があるそうです。

現在、ラオスの若者たちは織物に興味を持つ人が減っているといいます。複雑かつ伝統的な模様を織れる人が少なくなり、手織りの布が高価になっている一方で、ナイロンや機械製の安いものが多く出回り始めています。また、シンを履かない人も増えており、これまでの織物文化の形とは変わってきているそうです。 

さまざまな形で紡がれていく織物

それでも、ヴィエンチャンやルアンパバーンの街中には、ラオスの北部に住む少数民族から手織りの布を買い付けて現代的にデザインして縫製している素敵なブティック、ラオス人女性起業家が手掛ける織物の鞄ブランド、民族の伝統的な模様の保護活動をしている団体、ラオスの織物をする女性の収入向上を目指すNPOなどをたくさん見かけることができます。

今日もどこかの小さな村のお家で、お母さんが子どもに織物を教えていたり、いろいろな世代の女性がシンを履いてお出かけするなど、ラオスの豊かな織物文化はさまざまな形で紡がれているのかもしれません。ぜひみなさんもラオスを訪れて、そんな織物文化に触れてみてはいかがでしょうか。 

シェンレック村で機織りをするお母さん。様々な村や家庭で機織りをしている風景が見られた。

shimaitabi の食日記 ~ラオス編~

2024年 6月2日 @ラオス ソプチェム村
盛り沢山な7種類のハーブを使った「フィッシュラープ」

炒めたひき肉や細かく切って茹でた魚を数種類の生のハーブとライム果汁、魚醤で和えた伝統料理「ラープ」。ラオ語で”幸運”の意味があり、お祝いの席には欠かせないそうです。
今回はソプチェム村の宿のオーナーご夫婦と一緒に、目の前の川で採れた魚を使って作らせてもらうことに! コンビニも電波もない小さな村。ハーブはすべて庭から収穫したもので、ガランガル・レモングラス・ミント・ライムリーフ・バジル・ミニにんにく・ミニ玉ねぎの7つを使用。お母さんからは「すべて薬としても使えるんだよ」と教えてもらい、ラオスの‘食の豊かさ’を感じました。 
主食はもち米。手で丸め、おかずと一緒に食べるのがラオス流。真似してやってみると、もち米がハーブの爽やかさと旨みをたっぷり吸って、さらにおいしい! 東南アジアNo.1と呼び声の高いラオスのビール「ビアラオ」との相性も◎。 


次回もお楽しみに!

PROFILE

世界一周 姉妹旅 毛塚美希・瑛子 Miki, Akiko Kezuka

その土地の暮らしと文化に触れるのが好きで、世界一周の旅に出た20代の姉妹。手仕事を中心にライティング、買い付けを行う。姉は元インテリアメーカー勤務、妹は元食品メーカー勤務。手仕事、食と酒場、囲碁をテーマに、自由きままに各地を巡る。

小さな村でホームステイ、工房巡りに、そのまま地元の人達と乾杯! そんな日々の暮らしに溶け込むその土地らしさを感じたままの温度でお届けします。

HP: https://sites.google.com/view/shimaitabi?usp=sharing

限定情報をいち早くお届けメルマガ会員募集中!