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姉妹が行く! 世界てくてく手仕事の旅 第2回 心躍るネパールの伝統織物 ダカ織りとダカトピ文化

2024年春、姉妹で世界一周の旅に出た手仕事ライターの毛塚美希さんと、酒場文化が大好きな妹の瑛子さんの連載がスタート! 姉妹旅のテーマは①手仕事、②食文化と酒場、そして③囲碁交流…!? 地域に根ざした手仕事と食文化、ときどき囲碁にまつわる旅エッセイをお届けします。第2回は、ネパールの伝統織物ダカ織りのお話です。
photo & text: Miki Kezuka & shimaitabi

連載2カ国目はネパール。

ネパールは中国とインドの間にある内陸国で、世界最高峰のエベレストがあるヒマラヤ山脈をはじめ雄大な山々に囲まれた国です。
わたしたちはネパールを約3週間旅して、首都のカトマンズではネパール人の友人宅にホームステイをし、ポカラという街では小さい村で地元の方々の暮らしがのぞける山歩きと、湖畔とヒマラヤの景色を楽しみました。 

ダカ織りと、ダカトピを被るおじさまたち

山岳文化ならではのヒツジ、ヤク、カシミヤヤギなどの動物の毛糸を利用した織物やフェルト、山がちで肥沃でない土地でも育ちやすい麻の織物をはじめ、ネパールには織物文化がたくさんあります。中でもネパール旅で一番印象に残ったのは、至る所で見かけたダカ織りでできた“ダカトピ”という帽子を被った男性たちです。今回はそんなネパールの伝統的な織物、ダカ織りとダカトピ文化のお話。

ダカトピとは、男性用のネパールの伝統衣装の帽子のことで、“ダカ”がダカ織り、“トピ”がネパール語で帽子を意味します。
ダカ織りとは、ネパールの伝統的な織物で、幾何学的な模様と、赤・緑・白・青・茶色などカラフルで美しい色合いが特徴です。代表的なものは男性用のダカトピですが、“ダカサリー”というダカ織りでできた女性の伝統衣装のサリーやショールも人気があります。
ダカトピの形はネパールの山々とヒマラヤ山脈を表していると言われ、カラフルな色は雪解け後の豊かな緑と花々を表しているそうで、山々に囲まれたネパールらしい伝統衣装です。

ダカトピは正装の一部として結婚式などの際に着用されるほか、おじさま世代を中心に日常でも着用されています。
カトマンズの街中やポカラの山道など、どこを歩いてもダカトピを被ったたくさんのおじさまを見かけました。「そのダカトピ、似合っていて素敵だね!」と伝えると、ダカトピを被るおじさまは皆、朗らかな表情で、照れながらも溢れんばかりの優しい笑顔を向けてくれました。

カトマンズの丘の上の村に住む友人のお父さんとおじいちゃん、小さなモモ屋さんのお客さん、街中やポカラの湖畔を歩くおじさま、タクシーの運転手さんや空港の職員さんなど、ダカトピを被っている可愛らしいおじさまたちはネパールで一番思い出深い、微笑ましい光景でした。

わたしたち姉妹はダカトピを被った素敵なおじさまを略して“トピおじ”と呼び、可愛い柄や珍しく美しい色合いのダカトピや、おしゃれでダンディなトピおじを見つけると、「見てみて!」と互いに呼びかけあったり、声をかけて写真を撮らせてもらったりと、“トピおじハント”がわたしたち2人のネパール旅のマイブームに(笑)。

手織りのダカ織り工房を訪ねて

ネパールの手仕事従事者の収入向上を目指すフェアトレードのNGO「ACP(Association for Craft Producers)」を訪れた日、出会った女性に話を聞くことができました。
ネパールにはさまざまな民族が暮らしており、各民族によって伝統衣装は違うもののダカトピは共通して着用するため、ダカトピはネパール国民の誇りでもあるそう。
また、友人のおじいちゃんに話を聞くと、昔からの習慣であるため、日常生活の中で被っているのが普通の感覚なんだそう。家で料理をしている時も、屋上で一緒にダンスを踊った時もダカトピを被っていました。

ぜひこのネパールのダカトピの光景と伝統的な文化が詰まった、手織りのダカ織りを買い付けてミグラテール読者の皆さんに届けたい!と思い、ネパール人の友人や出会った人にたくさん聞き込みをしましたが、機械化が進んでいる現状があり、手織りのダカ織りを見つけるのは至難の業でした。

そんな中、手織りのダカ織りを取り扱っている場所をカトマンズで見つけました。
それが先述したACPというNGOが運営するお店です。ACPではブロックプリントや陶器、フェルト小物やアクセサリーなどさまざまな手仕事品の生産を行っています。少し離れた場所にオフィスが一体になっている作業場があり、そちらを見学させていただくと、風通しがよく、手仕事の作り手さんも運営スタッフさんも、とても幸せそうに働いていたのが印象的でした。

ACPで働く女性の一人が、「手仕事の製品には、作り手自身の家族への想いと、買い手側の、作り手へのリスペクト、作り手の家計を助けるという想いがこもっていて、幸福度が高いと思う」と語ってくれました。

インドのイメージが強いブロックプリントですが、実はネパールでも盛んな手仕事の1つで、ACPで生産の様子を見学させていただきました。

ブロックプリントの木版で布に版を押していく様子。木と布と手仕事の温かみが広がる空間だった。

そのあと、車で1時間の場所にある、ACPが手織りのダカ織りを依頼している工房を特別に訪問させていただきました。織る時に横糸を通す作業が紐を引くだけに簡素化された飛び杼(ひ)の織機が10台ほど並び、ご年配の方だけでなく25歳と若い世代の女性もいらしたり、織り手の女性の子どもたちが工房の中で遊んでいたりとアットホームな空間です。

職人の女性がさまざまな柄のダカを手織りしていた。

織り手がピュンピュンと心地よいリズムで織り進める様子は、幾何学的で動きのあるダカ柄が楽譜のようで、音楽を奏でているかのようでした。カラフルな糸が、織った布の上にコロコロと置いてあり、ひとつずつ通して模様ができていく過程はとても愛らしかったです。

カラフルな糸がコロコロと並ぶ様子。
糸を通していく熟練した様子。飛び杼の音が心地よい。

今回ネパールを旅してみて、かっこいい幾何学模様と柔らかい色味のダカ織りと、そんなダカ織りでできたダカトピを被るダンディで可愛らしいおじさまたちが大好きになりました。
ぜひみなさんもネパールを訪ねる際には、トピおじハントを楽しまれてはいかがですか?


shimaitabi の食日記 ~ネパール編~

2024年 7月16日 @ネパール カトマンズ
家庭のダルバート

ダルバートとは日本でいう“定食”。
ダル(豆のスープ)+バート(お米)に数種類のおかずがセットになっています。
今回は友人宅にお泊まりしていたので、たくさんの自家製ダルバートをご馳走になりました!どの家庭にもターメリック・コリアンダー・チリパウダー・フェンネルシードなどが入ったスパイスボックスと石のすり鉢があり、おかずごとに、ニンニク・生姜・塩と数種類のスパイスを潰し合わせて一から調味料を手作りします。
また玉ねぎやトマトなどの野菜をじっくりと火にかけて食材の持つ旨みを引き出すため、野菜だけのベジダルバートでも大満足の美味しさです!
食べる時には右手で混ぜ合わせて頂くのですが、これが最高に美味しい。自分好みに一口一口手の中でおかずの配分を変えていくのも醍醐味です。ラオスでもち米を手で丸めて食べた時も思いましたが、地元のスタイルで食べるのが1番美味しく感じます。ぜひみなさんも海外に行かれた際は、その土地の食べ方を真似してみてください!


次回もお楽しみに!

PROFILE

世界一周 姉妹旅 毛塚美希・瑛子 Miki, Akiko Kezuka

その土地の暮らしと文化に触れるのが好きで、世界一周の旅に出た20代の姉妹。手仕事を中心にライティング、買い付けを行う。姉は元インテリアメーカー勤務、妹は元食品メーカー勤務。手仕事、食と酒場、囲碁をテーマに、自由きままに各地を巡る。

小さな村でホームステイ、工房巡りに、そのまま地元の人達と乾杯! そんな日々の暮らしに溶け込むその土地らしさを感じたままの温度でお届けします。

HP: https://sites.google.com/view/shimaitabi?usp=sharing

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