第3回 ネパールの暮らしの中で見つけた手仕事 -姉妹が行く! 世界てくてく手仕事の旅
『第2回 心躍るネパールの伝統織物 ダカ織りとダカトピ文化』の記事はこちら
山岳文化の手仕事
ネパールは、暮らしの中に風土が反映された手仕事がたくさんあり、ワクワクしながら旅をした国の1つです。
山岳文化がたくさん残るネパール。カトマンズやポカラなどのいたるところで圧倒的に多い定番の土産屋は、カシミヤとパシュミナ、麻製品のお店です。
高級セーターなどで知られるカシミヤヤギの繊維であるカシミヤは、ヒマラヤの高地など寒暖差が激しい場所ほど良質なものになり、肌触りのよさと軽さ、保温性と保湿性に優れているのが特徴です。
カシミヤよりもさらに希少といわれるものが“パシュミナ”で、解釈は人によってさまざまです。ネパールの複数の土産屋では「パシュミナとは、カシミヤヤギの中でも子ヤギの首・背中・お腹の毛だけでできた繊維のことをいい、特に首の毛は非常に希少で、一番軽くて柔らかく最高品質なもの」と説明を受けました。ただ、街中の土産屋で値段と棚に並ぶ量を見ると本物と思えるものを見つけるのは難しく思えました。
ポカラの街には、麻の鞄屋や洋服屋もたくさんありました。麻の洋服屋はショップの奥の方でオーナーさん自身が仕立てている個人経営のお店が多かった印象です。
肥沃でない山がちな土地でも育つ麻は、ネパールで生産できる大事な原料の一つです。山の上にあるサランコットという村では、山の斜面や民家の間の空地など、さまざまな場所で麻が自生していました。
暮らしの中で見つけた手仕事
カシミヤや麻などの定番以外にも、ネパールを旅していると日常の中にたくさんの手仕事が溢れていることに気が付きました。その中で特に印象に残ったものを3つご紹介します。
1つ目は水牛の革製品。
街歩きの際に目を引いたのが革の鞄屋さんでした。ネパールは人口の約8割がヒンドゥー教徒で、牛は神聖な動物とされているので不思議に思い、鞄屋のオーナーさんに何の動物の革かと尋ねると、「水牛だよ」と教えてくれました。
旅を振り返ってみるとたしかに、レストランに行くと水牛は定番メニューでした。ネパールの国民食である“モモ”はだいたいどのお店でもバッファロー(水牛)、チキン、ベジ、の3種類があります。
先述した通りヒンドゥー教徒にとって牛は神聖な存在なので食べませんが、水牛は違う動物として見なされているため食べてもいいという文化があるそうです。
宗教やその土地の風土が食文化に影響し、日用品の素材に繋がっていることを実感できた面白い旅でした。
2つ目は赤土でできたレンガの建築物と陶器。
街や山間部の小さな村のいたるところにある寺院や民家として見かけたのがレンガ造りの建物。ネパールではどこでも赤土が簡単に手に入るらしく、レンガの家以外にもチャイやラッシー、自家製ヨーグルトのカップとしてもたくさん使用されていました。
カトマンズにある古都バクタプルは赤土の陶器が有名で、工房や陶器屋さんが並びます。
特に山の中や郊外に行くほどレンガ造りの家をよく見かけます。
サランコットで生まれ育ったおじさまに話を聞くと、「30~40年前は皆自分たちで赤土からレンガを造り、草葺きの屋根で家を建てていた」といいます。
「時代が変わり、グローバル化が進むにつれ、今では山で農業をして生活する人は少なくなりました。草葺きの屋根はトタンになり、海外へ出稼ぎに行く人が増え、帰ってきた人を中心にコンクリートの家を建てるようになりました。サランコットにはホテルも増えてきています」と少し寂しそうに話してくれました。
3つ目はネパールのお祭り文化とビーズの装飾品。
ネパールにはヒンドゥー教や仏教の伝統的なお祭りやお祝い、お祈りがたくさんあります。人や村によって頻度の違いはありますが、お祭りごとに服やアクセサリーを新調する文化があるそう。
わたしたちが友人宅に滞在していたときも、「旅立ちのお祈りに」と友人のお母さんがおでこに幸運を祈る赤いティッカを付けてくれました。そのあと友人の11歳の妹ちゃんにサリーを着せてもらい、近所のアクセサリー屋さんに新しいブレスレットを買いに行きました。街にはアクセサリー屋やサリー屋が並んでおり、手刺繡のビーズがあしらわれたサリーやサンダル、ビーズでできたネックレスなどの装飾品があります。
ここのお店にもちょうど若い女性のお客さんがブレスレットを買いに来ており、需要が多いことを実感しました。
街では、“クルタ”というスリットの入ったロングブラウスにパンツスタイルの服装が定番で、そこにビーズのブレスレットやネックレスを合わせて着こなしている方もたくさん見かけました。次またネパールを訪ねる機会があれば、伝統衣装やビーズの小物の工房巡りなんかも楽しそうです。
ネパールでは友人の家に泊まったり、小さな村や街を散歩することで、手仕事がその土地の暮らしと風土と共にあることを改めて実感しました。今回のネパール旅のように、みなさんもぜひその土地ならではの手仕事と出会う旅をしてみてはいかがですか?
shimaitabi の食日記 ~ネパール編~
2024年 7月27日 @ネパール ポカラ湖畔公園
チャイとパニプリ
2人ともスパイスの効いた美味しいネパール料理に大ハマりしていましたが、その中で1番リピートしたのがこのパニプリ。
小麦粉の生地を丸く揚げ、上部に穴を開けます。その中にチリパウダーやクミンパウダー、ガラムマサラなどのスパイスとじゃがいも、ひよこ豆、玉ねぎを混ぜ合わせた具を入れて、最後にタマリンド由来の酸味のあるスパイススープに浸して頂きます。サクサクとした食感とスパイスの風味、そして酸味のあるスープが癖になり何個でも食べられます!
中でもポカラの湖畔の広場にズラリと並んでいたパニプリの屋台が特に思い出に残っています。雨季だったため国内観光客の割合が多く、のんびりとした雰囲気が漂っていました。みんな家族や友人達と大きな水筒を持ったお母さん達からチャイを買い、屋台の椅子に座ってパニプリを楽しんでいました。 少しずつ変わっていく夕焼けと広場を行き交う人たちを、チャイとパニプリを片手にぼーっと眺める時間がすごく好きで、毎日湖畔の広場に来てはそんな時間を過ごしました。
次回もお楽しみに!
PROFILE
世界一周 姉妹旅 毛塚美希・瑛子 Miki, Akiko Kezuka
その土地の暮らしと文化に触れるのが好きで、世界一周の旅に出た20代の姉妹。手仕事を中心にライティング、買い付けを行う。姉は元インテリアメーカー勤務、妹は元食品メーカー勤務。手仕事、食と酒場、囲碁をテーマに、自由きままに各地を巡る。
小さな村でホームステイ、工房巡りに、そのまま地元の人達と乾杯! そんな日々の暮らしに溶け込むその土地らしさを感じたままの温度でお届けします。
HP: https://sites.google.com/view/shimaitabi?usp=sharing