「SUBARU」店主 溝口明子のラトビアの手仕事をめぐる旅 vol.15 手仕事に出会えるおすすめショップ⑤Pinumu Pasaule(ピヌム・パサウレ)
手工芸品をお目当てにラトビアを旅するなら、バスケットのお買い物は外せません。そこで、日本で一番有名であろうラトビアのバスケット職人さんご一家が経営する工房と宿泊施設を紹介します。
リガ郊外のバスケット専門店「Pinumu Pasaule」(ピヌム・パサウレ)
リガ郊外にあるピヌム・パサウレは日本で流通しているラトビア製バスケットの大半を送り出しているバスケット専門店です。ご自宅がお店と工房を兼ねているため、立地は閑静な住宅街のなか。普通の家にしか見えない佇まいですが、門を通って庭を抜け、玄関扉を開けて入ると、見渡す限り籠、籠、籠・・・!バスケットの素材である柳が発する野の香りが立ち込めています。初めて訪問したのは15年ほど前になりますが、今でも扉を開けるたびに同じ興奮が蘇り、どのバスケットを仕入れようかと血が騒ぎます。入れ物としてのあらゆる形状のバスケットはもちろんのこと、ランプシェード、ベビーカー、椅子やテーブルにいたるまで、さまざまな製品がぎゅうぎゅう詰めで並んでいます。もちろんどれも高品質!末永く愛用できる品々です。美しいだけでなく、丈夫で水洗いもできるので、実生活のあらゆるシーンで活用できます。
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ピヌム・パサウレを切り盛りするのは、10歳の頃からバスケットを編んでいるというPēteris Tutāns(ペーテリス・トゥターンス)さんとそのご家族。工房としての歴史は1985年に遡ります。
ラトビアを代表するバスケット職人のペーテリスさんは、これまでラトビアのみならず、ポーランド、フランス、アメリカ、中国、さらには日本での展示会やコンテストに参加してきました。また、カントリーツーリズム協会から「Kultūras zīme “Latviskais mantojums”(文化マーク“ラトビア遺産”)」の称号も得ており、その技が織りなすバスケットを販売したり、ワークショップを開催したりしています。
ピヌム・パサウレの運営には、奥さまのLolita(ロリタ)さんの存在も欠かせません。社交的で根っから明るいロリタさんの手腕で、家族経営から始まった小さな工房は、今や10人のバスケット職人さんを抱える会社組織になりました。ロリタさんご自身はバスケットを編みませんが、その材料となる柳のことを熟知しています。そして、ご主人であり職人であるペーテリスさんのことを誰よりも尊敬し、理解しています。ペーテリスさんもまたロリタさんに全幅の信頼を置いていて、人生も仕事もまさに二人三脚で歩んできました。
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最近では息子さんのAugusts (アウグスツ)さんもバスケット職人として歩み初め、アウグスツさんの奥さまもまた経営の主軸を担うようになっています。後継者ができたことをロリタさんは嬉しそうに語ってくれました。
店名の「Pinumu Pasaule」とは“Basket World”の意味。事前に予約をすればバスケット作りのワークショップも体験できるので、文字通り、見て、触れて、ラトビアのバスケットの世界を堪能できる場所なのです。
INFORMATION
>>次ページ ラトビアのサマーハウス文化を気軽に体験「Kalndaķi」(カルンダキ)
PROFILE
溝口明子 Akiko Mizoguchi
ラトビア雑貨専門店SUBARU店主、関西日本ラトビア協会常務理事、ラトビア伝統楽器クアクレ奏者
10年弱の公務員生活を経て、2009年に神戸市で開業。仕入れ先のラトビア共和国に魅せられて1年半現地で暮らし、ラトビア語や伝統文化、音楽を学ぶ。現在はラトビア雑貨専門店を営む一方で、ラトビアに関する講演、執筆、コーディネート、クアクレの演奏を行うなど活動は多岐に渡っている。
2017年に駐日ラトビア共和国大使より両国の関係促進への貢献に対する感謝状を拝受。ラトビア公式パンフレット最新版の文章を担当。著書に『持ち帰りたいラトビア』(誠文堂新光社)など。クアクレ奏者として2019年にラトビア大統領閣下の御前演奏を務め、オリンピック関連コンサートやラトビア日本友好100周年記念事業コンサートにも出演。神戸市須磨区にて実店舗を構えている。