【日本】津軽こぎん刺し
photo: Ayako Hachisu, text: Yoko Kaji
津軽こぎん刺しは、江戸時代、木綿の着用を藩から禁じられていた青森県津軽地方の農民の間で、生活に必要な技術として生まれた。冬の厳しい北国の女性たちが、補強と保温のために、麻布に木綿の糸で刺繍をしたのがはじまりで、野良着を小布(こぎん)と呼んだことから、「刺しこぎん」の名がしだいに定着していった。明治時代、廃藩によって衣服の禁令が解かれ、木綿糸が手に入るようになると、女性たちは競うように晴着を刺すことを楽しむように。布目を拾いながら横一列に刺し進めることで、繊細で美しい幾何学模様を次々に生み出していったのだ。

出典:『アジアのかわいい刺繡』誠文堂新光社 刊