STORE

ハーブ大国リトアニアで、薬草師が淹れるハーブティーを体験

リトアニア人は古来より薬としてハーブティーをよく飲みます。首都ヴィルニュスより北へ約120km先のアニクシャイという町で、伝統的なハーブティーの淹れ方を見学しました。 また、リトアニア観光局がツーリストたちに積極的におすすめしているのが、田舎を巡る「ルーラルツーリズム」。アニクシャイ滞在時におすすめの宿も紹介します。
photo & text: Sachiko Suzuki

自然の恵みを体に取り入れ、健康を保つリトアニア人

リトアニアでハーブは日々の暮らしになくてはならないもの。健康を保つために、森や庭から摘んできた薬草でハーブティーをつくり、体の不調に備えています。それも先祖から教わった伝統レシピが今でも各家庭に根付いているそうです。リトアニア、エストニア、ラトビアのバルト諸国では「自然享受権」が認められていて、森や川辺に自生するハーブはもちろん、ベリーやキノコなど誰でも自由に採ることができます。

ハーブミュージアムの庭で薬草の説明を受ける。

「病院で処方してもらう薬を飲めばすぐに効くが長続きはしない。しかし、ハーブティーは時間がかかっても病の根本を治癒してくれる」。そんなポリシーをもって「魔法のお茶(アルバトス・マギア)」という名のハーブティーショップを営み、アニクシャイのハーブミュージアムを管理するハーバリスト(薬草師)、ラムーナス・ドゲラディチュスさん。彼にリトアニア人のハーブの使い方を教わりました。

ハーバリストのラムーナス・ドゲラディチュスさん。

ハーブティーは毎日飲むものではなく、体調の調子が悪い時に、また文化行事の時などに飲まれているそうです。たとえば、貧血気味の時はイラクサ科のセイヨウイラクサ(Stinging nettle、学名:Urtica dioica)、消化を助けるシソ科のオレガノ(Oregano、学名:Origanum vulgare)、眠れない夜はシナノキ科のセイヨウボダイジュ(Linden、学名:Tilia cordata)など。またキク科のアルテミシア(Artemisia、学名:Artemisia abrotanum)は胃腸に良いとされ、2カ月間飲み続けると回復するといいます。ビッテレスレ(Bitkresle、学名:Tanacetum vulgare)はガンの予防に良いといわれていて、苦いので蜂蜜を口に含んだ後に飲みます。

余談ですが、リトアニアの伝統的な植物、ミカン科のルータ(Ruta graveolens)は、処女、純粋、正直さを象徴するハーブといわれていて、独身女性がいる家庭には必ずルータを植え、結婚式の時にはルータでつくった冠を燃やす、という習慣があります。

ハーブは葉、花、茎と余すとことなく使う。

ハーブティーの淹れ方を見学

ミュージアム内のカフェでリトアニア式ハーブティーの淹れ方について学びました。まずお湯は、コンロで熱した石を水の中に入れ沸騰させ少し冷ましてティーポットに入れます。お湯の温度は、花は70度、茶葉は80~90度にして、熱湯を入れて色が濃くなるまで待ってから飲みます。

今回淹れていただいたのは、ハーブの花々の生命力を封じ込めたミックスティー、血液をサラサラにする効果があるというドングリのお茶、水分代謝を活発にするといわれるタンポポの根のコーヒー。蜂蜜を口に含んでからハーブティーを飲んだり、アーモンドミルクなどを入れたりして楽しむのがリトアニアスタイル。アーモンドミルク入りのタンポポコーヒーはやさしいカプチーノ風味でした。

漢方薬のような薬草もありました。白樺の芽、サルの腰掛、バレリアーニャ(心臓の薬)、琥珀など。器はライ麦を発酵させたものを入れてつくった茶器を使用しています。絵柄は花の種を描いていて味わい深い器です。

INFORMATION

◆アルバトス・マギア・アニクシャイ

Arbatos Magija Anykščiai
住所:Tilto g. 3B, 29106 Anykščiai, Lithuania
電話:+370 607 92650
営業時間:10時~18時
休:月・日曜
http://www.arbatosmagija.lt/
※アニクシャイの川辺や湖畔で採取した100種の薬草からつくるハーブティーを販売。ラムナースさんによる「ティーセレモニーと心得」のクラスは1人10ユーロで予約できる。

田舎巡りの旅、アニクシャイ周辺のおすすめ宿

リトアニアは自然豊かな国。旧市街散策だけではなく、田舎を旅するルーラルツーリズムもおすすめです。リトアニア観光局は、旅行者がリトアニアの自然と繋がることを大きなコンセプトとして掲げています。多少の不便さを感じても、綺麗な水と空気、豊かな自然の中での休息は、リトアニアならではの過ごし方。映画の中のワンシーンにいるような心持になることでしょう。

町から5分も走ると、このような風景が見られるリトアニア。

今回滞在したアニクシャイの宿は、前述のハーブミュージアムから南西へ車で約20分の距離にあります。アニクシャイの町から出て大平原を貫く道を走ってたどりついたのは、ルビキイ湖のほとりにあるグラディアリ・アニクシャイ。周辺に民家はなく、大自然に囲まれた丘の上からは広々とした大パノラマが見晴らせます。ここに、メゾネットスタイルの「風のヴィラ(4室)」と、湖畔に建つ「レイクヴィラ(9室)」が建ち、レセプションのあるメイン棟「太陽のヴィラ」の2階には、ダブルの部屋が8室あり、客室は全21室。蒸気式の北方サウナも楽しめます。
今回泊った「風のヴィラ」の1階リビングと2階の寝室。木を多用したぬくもりのある内装となっています。

「太陽のヴィラ」の1階レストランは、伝統的かつモダンなアレンジのリトアニア料理が楽しめます。下記写真はいただいたお料理の数々。

INFORMATION

◆グラディアリ・アニクシャイ

Gradiali Anykščiai
住所:Klykūnų k. 1, 29213 Anykščiai, Lithuania
電話:+370 614 00090
HP:https://anyksciai.gradiali.com/

INFORMATION

◆リトアニア・ルーラルツーリズム協会

リトアニアのルーラル(田舎・田園・農村)ツーリズム提供者が登録する協会で、現在400以上の会員がいます。ホスピタリティが高く、居心地の良いルーラル観光商品を開発し、質の高い休暇ができるデスティネーションを目指しているそうです。田舎の宿泊先などを検索する時に役に立ちます。
HP:https://www.countryside.lt/

INFORMATION

INFORMATION

LOT ポーランド航空

日本からリトアニアへのアクセスは、LOT ポーランド航空の成田国際空港発、ポーランドのワルシャワ・ショパン空港経由、ヴィリニュス国際空港着の便が便利です。
HP:https://www.lot.com/jp/en

PROFILE

鈴木幸子 Sachiko Suzuki

世界を旅するトラベルジャーナリスト&エディター。
人が好き、取材も大好き。出版社勤務や地球の歩き方編集を経て、2004年に制作会社らきカンパニー設立。年間7~8回は海外取材へ出向き、70か国以上の国を頻繁に取材している。2010年から、まちづくりにも関わっている。
通信社、雑誌、クルーズ誌、機内誌、ムック本、書籍、オンラインを含め、各メディアで活動中。JTBるるぶ『アンコールワットとカンボジア』初版制作。著書に『HOTEL INDOCHINA ベトナム、ラオス、カンボジアのフレンチコロニアルホテル/集英社』、『100ドルで泊まれる夢のアジアンリゾート(共著)/文藝春秋』、『もち歩きイラスト会話集タイ/池田書店』、『みやざきの自然災害』などがある。
2023年春より、時事通信ニュース「あなたの旅、わたしの旅」連載中。
趣味は海外旅行。世界の路地&市場巡り。長唄三味線、川柳句会に参加すること。会社名の「らき」はギリシャ・クレタ島の地酒の名前。
宮崎県宮崎市出身。

限定情報をいち早くお届けメルマガ会員募集中!