編み物の魅力が、いよいよ小説世界に波及する! 横山起也さん、第12回日本歴史時代作家協会賞の「文庫書き下ろし新人賞」を受賞
手芸業界に激震⁉ 小説界にも新たな風
去る2023年10月20日、日本歴史時代作家協会主催による「第12回日本歴史時代作家協会賞」の授賞式がアルカディア市ヶ谷にて開催されました。
「新人賞」候補5作品、「文庫書き下ろし新人賞」候補5作品、「作品賞」候補5作品が先に選ばれ、その候補の中から「新人賞」2作、「文庫書き下ろし新人賞」2作、「作品賞」2作が決定。その「文庫書き下ろし新人賞」の1作品に、手芸作家でもある横山起也さんの小説『編み物ざむらい』(角川文庫)の受賞が決定しました。
授賞式では、選考委員長の小説家、三田誠広氏より、各受賞者の作品についての選考の理由とその魅力についてお話があり、『編み物ざむらい』については、
「編み物がテーマになっている時代小説は初めて。糸のように、引っ張るとほどけるところが物語の展開の重要なファクターであった。その意外さが、どんどん納得に近づいていくのが面白い。改行マークや次の行のスペースも1つの記号と考えると、実はどんな長い小説も1本のひもになる。我々小説家は、言葉の連なりという1本の線で物語を紡いでいると言える。これはまさに我々は編み物をしているとも言えるのではないか」とのことでした。
時代小説の世界に、この『編み物ざむらい』は驚きをもって迎え入れられ、見事に時代小説好きの心を射止めたといえるのではないでしょうか。そして、時代小説好きな方にも、編み物の魅力が新たに伝わるという架け橋の存在になったと言えます。
手芸、手仕事の価値をこれからも他の業界に広めていきたい
授賞された横山さんは、誠文堂新光社から『どこにもない編み物研究室 日本の過去・未来編』をこの8月に出版したばかり。ただこの手芸書とは異なる、時代小説での新人賞受賞に対しては、以下のようにコメントをいただきました。
「編み物の魅力、価値を改めて感じずにはいられません。人類が人類足り得るもの、文字が作られる歴史よりも、糸をつくり、縄を利用することは古くから存在した深いものであることは間違いない。それだけ古くから人類とともに歩んできた文化といえます。これがエンタメになり得ないはずがないと思っていました。手仕事や手芸の文化の深さが、今回の受賞につながっていると思っています。手芸と手仕事の価値を、これからも上手に伝えていきたいです」。
手芸や手仕事の業界とはまた異なる文芸の世界に1歩踏み出した横山さん。これからも、ますますその活躍に目が離せなくなりそうです。すでに『編み物ざむらい』の次作も刊行が決定しているとのことで、その発刊も待ち遠しい限りですね。