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わたしたちのリメイク&アップサイクル Vol.2 蔭山はるみの布ぞうりづくり 後編

古き良き日本の伝統スタイルと、現代のライフスタイルがブレンドされた、ハンドメイドクリエイター、蔭山さんの作る布ぞうりの世界。布ぞうりを手がけるようになったきっかけから、伝統に培われた布ぞうりの懐の深さ、その独特な魅力や可能性について伺った前編に続き、後編では、布ぞうりがどのようにして作られていくのか、そして、1年を通じて布ぞうりを楽しむためのアイデアや、作り方をしっかり学びたい人のための情報まで、多岐にわたってご紹介します。
text/Harumi Kageyama photo/Ayako Hachisu、Harumi Kageyama

●布ぞうりは“編み物”。こんなふうに作っていきます

昔のぞうりは、わら縄で編まれたものが中心。布などで覆う場合も芯にわら縄が使われていましたが、今の布ぞうりは写真のPP(ポリプロピレン)ロープが芯に使われています。荷造りなどに使われるロープで軽くて丈夫。布ぞうりには直径8mmのものを使います。
3本撚りのものが一般的で、3本がくっついた溶着タイプとばらける(非溶着)タイプがあり、本体の芯のほか、鼻緒や前つぼも、このロープを芯にして作ります。
編みひもは布をテープ状にカットしてアイロンで折りたたんで作ります。
鼻緒は布を筒状に縫って表に返し、中にPPロープで作った芯を入れて。前つぼもカットした布の中にロープを入れ、包んで作ります。

RRロープ直径8mm100m巻き。これで約16足のぞうりが作れる。

<布ぞうりの作り方手順>

大まかな作り方の流れは、以下のようになります。

A. PPロープをカットする
B. 編みひもと鼻緒、前つぼを作る
C. ぞうり本体を編む
D. 前つぼをつける
E. 鼻緒を処理して仕上げる

今回は、実際にぞうり本体を編み始めるところからご紹介します(数値は足のサイズ23.5〜24cmの布ぞうりを基準にしています)。

1. 本体を編む〜編み具をセットします

最初に編み具をセットします。といっても特殊なものではなく、使うのはDIYの道具で知られる万力(クランプ)。幅5cmのC型を3個使います(ホームセンターなどで購入可能)。 セットする際は、作業中に引っぱっても動じない丈夫な場所に。直接つけると金具で表面を傷つける恐れがあるので、必ず当て木(古雑誌などでも可)をし、万力同士の間隔が均等になるようにセットします。

2. 本体を編む〜つま先を編みます

a.布ぞうりはまずつま先側から編み始めます。編みひもの折り目を端から8〜10cmくらいのところまで開き、本体の芯用にカットしたPPロープの真ん中にクロスするように当てます(この端8〜10cmの部分を、今後ペラと呼びます)。

b.開いた編みひもの折り目をとじたら、ペラを中心に左右交互に通し、そのつどロープに巻きながら3往復します。これでつま先部分ができました。

3. 本体を編む〜編み具につま先をセットします

できたつま先を持ち、左側のロープを左→真ん中の万力に、右側のロープを右→真ん中の万力にかけてロープをピンと張り、ペラと一緒に洗濯バサミでとめて固定します。

4. 本体を編む〜編み始めます

a.ここから本格的に編み始めます。左側にある編みひもをロープの上下に交互に通して編んでいきます。最初の一往復は、左のロープ、真ん中のロープ2本一緒に、そして右のロープに交互に通し、その後はロープ1本ずつ、交互に上→下→上→下と通して編んでいきます。

b.編みひもを通したら前にしっかり詰める…これを繰り返していきます。編みひもを通したら幅を徐々に広げながら詰めていき、幅が9cmになったらそれをキープしながらどんどん編み進めます。

5. 本体を編む〜鼻緒を編み込みます

a.どんどん編み進め、つま先から16cmのところまできたら、鼻緒を編み込みます。まず、右側のロープ2本の間に鼻緒の片端をはさみます。

b.続けて編みひもをひと巻きして外側に出し、4本のロープに交互に通したら、鼻緒のもう片端を左側のロープにはさみ、右側と同様、鼻緒にひと巻きします。再び外側に出し、これまでと同様にして編み進めます。

6. 本体を編む〜かかとを編みます

a.つま先から22cmくらいまで編んだら、ロープを万力からいったんはずし、どちらか2個の万力にかけ替えます。ここらあたりから幅を少し狭めながら、かかと部分を編んでいきます。

b.編み方自体は同じですが、編みひもを気持ち引っぱりながら通し、詰める際には真ん中部分を指で押してしっかりと詰めるのがポイント。

c.つま先から23cmくらいまで編んだら、ロープを万力1個にかけ替えて、幅を狭めながら23.5(24)cmになるまで編みます。

d.左端のロープに編みひもが来たタイミングで、ロープに編みひもをひと巻きし、かかとを編み終わるようにします。

7. 本体を編む〜編み具からはずします

編み終えたら、最後にひと巻きした編みひもが緩まないよう押さえながら、万力からはずします。

8. 本体を編む〜ロープを引いて形を整えます

a.つま先の洗濯バサミをはずし、ぞうり本体を手のひらで押さえながら、つま先側のロープを手前に引きます。このとき、最後に編みひもを巻いたほうのロープが縮んでくるのを確かめて。縮まないようなら、もう一方のロープを引きます。

b.続けて、もう片方のロープも同様に引きます。このとき、ロープは全部引いてしまわず、指が1本入るくらいのすき間を空けておきます。

c.空けておいたすき間に編みひもを巻いて、再びつま先側からしっかりとロープを引きながら、形を整えます。一度できれいに整わない場合は、もう一度、同じすき間に編みひもを巻いてボリュームをつけるなどして整えてもOK。編みひもの端は裏側で編み目に数段通し、余分をカットしてから端を編み目に差し込んでおきます。

9. 前つぼをつける〜鼻緒に前つぼをつけます

a.撚りをほぐして1本にしたロープを芯にして、布で包んだ前つぼを鼻緒につけます。

b.前つぼを真ん中で折って鼻緒にかけ、洗濯バサミでとめたら、前つぼの両端を縫いとめます。鼻緒を一緒に縫いつけてしまわないよう気をつけて。

10. 前つぼをつける〜本体に前つぼをつけます

a.つま先から3.7cmのところに目打ちをさし、編み目を広げて前つぼを通して裏側に出します。

b.つま先のロープをきつく1回結んだら前つぼを両側に広げ、その上にロープをのせて、ペラでロープを隠すように包みます。

c.ペラとロープをしっかり押さえながら、上から前つぼでしっかりきつく結びます。

d.前つぼの両端は、編み目に数段通してから、端を編み目に差し込みます。ロープはペラより少し短めにカットし、ペラで包んでボンドで固定し、ペラの端は編み目に差し込みます。 これで、ぞうりのつま先側ができました。

11. 鼻緒を処理して仕上げます

a.続けて鼻緒を仕上げます。鼻緒の長さ、締め具合は好みに個人差があるもの。この時点で実際に履いてみて、自分でちょうどいいと思える長さに調節し、鼻緒の付け根のところを洗濯バサミでとめて固定します。

b.裏返し、鼻緒のミシン目をギリギリまでほどいたら、鼻緒のロープ(芯)の端をとめていたマスキングテープをはがします。

c.左右のロープ(芯)をそれぞれ2等分に裂き(計4カ所に分かれる)上側2本、下側2本でそれぞれ結びます。このとき結び目が重ならないよう、それぞれ鼻緒の付け根のあたりに来るようにし、ロープがゆるんでこないように2回しっかりと結びます。

d.余分なロープをカットしてまとめたら、ロープ全体を隠すように鼻緒の布(まずどちらか片側)で包みます。

e.その上から、さらにもう片方の鼻緒の布で包み、なるべく小さくまとめます。

f.周囲に布用ボンドをつけ、布端が出てこないように目打ちで中に押し込みながら、しっかり接着します。この後、周囲を軽く縫い付けておけば、さらに完璧。

できあがり

無地の布でも何色か使ってボーダー風に編むと、よりカラフルな仕上がりに。右と左で色の配置を変え、こんなふうにアシンメトリーなデザインにしても楽しい。

●布ぞうりは秋から冬の季節も楽しめます

作った布ぞうりは、洗濯できます。
ネットなどに入れて洗い、形を整えてしっかり干せば元通りに。
また、夏のものというイメージがあるかもしれませんが、寒さが気になる方でも5本指ソックスを履けば1年中使えます。
さらに、ウールやフリース、ボアやフェイクファーなど、素材を変えればさらにあたたかく、見た目もモコモコかわいい秋冬限定のデザインを楽しめます。

前編、そしてこの後編をごらんになって、布ぞうりのイメージが変わった方、ちょっと興味が湧いてきたという方がいらっしゃったら、嬉しい限りです。
かわいいし履きやすいから、あまり深く考えずに、バブーシュやバレエシューズ、スリッパと同じ感覚で、履いてみてほしいなあと思います。
そして一度は自分で作ってみて、前編でお話ししたようなその懐の深さを感じてみてほしい。
ポピュラーなハンドメイドアイテムと違い、作り方が独特なので、少し難しいと感じたかもしれませんが、実際にやり始め、慣れてくれば自然と手が動いてくれるようになるので大丈夫。
この夏、日本全国どこにいても対面感覚で学べる、新しいタイプのオンラインハンドメイド講座もスタートさせましたので、興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。

PROFILE

蔭山はるみ Harumi Kageyama

ハンドメイド・クリエイター。
大工の棟梁に教えを受けた木工以外は、すべて独学であらゆる手仕事をマスター。溶接以外のすべての手法をこなす一方、独自の手法も開発し、おしゃれ小物からインテリア雑貨にいたるまで、あらゆるジャンルの作品を制作。特に、毛糸、布、流木や小枝、ワイヤーなどの身近な素材を使った“作りやすくて使いやすい”発想豊かなものづくりに定評がある。ダンボールを使ったオリジナル織り機の作り方、織り方、おしゃれ小物の作り方を提案した「ダンボール織りテクニックBOOK」(小社刊)はじめ、著書も多数。各自が好きな素材を持ち込み、毎回作りたいものを作るというフリースタイルの+hアトリエ教室を主催するほか、YouTubeチャンネル「蔭山はるみの楽しく作ろう! Many ideas Craft&DIY Channel」では、ハンドメイド好きだけでなく、初心者や手作り苦手派にも役立つアイデアを続々発信し、人気を集めている。

公式HP:kageyamaharumi.com
公式LINE: (utage-system.com)

INFORMATION

+h 布ぞうり講座

この夏には、全国どこにいても対面講座感覚で学べる、これまであるようでなかった新しいタイプのオンラインハンドメイド講座を立ち上げ、その第1弾「+h 布ぞうり講座」が話題を集めている。講座の詳細・1DAY交流会については、こちら↓を。

https://hamikageyama.amebaownd.com/posts/55432298?categoryIds=2346884

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