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日本ヴォーグ社『毛糸だま』編集長 谷山亜紀子さんのおすすめ『パリからの旅』

photo, text: Akiko Taniyama, Illustration: pan-to-tamanegi

はじめまして。日本ヴォーグ社で『毛糸だま』という編み物雑誌を担当している谷山と申します。年4回発行の毛糸だまの合間には、単行本の編集もしています。キャリアのスタートは雄鷄社という出版社で、編み物や刺繍のほか、織りやクラフト、ソーイング、フラワーアレンジメントなどの本も手がけていました。手仕事系全般、自分が作るのも見るのも大好きです。趣味と実益を兼ねられる仕事ができて幸せだなぁと思っています。

Q

谷山さんのおすすめの本について聞かせてください。

『パリからの旅』(堀内誠一著/マガジンハウス刊/1990年6月20日発行)
アートディレクター、イラストレーター、そして絵本作家でもあった堀内誠一さんの、8年にわたるパリでの暮らしとパリからの旅を、たくさんのイラストと緻密な文章で描いた本です。元は雑誌『anan』の連載を中心にまとめて1981年に書籍化したものの再編集本のようですが、私はその頃ananを読んでいなかったのでこの本が初見でした(堀内誠一さんはananの創刊アートディレクターで、現在も使われているロゴをデザインした方です)。

『パリからの旅』

Q

この本のどんなところが心に残ったのでしょうか。

今にして思えば、初めて買った「おしゃれな本」だったと思います。生き生きしたイラスト、味のある書き文字、楽しいレイアウト。一目で引き込まれました。当時の私はフランスに強く憧れていて、パリにもいつか行ってみたいと夢を膨らませていたので、ワクワクしながらページをめくったのをよく覚えています。この本は旅行が趣味になる第一歩だった気がしますし、「誌面のデザイン」を意識したはじめの本だったのだと思います(当時は著者の堀内さんがアートディレクターであるという意識もなかったのですが)。

Q

現在のお仕事・ご活動、ものづくりにはどう繋がっていますか。

直接つながっているというよりは、海外への憧れや未知のものへの好奇心、そして人の暮らしや営みへの想像力を大いに満たしてくれた本なので、ものを見る視点やセンスを養うきっかけになったのではないかと思います。また、「アートディレクター」という職業があることを知ったのはこの本が最初でしたし、デザインを意識して誌面を見るようになったことは、今の仕事にもつながっているのかなと思います。

Q

最後に、手芸・手仕事・ものづくりの魅力はなんだと思いますか。

普段の生活では気づかなかったりつい忘れてしまったりもしますが、自然物以外は「どんなものも、どこかの誰かが作っている」んですよね。それを強く感じられるのが「手仕事」だと思います。そんな手仕事を素朴に楽しめる手芸は素晴らしい趣味で、自分の手から何かを生み出すことができるのは本当にすごいし、幸せなことでもあるなと感じています。作っているあいだ中ずっと楽しくて、できあがってからも楽しめるなんて、最高だなと思います。

谷山さんが編集長の『毛糸だま 2024 vol.201 春号』

PROFILE

谷山亜紀子 Akiko Taniyama

静岡県浜松市生まれ。京都での大学生活を経て上京し、雄鷄社に入社。以降ずっと、手芸系実用書の編集一筋。2009年9月 日本ヴォーグ社に入社。
2012年より『ニットマルシェ』編集長を務め、2017年秋『毛糸だま』編集長に就任。担当書籍は『amuhibi KNIT BOOK』『michiyoの4size knitting』『東海えりかのカラーワーク』『ビヨンドザリーフのバッグスタイル』『青木和子の花刺繍』『刺し子デザイン帖』『日本刺繍のいろは』など著者本のほか、『いちばんよくわかる かぎ針あみの基礎』『ワンダークロッシェ』シリーズなど多数。


日本ヴォーグ社公式サイト

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